｢総合的知識問題｣｡｢空所補充の語句選択および漢字変換｣(全５問。５択)。示されている５つの文中の空所(１)～(５)に｢当てはまる適切な言葉を『語群』から選び、漢字に直して｣それぞれ答える。｢語群｣は、｢セッソウ｣･｢ケイチョウ｣･｢コウギョウ｣･｢コンリンザイ｣･｢フセイシュツ｣だ。｢語句の意味判別｣と｢漢字の書きとり｣が同時に問われているハイブリッドな問題だ。本校の十八番であり、求められる｢高度な語彙力｣の一端を垣間見ることができる。無論、｢失点｣は避けたい。｢答え｣を確認する。

･｢物事の(１)を判断する｣⇒｢ケイチョウ｣＝｢軽重｣⇒これは即座に判別できるはず。

･｢この映画の(２)収入は、歴史的な記録を作った｣⇒｢コウギョウ｣＝｢興行｣⇒｢語句判別｣は容易いが、｢興業｣と混同しないこと。

･｢彼の(３)のない行動に嫌気がさした｣⇒｢セッソウ｣＝｢節操｣⇒｢文脈｣から的確に判別すること⇒｢正しいと信ずる主義･意見を堅く守って変えないこと｣という意味も必須定着事項。

･｢(４)寝坊しないとちかう｣⇒｢コンリンザイ｣＝｢金輪際｣⇒流石(さすが)に知らないかも⇒そもそも｢仏教用語｣だが、｢底の底まで。あくまでも。断じて｣という用法がある。

･｢彼は(５)の天才だ｣⇒｢フセイシュツ｣＝｢不世出｣⇒難解だろうが、高校入試では定番⇒｢すぐれた存在であること。めったに世に現れないほど素晴らしいこと｣だ。さあ、どうだったか？　ひとつでも曖昧(あいまい)な語句があった諸君は、｢語彙力不足｣を自覚せよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分ほど＞

｢総合的知識問題｣｡｢空所補充の語句判別選択肢｣(全10問。10択)。

示されている10の例文中の空所( １ )～( 10 )に｢当てはまる適切な言葉｣を｢語群｣から選びそれぞれ答える。｢語群｣は、(ア)｢流布｣･(イ)｢岐路｣･(ウ)｢琴線｣･(エ)｢畏敬｣･(オ)｢あらまし｣･(カ)｢たたき上げ｣･(キ)｢やぶさか｣･(ク)｢おあつらえ向き｣･(ケ)｢ジェンダー｣･(コ)｢マジョリティー｣。未知の｢語句｣もあるはず｡なかなかの曲者だ。

特に厄介なものを確認しておく。

｢人の( ２ )にふれる素晴らしい演奏｣＝｢答え｣は(ウ)の｢琴線｣⇒｢琴の糸。比喩的に、人の心の奥に秘められている真情｣のことだ⇒｢琴線に触れる｣という慣用表現で覚えておきたい。

｢オリンピック招致活動に協力するのに( ５ )でない｣＝｢答え｣は(キ)の｢やぶさか｣⇒｢物惜しみするさま。けちなさま｣⇒｢やぶさかではない｣という用法が多い。

｢彼は現場で苦労を重ねてきた( ６ )の職人だ｣＝｢答え｣は(カ)の｢たたき上げ｣⇒｢下積みから苦労して一人前になること｣だ。

｢ハイキングにでかけるには( ７ )の上天気だ｣＝｢答え｣は(ク)の｢おあつらえ向き｣⇒｢注文どおりであること。希望どおりであること｣。

｢社会的な不平等をなくすため( ９ )について学ぶ｣＝｢答え｣は(ケ)の｢ジェンダー｣⇒｢社会的文化的に作られた性別や性差｣を意味する言葉⇒｢ジェンダー･ギャップ｣｢ジェンダー･バランス｣など、｢社会科｣の｢時事ネタ｣としても重要。

｢自分の意見が( 10 )だからといって正しいとは限らない｣＝｢答え｣は(コ)の｢マジョリティー｣⇒｢多数者･多数派｣のことで、対義語は｢マイノリティ｣(少数者･少数派)。｢語群｣の中でひとつでも知らなかった｢語句｣があった諸君は、確実に習得しておきたい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分半＞

人と自由に問い、語り合うことで、｢考え｣は広く深くなる。その積み重ねが、息苦しい世間の常識、思い込みや不安･恐怖から、あなたを解放する――対話を通して哲学的思考を体験する試みである｢哲学対話｣の実践から分かった、難しい知識の羅列ではない、｢考えること｣そのものとしての｢哲学｣について考察している。本文では、｢考える｣ことの発動には｢問う｣ことが重要で、どんな｢問い｣かあり、どう問えば思考力、対話力を育てられるのかを論じている。｢哲学論｣ではあるが、分かりやすい文章なので内容は理解できるはずだ。本校としては｢標準レベル｣の難易度だ。いくつかの小問を検討しよう。

[問一]　｢空所補充の語句選択肢｣(全４問。５択)。

本文中の空所　Ａ　～　Ｄ　に｢当てはまる言葉｣を答える。各選択肢は｢接続詞｣か｢副詞｣だ。本校に限らずこうした｢空所補充｣は定番の問題。｢接続詞｣では｢逆接｣はともかく、それ以外には十分に注意すること。｢逆接｣以外だと、どれもがあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの｢接続詞｣の｢意味･用法｣を的確に押さえた上で、｢内容｣を確認する必要がある。それぞれの空所の｢答え｣をチェックしていく。

　Ａ　には｢例示｣を表す｢副詞｣である(イ)｢たとえば｣

　B　には｢順接｣の｢接続詞｣である(オ)｢すると｣

　C　には｢並立｣の｢接続詞｣である(ア)｢また｣

　D　には｢順接｣の｢接続詞｣である(エ)｢だから｣がそれぞれあてはまると判別できなくてはいけない｡

｢候補｣はいくつかあるので、しっかりと｢代入確認｣してから確定することが重要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：全問で２分弱＞

[問三]　｢換言説明選択肢｣(５択)。傍線部(２)の｢実際には問いではない｣とは｢どういうことか｣を答える。｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則｡先ずは｢原意消去｣をしたい(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)｡ここは｢換言説明｣なので、｢問いではない｣の｢原意｣と結びつかないものを｢消去｣する。各選択肢の｢文末｣と照合する(選択肢説明の｢最重要要素｣は｢文末｣に記されている)。

(ア)｢問うことをあきらめさせるということ｣

(イ)｢答えを求めているわけではないということ｣

(ウ)｢考えられなくなっているということ｣

(エ)｢手に負えなくなっているということ｣

(オ)｢疑問を感じているということ｣

どうだろうか？

｢問い｣とは当然、｢答え｣が前提となっているのだから、｢問いではない｣⇒｢答えを求めているわけではない｣以外は｢消去｣だと判別できるはずだ。念のために｢同一意味段落｣を確認する(｢論説文｣｢説明文｣では｢同一意味段落｣に｢根拠｣｢手がかり｣がある)｡他の部分の説明も特に誤っていないと分かる。よって、｢答え｣は(イ)になる。なんと｢一発消去｣だ。｢原意消去｣、十分に活用できるように練習することが肝要。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分以内＞

[問四]　｢内容説明記述｣(｢30～40字以内｣指定)。

傍線部(３)｢問いはより深くなり、哲学的になる｣について、｢何をどうすることで哲学的になるのか｣を｢三十字以上四十字以内｣で説明する｡先ずは、｢傍線部一文一部の法則｣に｢手がかり｣を求めたい(｢傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要｣という読解の基本となる解法)。直前に｢こうすれば｣とあるではないか。｢指示語｣なので開く。｢段落冒頭｣の｢指示語｣なので、｢前段落全ての内容｣を指し示す。確認していくと、直前もその前もやはり｢指示語｣で始まる段落だ。全てつながっていることを踏まえて、｢何をどうすれば哲学的になるのか｣を読み解いていく。｢哲学的な問いにしていく｣には、｢自分自身を問いの内容に結びつけてみるといい｣、また、｢そこからさらに｣｢さまざまな視点での問いを広げていく｣ことが必要だと読み取れる。そうした内容を｢過不足なく｣まとめていけばいい。たとえば、｢自分自身を問いの内容に結びつけ、さらに視点をさまざまに広げた問いをしていくこと｡｣(40字)といった｢答え｣になる。尚、｢指示語｣は直接問われていなくても、即開くことが必須だと心得よ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分半＞

[問八]　｢同一内容判別選択肢｣(５択)。｢総合的知識問題｣。

｢中国のことわざ｣の内容解釈。傍線部(６)｢知識だけ学んで問うことがなければ、思考はどこにも行かず、育つこともない。知識もなしに問うばかりでは、思考は方向を見失う｣について、｢この内容と同じような意味の文｣を答える。各選択肢の｢文｣は全て｢中国のことわざ｣の一節。知っているものがあるかも知れないが、内容を完全に理解している諸君はまずいないだろう。だが、出題されている以上、それでも解けるということだ。いざ、チャレンジ！

 (ア)｢学ぶに暇(いとま)あらずという者は暇ありといえども、また学ぶあたわず｣⇒｢勉強したくてもひまがないなどと言う人は、(もともと意欲がないのだから)たとえ暇があったとしても勉強することはできない｣ということ。

(イ)｢学びて思わざれば則(すなわ)ちくらし｡思いて学ばざれば則ちあやうし｣⇒｢学ぶだけで、自分で考えることをしなければ、その知識はいつまでも深まらず、自分のものにはならない｡自分の乏しい知識で思い巡らすだけで、学ぶことをしなければ、考え方が狭くなり危なっかしい｣。

(ウ)｢吾、十有五にして学に志す｡三十にして立つ｡四十にして惑わず｣⇒｢私は十五歳のとき学問に志を立てた｡三十歳になって、その基礎ができて自立できるようになった｡四十歳になって、道理も明らかになり自分の生き方に迷いがなくなった｣。

(エ)｢学びて時にこれを習う｡またよろこばしからずや｣⇒｢学んだことを、時に応じて反復し、理解を深める、これもまた楽しいことではないか｣。

(オ)｢少年老い易く学成り難し｡一寸の光陰軽んずべからず｣⇒｢若い時期はすぐに過ぎていくのに、学問はなかなか一人前にならない｡わずかな時間であっても、決してむだにしてはならない｣。以上のような内容になる。自分の知っている｢言葉｣を｢手がかり｣に類推していけば、おおよその内容はつかめるはずだ。｢答え｣は(イ)だ。尚、｢私が知らない｣⇒｢誰も知らない｣⇒｢知らなくても解ける｣と考えよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分強＞

主婦向け雑誌の編集者、YouTuberを目指す息子を改心させたい母親、結婚に悩む女性司書、クラスで孤立したくない中学生、気づけば40歳を過ぎてしまった売れない劇団の脚本家、ひっそりと暮らす古書店の店主――平成を６年ごとにさかのぼりながら、６人の悩める人びとが｢気づくこと｣でやさしく強くなっていく。心がほぐれる６つのやさしい物語の一篇。本文では、｢花音(かのん)｣と｢瑠美(るみ)｣から仲間外れにされるのを恐れた｢いちか｣(わたし)が、大事な友達の｢乃木くん｣を遠ざけてしまう様子が描かれている。内容は理解しやすい。小問では｢音楽の知識｣も問われ、最後に｢自由考察記述(論述)｣が待ち構えている。いくつかの設問を確認する。

[問四]　｢空所補充の語句記述｣(｢漢字２字｣指定)｡｢総合的知識問題｣。

｢文脈からの語句特定および記述｣だ。本文中の空所   Ｘ   に｢当てはまる言葉｣を自分で考えて｢漢字二字｣で答える。｢傍線部一文一部の法則｣で｢文脈｣を確認する。空所前後は｢それぞれがそれぞれでいいって、   Ｘ   性が認められる社会……｣となっている。｢それぞれがそれぞれでいい｣ということを表し、｢○○性｣なのだから、そう、｢答え｣は｢多様(性)｣だ。本問は平易だったが、常日頃｢語彙力｣を磨いておくことが肝要だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：１分弱＞

[問五]　｢記号判別選択肢｣(５択)｡｢音楽記号｣の判別。　

ほとんど｢一般常識｣だ。傍線部(３)の｢ト音 記号｣を答える。12行後に｢うずまきの中心のとこ、十字架みたいにクロスしている｣とあるが、説明されずとも｢ト音 記号｣くらい知っているはずだ。｢答え｣は左図が示されている選択肢(ウ)になる。本校では、こうした｢一般常識｣や多種多様な｢知識｣が問われることもあるので常にアンテナを張っておきたい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：30秒強＞

[問六]　｢内容説明選択肢｣(５択)。

傍線部(４)｢新しい素敵なヒント｣について、｢『サクちゃん』が伝えようとしたこと｣を答える。｢原意消去｣から試みたい。先ずは、｢サクちゃん｣が何を｢伝えようとした｣のかを、｢同一場面｣から読み解いていく(｢小説｣では｢同一場面の直前直後｣に｢手がかり･ヒント｣がある)。｢サクちゃん｣はこの後、｢ト音記号｣になぞらえて話をしており、その最後の方で｢状況がどんどん変わっても、ソの位置がここだって、軸がはっきりしていれば狂わない｣｢誰に笑われたってへっちゃらって思えるような、いちかオリジナルの『ソ』の軸を持つといい｣と言っている。ここで、各選択肢の｢文末｣と照合する。

(ア)｢友達と仲直りすべきだということ｣

(イ)｢演奏することができるということ｣

(ウ)｢自分らしさを持つことが大事だということ｣

(エ)｢強調性を持つことが必要だということ｣

(オ)｢つらい気持ちもやがてなくなるということ｣｡｢軸を持つといい｣と言っているのだから、｢伝えようとした｣のは｢｢自分らしさを持つこと｣以外は｢消去｣でいいと判別できるはずだ。

｢同一場面｣から、他の部分の説明も特に誤ってはいないと分かる。したがって、｢答え｣は(ウ)でいい。やはり、｢原意消去｣を絶対不可欠だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：２分弱＞

[問九]　｢条件付き自由考察論述｣(｢字数指定｣なし､｢90字ほど｣の解答欄)。

｢この物語では『ソ』とはどのように生きていくかという行動の軸として描かれている｣が、｢あなたにとってこれまでの行動の軸としてきたことは何か｡あるいは、これからの行動の軸としたいことは何か｣を｢一行にまとめて紹介｣した上で、｢そう思う具体的な理由｣を論述する。｢条件｣は｢自分自身の体験を踏まえて論述する｣こと。｢自由論述｣であり｢あなたの行動の軸｣なので、無論、どのような｢内容｣にするかは自由。しかし、自由……､自由だからこそ、雲をつかむようで何も思い浮かばないかも知れない。ただ、｢本文内容｣は無論、｢手がかり･ヒント｣になる。｢軸｣について｢誰に笑われてもばかにされても、へっちゃらな軸｣とあるので、そこから｢あなたの行動の軸｣を明確にできるはずだ。その上で、｢そう思う具体的な理由｣を｢体験内容｣と的確に結びつくように論述することを意識してまとめていきたい。本校では、｢自由考察論述･記述｣は必出だ｡志望者は、｢設問自体｣や｢条件｣、そして、｢本文内容｣などを｢手がかり･ヒント｣にして、｢考察｣｢感想｣や｢体験｣｢創作｣を｢100字前後｣でまとめる練習を重ねておくことが必須だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜時間配分目安：５分＞