立教新座中学校 入試対策
2018年度「立教新座中学校の理科」
攻略のための学習方法
本文を読んで解き方を考える問題が特徴的だが、本年度はその比重がやや小さく、代わって教科書的な知識を問うものや、定番の計算処理を要求する問題が増えた印象である。いずれにしても、知識問題での失点は命取りになりかねないので、一般の中学受験用テキストに掲載されているレベルの知識はなるべく押さえておきたい。
知識問題の対策としては一問一答やメモリーチェックなどの教材が使い易いが、完璧に対策を取り切ろうとするとやや不足感がある。本年度で言えば父島の位置を問う設問などが該当するが、普段の勉強や日常生活で何気なく触れている情報を改めて問われると意外に答えられないものである。日頃から身の回りの情報に注意を払うと共に、写真や動画などの視聴覚教材を出来るだけ活用するようにしておくこと。
計算問題は、比較的問題集で練習するようなパターンの出題が多い。
ただ、多くの受験生が苦手とする問題を狙ってくる傾向にあるので、自信を持って解法を考えられるようになるまで、繰り返し同じ問題を練習しておくべきである。勿論、それだけでは初見の問題への対応力を養うのが難しい。夏頃までに問題集の反復演習を終え、秋以降、過去問演習の中で解法の型を応用していく練習に集中できるのがベストである。
また、計算問題ではわざわざ数値を複雑にするような設定も見られる。小数や分数で条件が与えられても整数の時と同様に考えられるようにしておくほか、整数で近似してどの程度の値になるかを手早く見積もれるような力も身につけておきたい。
考察問題にはあまり紛らわしいものが含まれないので、色々な難関校の過去問がこなせていれば十分対応できる。ただ、本年度は「すべて選べ」という設問の数が若干増加した。
同様の傾向は他の学校でも見られるので、今後は消去法のみでなく、各選択肢について正誤判断のポイントを明確にしていく訓練を強化していく必要があろう。
この点は、特に小学生の場合、一人で取り組ませているとかなり徹底が難しい部分である。塾の授業でも全ての選択肢について解説し切るのは時間的制約から不可能に近いので、家庭学習の充実度が問われることになる。
以下、各分野の学習において特に注力すべき点を挙げておく。
生物分野
本年度の題材は消化であったため、昨年、一昨年のように身近な生物に接した体験が問われるような出題は見られなかった。
臓器の写真を見せられると厳しい面もあるかもしれないが、模式図であれば練習問題で再三見ることになるので、さほど苦労は無かっただろう。ただ、動植物をテーマとする出題では実物に関する視覚的知識が必要になることが多いため、極力図説などで写真を確認しながら学習を進めたい。
また、分類に関する知識は入念にチェックしておこう。
地学分野
生物と同様、分類を押さえておくことが重要である。
本年度は火成岩や堆積岩の知識が問われたが、同範囲ではほかにもマグマの粘り気に応じた火山活動の違いや、流水のはたらきによって形成される地形の分類と用途などが問われる可能性がある。また、社会科で問われるような知識も題材にされることに注意しておこう。
天体では、知識面で言えば惑星の性質、一等星の色や星座の名称などに注意しておくこと。
また、計算問題も少なくないので、物理や化学と同様、定番の問題は着実に処理出来るように練度を高めておこう。
物理分野
計算問題については、作問に使える法則が限られているため、実は考え方の筋はそれ程多くない。問題集をやり込んでいれば、知識としては十分である。
問題は、多くの小学生が十分な習熟度の獲得に至るまでの練習を積まないまま、本番に臨んでしまう点にある。苦手意識から反復を避けがちになるというのも一因だが、学習の際、考え方の体系化が意識されないまま演習が反復されているという面もある。
攻略テーマを明確にして、集中的に取り組むように心がけよう。
化学分野
昨年度は原子核、本年度は分子をテーマとして、連年「原子」が扱われた。
原子そのものについての理解が問われるのは1問程度であり、知識が無くても考えれば解けるようにはなっているが、聞き慣れない概念を目の前にして怯まないためにも、多少の知識は入れておくのが望ましい。
また、化学分野の計算は化学反応の量的関係を問うもの、反応速度を問うものなど、様々なパターンの作問が可能である。完全反応時の関係を見出す問題は定番なので、少なくともここまではスムーズにこなせるようにしておきたいが、その他の問題についても、様々な過去問の演習に取り組むことで経験しておくのが良い。
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2018年度「立教新座中学校の理科」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
29個の解答箇所に対して時間は30分。
単純な知識問題が増え、読まなければならない文章量も少なかったため、やや余裕が感じられたかもしれない。ただし、大問3の解き方が分かっていればの話である。
最も難しいと思われる大問2の計算を飛ばして他で着実に得点できるような時間の使い方が出来れば問題はない。
【大問1】消化
- 難度:易
- 時間配分:5分
- ★必答問題
(1)〜(4)までは基礎知識として覚えておくべき事項。(6)の「すべて選べ」で過不足なく答えが選べるかどうかがポイント。
(5) 実験Ⅰについて、消化液が「放出されない」処理と「放出される」処理との違い、そして「放出される」処理における共通項に着目すると、胃液(に含まれる塩酸)の有無が消化液の放出に関与していることが分かる。
次に、実験ⅡとⅢからは、Aに直接塩酸を注射しても消化液が放出されず、塩酸と十二指腸の粘膜を混ぜて得られる物質が血液を通じてAに運ばれることで消化液が放出されることが分かる。
これらから、塩酸が十二指腸を刺激し、粘膜に含まれる物質が血液を通じて消化液放出の指示を与えていると推測される。
(6) (ア)、(エ)は血液を通じてAからの消化液放出を指示するという考察と矛盾する。さらに、(エ)は実験Ⅱの結果とも矛盾する。
【大問2】原子説と質量保存の法則
- 難度:難
- 時間配分:12分
原子や分子について正しく知識を持っていなければピンとこないかもしれない。ただ、この模式図が問題になるのは概ね(1)だけなので、分からなかったとしても、焦らず(2)以降の問題に取り組むこと。
(1) 模式図が意味しているのは、塩化水素と亜鉛が反応して水素と塩化亜鉛になるためには、塩化水素2組と亜鉛原子1個の組み合わせでなければならないということである。これは、水素という気体が常に水素原子2個の組み合わせで存在するということ、そして亜鉛原子は塩素原子2個と結合を作るという事実による。
したがって、反応に関わる塩素、水素、亜鉛原子の個数の比は常に一定となる。
文章中に「原子にはたくさんの種類があり、種類ごとに大きさやおもさなどの性質が決まっています」と書かれていることから、原子の個数の比が一定であれば、重さの比も一定になるはずである。
よって、(ア)は正解である。
一方、原子の種類ごとに重さは異なるので、たとえば原子の個数の比が2:3であるからと言って、重さの比が2:3になるわけではない。
よって、(イ)は誤りである。
(ウ)は正しそうであるが、「亜鉛に加える塩化水素」という記述が誤り。
「亜鉛と反応する塩化水素」と書かれていれば正解である。過不足のない反応に必要とされる重さ以上に塩化水素を加えても、反応は進まない。
(エ)は、反応の前後に存在する原子の総数が変化しないことから、重さの合計は変わらないことが分かる。これが質量保存の法則が成り立つ理由である。
(オ)については、水素の出処が塩化水素に含まれる水素原子であることから、水素を含まない物質を亜鉛と反応させても水素は発生しないと判断できる。
(2) 過不足のない反応が生じた際の、反応物と生成物の重さの関係を求めることからスタートする。
まず、亜鉛6.5gが完全に溶けて水素0.2gが生じていることから、亜鉛と水素の重さの関係は特定される。これを用いて、0.1gの水素が発生した際に溶けた亜鉛の重さを考えると、6.5×1/2=3.25[g]と求められる。
この時、塩化水素3.65gは完全に消費されているわけなので、塩化水素3.65g、亜鉛3.25gが過不足なく反応し、水素0.1gが発生すると分かる。
さらに、質量保存の法則より、生成される塩化亜鉛は3.65+3.25−0.1=6.8[g]である。
塩化水素3.65g + 亜鉛3.25g → 水素0.1g + 塩化亜鉛6.8g
① 塩化水素と亜鉛のどちらが完全に反応しているかを考える。
たとえば亜鉛2.6gが完全に反応したと仮定すれば、対応して反応する塩化水素の重さは3.65:3.25=□:2.6の比例式を解くことにより、□=2.92[g]と求められる。
塩化水素3.3gを加えた場合、この必要量は十分に満たされることから、亜鉛の方が全て溶かされると分かる。よって、発生する水素の重さは3.25:0.1=2.6:□の比例式より、□=0.08[g]となる。
④ ①と③の結果から、反応によって水素0.08gと塩化亜鉛5.44gが生じていることが分かる。
ここで、塩化亜鉛から亜鉛分の重さを引くと5.44−2.6=2.84[g]となり、これが塩素分の重さとなる。
生成物中には水素原子と塩素原子が同数存在するため、0.08gと2.84gとの比が、水素原子と塩素原子各1個の重さの比を反映しているはずである。
よって、2.84÷0.08=35.5と計算できる。
(3) 知識ではなく、実験の説明から考えるべき問題。
(ア)(エ)「反応後の水溶液をろ過してそのろ液を蒸発させると、塩化亜鉛は白い粉として観察できます」という記述から、塩化亜鉛が水に溶ける物質であると分かる。また、水を蒸発させても固体として残っていることから、水の沸点まで温度を上げても気体にはならないと判断できる。
(イ)塩化亜鉛が水素と反応すると、元の塩化水素と亜鉛に戻ってしまうはずだが、そのような逆向きの反応は見られない。よって、塩化亜鉛は水素とほとんど反応しないと判断できる。
(ウ)ここまで見てきたように、化学反応による気体の発生は、反応物に含まれる気体原子が脱離して生じるものである。しかしながら、塩化亜鉛にも塩化水素にも酸素は含まれない。よって、酸素が発生するとは考えにくい。
【大問3】つり合い
- 難度:やや難
- 時間配分:8分
- ★必答問題
分かりづらいように多少の工夫が施されてはいるが、問題集の応用レベルでよく見られる問題に過ぎない。十分に練習できていれば、怖くない。
(1)(ⅱ) (ⅰ)の答えの通り、③を支点として、①と⑦におけるモーメント(支点からの距離×力)が等しくなるように考えれば良い。
(2)(ⅰ) ⑨を支点として考える。⑪に何も吊るさない状態では、⑥における反時計回りのモーメント3×200=600は、③における時計回りのモーメント6×100=600とつり合っている。
ここで⑪におもりを吊るすと、時計回りのモーメントが生じ、③におけるモーメントを部分的に置き換えていく。最終的に⑪に300gのおもりを吊るしたところで、⑪におけるモーメント2×300=600が⑥におけるモーメントと等しくなるが、この時、③にかかる力は0となる。
つまり、棒を⑨の1点のみで支えている状態と同じになり、⑪にこれ以上の力を加えると棒は時計回りに傾いてしまう。
(ⅱ) 今度は③を支点として、(ⅰ)と同様に考える。⑨にかかる力が0となる状態、つまり⑥と⑩で生じる時計回りのモーメントと、①で生じる反時計回りのモーメントが等しくなる状態を考えれば良い。
すなわち、2×□=3×200+7×200より、□=1000[g]の時、棒は③の1点のみで支えられている状態になる。よって、1000gを超える力を加えると、棒は反時計回りに傾いてしまう。
(3)(ⅰ) 平面におけるつり合いは、支点との位置関係を縦成分と横成分に分解し、それぞれの成分軸におけるモーメントを考えれば良い。
フックと②、④、㉒、㉔の4点を繋いだ状態でハンガーが水平になっていることから、重心は②−㉔、④−㉒の対角線を結ぶ交点上、すなわち⑬にあると考えられる。⑬を支点と考えると、①は縦方向に2離れた位置にあることから、③−㉓の軸上で③の方向に2×100=200のモーメントを生じさせると考えられる。
よって、㉓側に同じモーメントを生じさせるためには、㉓側に縦1つ分離れた位置に200gのおもりを吊るせば良いことになる。
同様に、①は⑬から横方向に2離れた位置にあることから、⑪−⑮の軸上でモーメントをつり合わせるためには、反対向きに横1つ分離れた位置に200gのおもりを吊るせば良い。
よって、⑬から縦1つ、横1つ離れた⑲の位置におもりを吊るせば良いことが分かる。
(ⅱ) ⑦ ③−㉓軸上におけるモーメントは、③の側に2×100+1×200=400となる。
よって、㉓の側に400のモーメントを生じさせるためには、残る200gの洗濯物を、400÷200=2の距離だけ縦方向に離れた㉓側の点に吊るせば良い。⑪−⑮軸上におけるモーメントを同様に計算すると⑪側に400である。
よって、同じく2の距離だけ横方向に離れた⑮側の点に吊るせば良い。両方の条件を満たす㉕の点が答えとなる。
⑨ ③−㉓軸上におけるモーメントは、③の側に2×100+1×200=400であるから、縦方向の条件は⑦の場合と同じである。
一方、⑪−⑮軸上では⑪側に2×100=200、⑮側に1×200=200のモーメントが生じていて、この段階で横方向の傾きは存在しない。よって、⑪−⑮軸上に新たなモーメントを発生させることがないよう、⑬との横方向の距離が0である点、すなわち③−㉓軸上の点を選ばなければならなくなる。
よって、③−㉓軸上で、⑬から㉓側に2つ離れた㉓が答えとなる。
⑱ ③−㉓軸上におけるモーメントは、③側に2×100=200、㉓側に1×200=200が生じており、縦方向のつり合いが成立している。
よって、縦方向に新たなモーメントを生じさせないため、残りの洗濯物は⑪−⑮軸上に吊るさなければならない。
一方、⑪−⑮軸上におけるモーメントを考えると、①の洗濯物が2×100=200のモーメントを⑪側に生じさせているのに対し、⑱は⑬からの横方向が0であるため、⑪−⑮軸上のモーメントには寄与しない。
よって、残りの200gは200のモーメントとのみつり合えば良いため、200÷200=1の距離だけ⑮側に離れた点を考えることになる。すなわち、⑭の点となる。
【大問4】笠原諸島の地質
- 難度:易
- 時間配分:5分
- ★必答問題
小笠原諸島を題材に幅広い内容が訊かれており、特に(1)と(9)は社会科でも出題されそうな問題である。いずれも、中学入試に頻出の知識問題対策が出来ていれば難しくはない。
(1) 日本の世界自然遺産(知床、白神山地、屋久島、小笠原諸島)は数が少ないので全て覚えておくこと。一方、富士山が世界文化遺産として登録されている点に注意。
(2) 他の生態系との交わりが無い環境では、生物は環境に固有の進化を遂げる傾向にある。
(6) (イ)は示相化石、(ウ)は示準化石の特徴。(エ)が分かりにくいが、化石とは生物死骸そのものだけでなく、生物の痕跡を示すもの全てだと認識しておくこと。
(8) 小笠原諸島の形成について文章から読み取れるのは、無人岩を形成するマグマを噴出した火山の噴火が先にあり(父島)、次いで無人岩ではない普通の安山岩や玄武岩を形成するマグマを噴出した火山噴火が起こった(母島、西之島)という点である。
よって、(イ)は正しいと考えられる半面、(ア)は時系列的に、(ウ)は岩石の性質の違いから不適当だと判断できる。また、(エ)は「母島列島には玄武岩と安山岩が『多く』見られます」という記述があることからも、「全て」ではないと判断できる。
攻略のポイント
まず、大問1と4で失点しないことがポイント。
世界自然遺産の列挙や父島の位置は落とし穴になった可能性があるが、基礎レベルの知識や考察を問う設問ばかりなので、差がつくとすれば大問2と3であろう。
大問2の(2)は定番の計算問題だが、比例計算が若干面倒なので、それだけで回避してしまいたくなるかもしれない。だが、難関校の入試においては「確実に解き方が分かる問題」というのはそれだけでありがたい存在である。こういった問題が地道に解き進められるかどうかは重要である。
また、大問3については、これを「確実に解き方が分かる問題」に出来ていたかどうかがポイントになる。特に(3)の問題は解き方さえ知っていれば難しくないので、この辺りの仕上がり具合が合否を分ける鍵となろう。
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