明治大学付属明治中学校 入試対策
2022年度「明治大学付属明治中学校の算数」
攻略のための学習方法
「正攻法で攻めよ」明明の算数対策を一言で表わすならば、これに尽きる。
とりたててスピードも要らないし、超難問を解きほぐせるひらめきも要らない。受験算数という枠組みの、真ん中の道を進んでいけば、おのずから合格への道は開けよう。
《オーソドックスな問題》
50分で大問5題、設問15・6題という分量はきわめてオーソドックスである。上位校としては、やや少なめかもしれない。普通に研鑽を積んでいけば、時間不足になって解けないと言うことは無い。持っている力を十分に出して問題にあたれるはずだ。
また、難易度について言えば、やはりオーソドックスな難問が並んでいるという感じである。易しいとは言えないが、決して解けないレベルではない。
他校に見られるような「捨て問」の類がきわめて少なく、0点から100点までで算数の力が競える。点差はつきやすくなるが、算数が得意な生徒は満点近くを狙えるし、なにより奇問・超難問によって生徒が悩むことがないのはきわめて評価できる点だ。どの問題にも既視感があり、生徒は安心して問題解法に進んでいけることだろう。
しかしながら、明明の壁は高く、そのハードルを越えるのは容易ではない。
つまり、自分から見て「簡単だ」と思えるものは他者がみても同じであり、自分から見て「やりやすい」と思えるものは、他者から見てもやりやすいからだ。ここは誤解しやすいところである。明明の競争率が高いのは、テスト問題へのとっつきやすさも影響している。
ある生徒が「やりやすい」と感じて選択するとき、他の生徒たちも同じ感想を持って明明を選択している。奇問・超難問を克服するよりは確かに対策は立てやすいが、いまわの際でライバルたちに差をつけなければならない困難さも理解しておこう。
《公式の応用》
では、実際の入試問題において、明明対策はどのようになされるべきか。
どの問題にも一貫して言えることは、手数のかかる問題が多いと言うことだ。大問【1】の計算問題から始まり、大問【5】最後の設問に至るまでそれは徹底している。
「公式」と言うものがある。「公式」に当てはめれば答えが出るという問題も数多く存在するが、明明ではあまり見かけない。(「公式が分れば解ける」これは簡単を意味しない。特異な公式を使えば一発で出来ても、知らないと解けないか解法に苦労するという問題はたくさん存在する)
代わりに多く登場するのが、「公式」は分っていても、それだけでは解けないという、公式の応用を試される問題である。
明明で頻出の内容に「速さ」と「割合」がある。
この2つの内容は、誤解を恐れずに言えば、公式は一つずつしかない。
よく「割合の3用法」とか「速さの3つの公式」とか言うが、1つの式の解く箇所を変えているだけである。だから、普通の受験生であれば「公式」を知らないから解けない、という分野ではない。
平成27年度の問題にも、この2つの分野から出題はいくつも見られる。「食塩水」と「速さの比」と形を変えてはいても、使うのは「割合」と「速さ」の公式である。しかし、解ききるのは容易ではない。公式を何度も駆使して、ようやく解答までこぎ着けるというスタイルを取っている。
つまり、明明の算数では「公式の暗記量」よりも「公式の応用」に完全に重点が置かれていることがわかる。「規則性」の問題が意外に少ないのは、「規則性」の場合、その周期や決まりが分れば「公式」にあてはめて一発、という問題が多いからではないか。その代わり、「場合の数」のように、究極的な解き方は「数え上げる」という手法になる内容は多く出されている。
さらに言えば、明明の場合、「公式」にあてはめてさらっと解ける問題を避け、非常に手数のかかる、作業中心の問題が多い。
大問【1】では、計算問題は分数や小数、整数の混合算であり、逆算を要求されることもある。ここでも、「計算の工夫」一発というよりは、泥臭く計算を積み上げていくという問題が多い。一行問題には「和と差」「割合と比」「平面図形」などが多く出題されるが、やはり「公式は知っている」という前提でそれを使いこなせるかどうかが試されている。
大問【1】は、式は不要で、答えだけを求めればよいという形式ではあるが、大問【2】以降とさして変わらぬ作図や式が必要となる。多少難易度が低く設定されているだけである。
大問【2】以降では、より手作業が必要な問題が増えてくる。
「割合と比」、「速さの問題」、「場合の数」などである。
これらの内容は、大問【1】よりも難易度が高めに設定されているがやることはさして変わらない。よく知っている、よく使ってきた「公式」や「考え方」を用いて、丹念に作業を積み重ね、正解まで持って行くという地道な努力があるだけだ。
しかし、学校側はまさにそこを要求しているわけで、コツコツと作業をしていく問題が得意な生徒には向いていると言えるだろう。
その代わり、男子によく見られる例で、ひらめきにかけては自信があるが、ノートに式を書いて求めていくのはイヤ(何が書いてあるのかさっぱりわからない~)という生徒、または苦手な生徒はこれから自分自身のやり方を方向転換しなければならない。この学校の姿勢がそうである以上、それに合わせて自分のスタイルを変えていくのが賢明な受験生である。
今までのことをまとめると、この学校では作業を要求される問題を多く出題するので、生徒はそれに対応できるように努力するべし、と言うことになる。
《実践問題演習》
では、どのように普段の勉強を積んでいけばよいか。
まず、大問【1】レベルの、基本ではあるが、基本の中では最上級クラスの問題の解き方を身につけることが先決だ。ここでの5問は、明明合格への競争に参加できるかどうか、という資格が問われるところだ。このレベルで苦戦しているようでは、まだ後半の問題に取りかかるのは早計である。まずは一行問題を極めよう。手元によい問題集なり参考書があるはずだ。
そして大問【1】を突破し、大問【2】~【5】の問題に挑むにあたっては、過去問も含め、解く問題の分量はどうしても限られてくるので、要領よく時間を使って“合格の力”をつけたい。
大切なことは、問題の難易度に注意するということ。問題が易しすぎては話にならないが、超難問に時間を費やしても「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」である。自信もなくしかねない。過去問と同じ難易度を持つ他校の問題、たとえば「芝中」や「城北中」のような、男子進学校の問題を選んで解けばよいだろう。後半にある「捨て問」覚悟の難問ではなく、中盤の問題で十分だ。
また、出題範囲は限られているので、その分野の問題に絞って作業のコツなどを身につけながら力を蓄えていくのもよい。
特に、「動く点」の問題や「場合の数」の場合は、式ではなくて、表などに数値をまとめていくことが多い。ていねいに数値を数えていけるよう、普段から気をつけて作業に臨みたいものだ。
はじめのうちは時間を気にしなくてよい。納得いくまで時間をかけて問題の深みを味わおう。明明の難易度が体感できるはずだ。
秋が深まってくる頃には、大問1つを8分以内にこなせるスピードを会得し、算数で高得点が取れるよう仕上げていきたい。
算数の基本的な力を持つ生徒であれば、誰もが挑戦可能な難易度で「おもてなし」をしてくれる学校である。自分なりにテーマを持って挑戦し、合格を目指してもらいたい。
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2022年度「明治大学付属明治中学校の算数」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
50分で大問が5題、小問が14題。
はじめに計算問題を含む小問が5題あり、そのあと大問が4問という並びは例年通りである。
【大問1】は答えのみ、【大問2】以降は、式や考え方も解答用紙に書き込むという形式で、出題傾向も明確であり、過去問の対策を十分にしておけば合格点はしっかり取れる学校である。本年度だと【大問2】【大問4】が点数がとりやすかった。逆に【大問3】「ニュートン算」が勝負を分けたか?
時間と問題数がマッチした学校であり、良問が多く受験生は時間に追われることなく自分の力を十分出せる分量になっている。
【大問1】小問5題(逆算の計算問題・仕事算・差集め算・速さと比・平面図形の面積)
- 難度:標準
- 時間配分:16分
- ★必答問題
(1)はじめの計算問題は8年連続で□が中ほどにある逆算の問題。ここは確実に正解しておきたい。
(2)は仕事算に周期算を合わせたタイプで、何度も解いてきた経験があるだろう。まず、A+B+CとA+Bの仕事量の比をとると8:5である。ここからCの仕事量は3とわかる。次に全体の仕事量を8×25=200として、1日目と2日目の仕事量の和(A+C+B+C)を8+3=11と求め
200÷11を計算すると18であまりが出る。つまり、2日1周期で仕事をすると18回と少しかかると言うこと。このことから答えが求められる。ぜひ正解しておきたい。
(3)は【大問1】の中では最も難しい差集め算で、AとBの脚数をそろえながら全体の差をとらなくてはならない。Bの脚数はAの2倍よりも20脚少ないので、2倍に増やすと6×20=120人がまだ座れることになり、「3人が座れない」ことから120-3=117人が座れる。Bの脚数をAにそろえると1つの長椅子に6×2=12人ずつ座らせて全体との差をとる。そこからAの脚数を求め生徒の数も求めていく。
(4)3種類の速さを2つにまとめて、平均の面積図を用いて解いていく問題。上りと平地を歩くのにかかった時間は同じだから、(3+4)÷2で3.5km/hとまとめることができる。全体の平均の速さは4.5km/hなので、「上り+平地」にかかった時間と「下り」にかかった時間の比が求められる。あとは「速さ×時間」の公式から道のりの長さを求めていけば良い。
(5)これは典型題と考えていいだろう。アとイ+ウに共通する図形の面積を加えた上でそれぞれの面積の差を求める。
全問正解かもしくは間違えても1題にとどめたい。
【大問2】平均算
- 難度:易
- 時間配分:6分
- ★必答問題
ここでは【大問1】(4)と同じように平均の面積図を使って答えを出していくが、こちらの問題の方がずいぶんとやさしくなっている。
(1)では、男女それぞれの平均点とクラス全員の平均点が出ているので面積図から男子:女子の比が求まる(6:5)。その比1つの差が3人に当たるので…という「易」レベルの設問。
(2)では、男子全員の合計点からA,B,Cの3人を除く合計点をひいてA,B,Cの和を出し、Aくんの点数は7点なのでさらにそこからひけばBとCの和が求まる…という設問である。
いずれにしても明大明治としては破格の易しさなので短時間でしっかりと正解すること。
【大問3】ニュートン算
- 難度:やや難
- 時間配分:10分
明大明治名物のニュートン算がここに参上。毎年出題されるだけあって平易なニュートン算はないものの、この学校の対策を十分にしてきた生徒には解けない問題ではない。
ニュートン算の解き方はいくつかあるが、ここでは水量を割合(分数)で表す条件が出てくるので線分図を2本書いて、その差を利用するという方法が普通だと思う。もちろん、等式で表したりSAPIX型の解き方でもかまわない。
(1)この問題には2つの分からない数値(9時に入ったいた水量と配水管1本が排出する水量)があるので、それぞれの大きさを①、などと表して2つの線分図に書き込んでいく。
線分図は書けないので数式だけを書くと、9時から10分までの式は
①+140L-=12
9時10分から20分までの式は
12 +140L-=13
となる。ここからの大きさを求めていけば良い。
(2)は(1)が出来ていればボーナスステージとなっている。
(3)これも(2)と連動していて、9時の水量から9時20分時の水量が分かればあとは1分間に何Lずつ増えていくかを計算すれば良い。
このニュートン算の難易度を「やや難」としたのは、(1)が解けなかった場合まったく前に進めないので点差がつきやすいと感じたからだ。ニュートン算対策は念には念を入れて行おう。
【大問4】流水算
- 難度:標準
- 時間配分:9分
- ★必答問題
この大問では(1)はボーナスステージで正解必至、(2)には少しユニークな仕掛けがしてありそこを受験生が突破できるかがポイントになっていて面白い。
(1)では問題文の初めに「25km下るのにかかる時間と5km上るのにかかる時間は等しい」と書いてあるので、下りと上りの速さの比は5:1とすぐわかり、(5+1)÷2=3がいつも静水時の速さ、(5-1)÷2=2が川の流れの速さと求められる。ここはあっけなく解けてしまう。
(2)ここでのポイントは静水時の速さを行き帰りとも変えてあるのは分かるものの、行きと帰りのどちらが上りでどちらが下りかが指定されていないことだ。往復の時間は1時間5分と出ているのに…あせらずに考えてみよう。どちらが上りか、決めてみたい。行きが上りならば静水時の速さは4.5となり、4.5-2=2.5で上りの速さが求まるのに対し、帰りが上りならば静水時の速さは2となり、2-2=0で上りの速さが0になってしまう。これでは船は往復できないのだ。以上のことから、行きが上りで帰りが下りとわかる。わかればあまり難しい問題ではなく、上り・下りの速さからかかった時間の比を求め、1時間5分を比例配分していく…といういつもの解き方で正解までたどり着くことが出来る。
(1)はもちろん正解として(2)が出来ると合格への勇気もわいてくるというものだ。
【大問5】平面図形と比
- 難度:標準
- 時間配分:9分
普段あまり見られぬ五角形の図を与えられ、各辺の平行具合や辺の長さが多く書かれている。それらを確認した上で数値を書き込んでいくとこの問題は五角形ではなくて補助線を利用し、AE、CDを延長して全体を平行四辺形として解いていくのだな、ということがわかる。平行四辺形では向かい合う辺の長さが等しいから、あとから延長した辺の長さも整数で書き込める。
(1)ではAEとCDを延長して全体の大きさを決め、あとは全体の面積を1とするまたは三角形FBGの面積を2×2÷2から2、三角形ABCの面積を4×3÷2から6、平行四辺形全体の面積は三角形ABCの2倍で、つけたした三角形の面積は1×1÷2から0.5などと数値を与えることが出来る。あとは必要な部分を比にするだけ。
(2)では、GDも延長してAEのさらなる延長線との交点から出来る三角形を考えるなどレベルが上がっている。相似形の問題になっているので得意な生徒はぜひチャレンジしてみよう。
攻略のポイント
テスト時間は50分で100点満点。受験者平均が52.3、合格者平均が68.8と前年度よりも問題1つ分くらい上がって例年並みになった。受験生が苦手にしやすい分野(立体図形・場合の数など)からの出題はなかったので、算数が得意な生徒は満点近い得点が出来たのではないか。
【大問1】【大問2】【大問4】はすべて正解して欲しいところ。【大問3】のニュートン算は例年と同じくレベルが高く、点数をとりやすい大問で得点を積み重ねておきたい。
明大明治特有の、条件の複雑な大問群に立ち向かうには、基本問題の徹底履修だけでは難しく、基本的な公式や解き方を身につけたら、設問が2つ以上ある、条件の複雑な問題にもトライしてみることがおすすめだ。また、「割合と比にかたよった出題」は変わらないものの、図形の頻度が高くなっている感がある。今後も気をつけたい。
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