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開成中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2022年度「開成中学校の国語」
攻略のための学習方法

知識

相当ハイレベルな「知識」が要求される。一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。開成を志した時点から、しっかりと取り組むこと。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。

これらの「語彙」は単に直接出題されるというだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。「自分の言葉で」という設問条件もあり、いかに適切な「言葉」を用いるかが勝負となる。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることもあるし(直近では2010年度に「形容詞の音便」が問われた)、何しろ「記述」には不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

尚、開成志望者は「基礎の基礎」もなおざりにしないこと。かつては「かなづかい」、2014年度には「ひらがなの筆順」が出題されたこともある。要注意。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには7000字以上。しかも、解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつはしょって読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自ら聞いてみてもいい。

その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。開成だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、「女子御三家」は開成の問題文にも通じる内容のものも多いのでオススメだ。練習あるのみ。そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。

解法

「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。

特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。「記述」を避けて開成合格はあり得ない。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わるかどうか、確認しなくてはいけない。

何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~100字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。

次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、ひとつ当たりその程度が目安だ。
マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

ある程度「感覚」がつかめたら、開成定番の「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていくと良い。

意識

最後に、常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。何となく机に向っていてもムダだ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。

開成の問題では特に「設問条件」が重視される。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2022年度「開成中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

出典は森沢明夫「おいしくて泣くとき」(文字数約12000字)。小問は全6問(解答数は9)。「説明記述」(全5問。「45~60字以内」、「25~40字以内」、「35~50字以内」、「50~65字以内」、「60~75字以内」の各1問)、「漢字の書き取り」4問。問題文は16~17分で読み切り、設問を34分弱で解きたい。

「小説の読解」(「説明記述」5問。「漢字の書きとり」全4問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:50
  • ★必答問題

貧困家庭の子どもたちに無料で「こども飯」を提供する「大衆食堂かざま」の息子である中学生の「心也」(俺)と、幼なじみの「夕花」はクラスメイト。二人はなかば強引に学級新聞の編集委員を押し付けられたことから距離が近づき、そして、ある事件に巻き込まれ……。遠い海辺の町へと逃亡した二人の中学生の恋心と葛藤。無力な子どもたちをとりまく大人たちの深い想いの物語。本文では、自分たちに「ひま部」と名づけ学級新聞制作の活動を始めた二人の様子が生き生きと描かれている。「心情説明記述」3問と「理由説明記述」・「内容説明記述」各1問という設問構成だ。以下、いくつかを検証する。

[問一] 「漢字の書きとり」(全4問)。

本校の「漢字問題」は2005年以降4~5問(但し、一昨年度は「7問」で昨年度は「3問」だった。近年は難易度も含めて揺れ動いているので注意すること)。また、一昨年度までは問題文に「ハネ・トメなど丁寧でない場合は減点されることもあります」と「注意」が添えられていた。昨年度同様に本年度もその注意書きはないが、配慮することは当然だ。「答え」を確認していく。

  • ヘイセイを装いながら」=「平静」⇒これは基本的な「熟語」、できて当然。

ヤジウマたちを押しのける」=「野次馬」⇒「自分に関係のないことに、興味本位で騒ぎ立て、見物すること。また、人のしりについて騒ぎ回ること。また、その人々」という意味も含めて知らなくてはいけない。
マンメンの笑み」=「満面」⇒これは平易だ。
キンコツ隆々としていた身体」=「筋骨」⇒やや難解か? 「筋骨隆々」(=筋肉や骨格といった体つきがたくましいこと)で覚えておきたい。

                                <時間配分目安:全問で2分弱>

[問二] 「理由説明記述」(「45~60字以内」指定)。

傍線部(1)「さすがにこたえた」について、「それはなぜか」を「四十五字以上、六十字以内」で説明する。「理由説明」で大きな「手がかり」となる「きっかけ・結果」を確認したい。

「傍線部一文一部の法則」でチェックする(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前に「クラスで最初に仲良くなった友人に『お前んち、偽善者の店って言われてるらしいぞ。知ってた?』と言われたときは」とある。これが「直接的理由」につながる「きっかけ」だと分かるはずだ。次に、「同一場面」から「状況」を読み解いていく(「同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説」の「解法」の大原則だ)。同一段落および前段落から、「俺」の父が営む「大衆食堂かざま」が「こども飯」サービスをはじめたことで、さまざまな形で「偽善者」呼ばわりされていたことが読み取れる。それらは「店」や店主である「父」に「向けた放たれた三文字」だったが、「仲良くなった友人」に直接言われたことで衝撃を受け、「さすがにこたえた」わけだ。あとは、「最重要要素」(「理由説明」では「直接的理由」)を「文末」として、「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「父の食堂の『こども飯』サービスは周囲から『偽善者』呼ばわりされていたが仲良しの友人に直接言われたことで衝撃を受けたから。」(60字)といった「答え」になる。「説明記述」では、必ず「最重要要素」を「文末」とし、その他の「要素」を「指定字数」に応じて加えていくこと。

                                    <時間配分目安:4分>

[問三] 「心情説明記述」(「25~40字以内」指定)。

傍線部(2)「なるほど――って、何だよ?」について、「この時の心也の気持ち」を「二十五字以上、四十字以内」で説明する。先ずは「傍線部一文一部の法則」で「手がかり」を確認する。直後に「この瞬間、これまで俺がヤジさんに抱いていた『好感』の絶対量が、一気に半減するのを感じた」とある。「俺」=「心也」だ。つまり、「この時」の「心也」の心情は「ヤジさんに対する失望」だと読み取れるはずだ。次に、何に関して「なるほど」なのかを「同一場面」から読み取っていきたい。「俺」の教室の机に記された「偽善者」という「落書き」のことを「矢島先生(ヤジさん)」に説明したとき、「ヤジさん」が「偽善者か……。なるほど。まあ、しかし、お前も大変だよな」と言っていることが分かる。あとは「心情」が明確になるようにまとめていきたい。たとえば、「好感を抱いていたヤジさんが『偽善者』という落書きに納得したことに失望する気持ち。」(40字)といった「答え」だ。尚、「小説」では必ず「心情」が問われる。その際、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」といった具合に多角的に読み取ることが肝要だと心得よ。

                                    <時間配分目安:3分>

[問四] 「内容説明記述」(「35~50字以内」指定)。

傍線部(3)「この感じは、やっばり『怒り』だよな――」について、「心也はどのようなことに怒りを感じたのか」を「三十五字以上、五十字以内」で説明する。「同一場面」から「状況」を読み解きたい。直前から、「偽善者のムスコ」という「毒を孕(はら)んだ言葉」である「落書き」を「思い出したら、俺の胃のなかで、嫌な熱がとぐろを巻きはじめた」ことが分かる。そして、直後には「『怒り』の理由が明確になった」とあり、「ムスコという三文字がやたらに腹立たしい意味を持つこと」に気づき、「俺はただのムスコであって、偽善者と罵(ののし)られたのは父だ。父が、クラスメイトたちの前で吊(つ)るし上げられたのだ」と続いている。こうした「状況」が「怒りを感じた」ことの「内容」だと読み解ける。したがって、あとは「最重要要素」を「文末」とし、その他の「必要要素」を「指定字数」に応じて加えていくことになる。たとえば、「『偽善者のムスコ』という毒を孕んだ落書きによって、父がクラスメイトたちの前で吊るし上げられたこと。」(49字)といった「答え」になる。「状況」を「文脈」に即して正確に読み解いていくことが重要だ。

                                     <時間配分目安:4分>

攻略のポイント

近年、出題傾向や難易度が一貫していない。本年度は「小説」のみで、まるで「麻布中学校」の「国語」のようだ。まあ、流石(さすが)に「関東の雄」だけあって、「いかなる問題にも対処せよ」ということだ。したがって、相応の準備が不可欠。合格ラインは60%弱(85点満点。過去14年間の合格者平均得点率は58.9%、本年度は下がって53.6%)。

●配点は「漢字(知識)問題」が各2~3点(本年度は3点)、「説明記述問題」はこれまで各5~15点程度だったが、本年度は「10~20点」と一気にアップしているので留意せよ。「知識」は無論、全問正解が基本。「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、「解答順」を決める。どうにもなりそうにない設問で時間を取られるよりは、勇気を持って「後回し」にする方が結果としては得策。そして、各設問でいかに減点をなくすかも課題だ。本校の場合、特に「設問条件」に留意すること。設問に的確に応じていくことを常に意識したい。

●時間配分には細心の注意が必要。近年は問題文のボリュームが増えているのでなおさらだ(本年度はなんと約12000字)。他の上位校と比べても長文だ。したがって、いかに速く正しく読み取るかが勝負となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ

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