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開成中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2020年度「開成中学校の国語」
攻略のための学習方法

知識

相当ハイレベルな「知識」が要求される。一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。開成を志した時点から、しっかりと取り組むこと。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる

これらの「語彙」は単に直接出題されるというだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。「自分の言葉で」という設問条件もあり、いかに適切な「言葉」を用いるかが勝負となる。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることもあるし(直近では2010年度に「形容詞の音便」が問われた)、何しろ「記述」には不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

尚、開成志望者は「基礎の基礎」もなおざりにしないこと。かつては「かなづかい」、2014年度には「ひらがなの筆順」が出題されたこともある。要注意。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには7000字以上。しかも、解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつはしょって読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自ら聞いてみてもいい。

その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。開成だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、「女子御三家」は開成の問題文にも通じる内容のものも多いのでオススメだ。練習あるのみ。そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい

解法

「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。

特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。「記述」を避けて開成合格はあり得ない。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わるかどうか、確認しなくてはいけない。

何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~100字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。

次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、ひとつ当たりその程度が目安だ。
マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

ある程度「感覚」がつかめたら、開成定番の「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていくと良い。

意識

最後に、常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。何となく机に向っていてもムダだ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。

開成の問題では特に「設問条件」が重視される。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ

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2020年度「開成中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「小説」、出典は朝比奈あすか「君たちは今が世界(すべて)」(文字数約4200字)。

小問は全5問(解答数も5)。「字数指定なし」の「説明記述問題」のみ5問。「設問内容」は「理由説明」2問、「心情変化説明」と「心情説明」、「内容説明」が各1問。

問題文は5分半程度で読み切り、設問を22~23分程で解きたい。

 

大問は「説明文」、出典は瀬川千秋「中国  虫の奇聞録」(文字数約1200字)。

小問は全3問(解答数は9)。字数指定なしの「説明記述問題」2問(ともに「内容説明」)と、「漢字の書き取り」7問。

問題文は1分半強で読み切り、設問を20分ほどで解きたい。

【大問一】「小説の読解」(「説明記述」のみ5問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:28分
  • ★必答問題

「いじられ役」「優等生」「問題児」「クラスの女王の親友」。教室での立ち位置が全く違う小学6年生の4人は、苦悩と希望を抱えながら自分の居場所を必死に探し求めていく――教室というちっぽけな王国の先に「本当の世界」が待っていることを教えてくれる物語。

本文では、女王「カナ」の親友である内気な「めぐ美」の、活発な「ひなっち」との出会いや「カナ」に振り回される様子などが描かれている。本校の典型的な「小説」の「説明記述」が並んでいる。以下、いくつかの「設問」を検証する。

 

[問一] 「心情変化説明記述」(字数指定なし。解答欄2行。1行=30~35字程度。以下同じ)。傍線部(1)「同じ班になった『ひなっち』という子と仲良くなった」について、「『めぐ美』は『ひなっち』と出会ったことで、どのように変わったのか」を説明する。

「同一場面」から「状況」を捉え「心情」を読み解いていきたい(「同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説」の「解法」の大原則だ)。確認すると、次段落で「心情」の「変化」が説明されていることが分かる。「ひとりで本を読む」ことが好きな「めぐ美」は周りから「寂しそうに見られ」、また、「わあっと盛り上がるノリには気後れしていた」。「だけど、ひなっちに引っ張られているうちに」、「友達は増えていったし」「盛り上がることも楽しめるようになってきた」。「その自信は、本からでは、得られないものだった」などとある。こうした内容を、「変化」の「前後」を明確にして、「過不足なく」まとめていけばいい。たとえば、「ひとりで本を読むことが好きで、周りのノリには気後れしていたが、ひなっちに引っ張られ友達は増え、盛り上がることも楽しめ、自信がついていった。」(69字)という「答え」になる。

尚、本問に限らず「心情」の把握は、「状況」も踏まえて多角的に行うことが肝要だ。

<時間配分目安:4分>

 

[問二] 「条件付き内容説明記述」(字数指定なし。解答欄1行)。傍線部(2)の「『親友』」に「カギ括弧(かっこ)がついていることで、どのような意味になっているか」を説明する。「条件」は「『~という意味ではなく、~という意味。』の形で答える」こと。

先ずは、誰と誰が「親友」なのかを「傍線部一文一部の法則」(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる「解法」)で確認する。直前から、「カナ」と「めぐ美」だと分かる。さて、わざわざ「カギ括弧」がついているということは、ここでの「親友」は「原意」(本来の意味)の「互いに心を許し合っている友」という意味ではないわけだ。

では、「カナ」と「めぐ美」はどのような「友」なのか? 「同一場面の直前直後」の「状況」から、ふたりはいつも一緒にはいるが、心を許し合っているとはいえない表面的な関係だと読み取れる。したがって、たとえば、「心を許し合っている友という意味ではなく、表面的な関係の友達という意味。」(35字)といった「答え」だ。

尚、「条件」は「手がかり・ヒント」でもあると心得よ

<時間配分目安:3分>

 

[問四] 「理由説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。傍線部(4)「かったるそうな声で返すと」について、「なぜめぐ美は『かったるそうな声』を出したのか」を説明する。

先ずは、前後の「状況」から「めぐ美」は誰に「かったるそうな声」で、どのような返事をしたのかを確認する。合奏会で担当する楽器について「カナ」に訊(たず)ねられた時の、「えー、決めらんない、てか、なんでもいい」という返事だと分かる。

では、なぜ「かったるそうな声」、要は「乗り気のしない声」だったのか? 直前で、本当は「マラカスがいいな」と思っていたが、「やりたい楽器をもう決めているなんて、張り切りすぎている気がしたから」と説明されている。つまり、「張り切りすぎているとカナに思われたくなかったから」というのが「直接的理由」になる。

どうして「カナ」にそう思われたくなかったのか? 「同一場面」の中ほどに、「カナ」はいつも「自己中心的に振る舞っていて」とある。そういう「カナ」だからこそ、「めぐ美」は「張り切りすぎていると思われたくなかった」と判断できるはずだ。これが「間接的理由」となる。

あとは、的確にまとめていきたい。たとえば、「本当は合奏会でマラカスを演奏したかったが、楽器をもう決めているなんて張り切りすぎていると、自己中心的なカナに思われたくなかったから。」(66字)というような「答え」になる。

「理由説明記述」では、「間接的理由」→「直接的理由」とまとめることが肝要だ。

<時間配分目安:5分>

 

【大問二】「説明文の読解」(「漢字の書きとり」7問と「説明記述」2問)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:22分

中国文明の中で大きな役割を果たしてきた虫の中から6種類を取り上げ、歴史・文学・美術・生態観察・昆虫食の逸話(いつわ)も交えて、虫から見た中国文化を説明している。馴染みの薄い題材で、難解な語句も多いが、しっかりと内容を理解してほしい。いかにも本校らしい大問だ。以下、2問を確認する。

 

[問一] 「漢字の書きとり」(7問)。

本校の「漢字問題」は2005年以降4~5問だったが、本年度初めて「7問」となった。また、これまでは比較的平易なものが多かったが、難易度も上がっている。さらに、問題文に「ハネ・トメなど丁寧でない場合は減点されることもあります」と注意が添えられている。本年度の「漢字の書きとり」は異例づくめ、要注意だ

確認していく。

「『蛍の光』は……明治時代からうたわれてきたなじみのショウカだ」=「唱歌」⇒「文脈」を正しく捉えよ。

「中国の故事にユライしている」=「由来」⇒これはできて当然。

「ふたりはコウカンにまで出世した」=「高官」⇒「同音異義語」に注意。

「好んだビダンである」=「美談」⇒この言葉は知っておきたい。

「蛍雪のコウ」=「功」⇒定番の「故事成語」だ。

「『蛍雪の功』というセイゴ」=「成語」⇒問題ないはず。

「ソッキンに……ホタルを捕ってこさせ」=「側近」⇒「権力者や貴人のそば近く仕えること。また、その人」という意味も覚えておきたい。

来年度以降も「新傾向」に対応できるようにしておくこと。

<時間配分目安:2分>

 

[問二] 「内容説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。傍線部(1)「康熙帝(こうきてい)らしい実証的な態度」について、それは「どのような態度か」を説明する。

無論、「実証的」の「原意」が最大の「手がかり」になる(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。「実証的」=「思考だけでなく、体験に基づく事実などによって結論づけられるさま」だということ知っているはずだ。ここでは、何についてどのような「体験に基づく事実」によって何を「結論」づけたのかを、「同一意味段落」から読み取っていきたい(「論説文」では「同一意味段落に根拠・手がかりがある」が基本的解法)。

傍線部を含む前の3段落から、「車胤(しゃいん)の故事」に基づく「蛍雪の功」の美談で、「ホタルの光なんかで本が読めるものだろうか」という「疑い」について、「百匹あまりのホタル」で「試してみたところ、文字を判読することすらできなかった」という「体験に基づく事実」によって、「車胤の故事は嘘(うそ)っぱちである」と「結論」づけたことが読み取れる。さらに、「傍線部一文一部の法則」で確認すると、「康熙帝」は「西洋の幾何学(きかがく)や医学、天文学、音楽までを貪欲(どんよく)に吸収した」ことが分かる。

以上のような要素を適切にまとめていけばいい。たとえば、「故事だからといってそのまま信じるのではなく、蛍雪の功の美談では、実際にホタルを集めて本が読めるかを試すといった、客観的事実を重視する態度。」(69字)といった「答え」だ。

本校では、「同一意味段落」を丁寧に読み取り、的確に「過不足なく」述べてしていくことが求められている

<時間配分目安:6分半>

攻略のポイント

●一昨年度唐突に出題された、新たな大学入試制度で問われている「思考力・判断力・表現力」を見据えた設問がここ2年は影をひそめた。だが、決して油断をしてはならない。これまでの「本校対策」だけではなく、「思考力・判断力・表現力」を培うべく備えておくことが肝要だ。

●前述のように、本年度は「漢字問題」で新たな傾向が見られた。来年度以降に向けても十全の対策が求められると心得よ。

●近年、出題傾向が難易度は一貫していない。流石(さすが)に「関東の雄」だけあって、「いかなる問題にも対処せよ」ということだ。したがって、相応の準備が不可欠。合格ラインはほぼ60%(85点満点。過去12年間の合格者平均得点率は60.1%、本年度は60.6%)。

●配点は「漢字(知識)問題」が各2~3点、「説明記述問題」は各5~13点程度だ。「知識」は無論、全問正解が基本。「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、「捨て問」を決める。どうにもならない設問に時間を取られるよりは、勇気を持って無視する方が結果としては得策。そして、答えた設問でいかに減点をなくすかが課題だ。本校の場合、特に「設問条件」に留意すること。設問に的確に応じていくことを常に意識したい。

●時間配分には細心の注意が必要。問題文のボリュームは短くても5000字ほど(本年度は約5400字)。他の上位校と比べて決して多くはないが、いかに速く正しく読み取るかが勝負となることには変わりない。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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