開成中学校 入試対策
2017年度「開成中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
相当ハイレベルな「知識」が要求される。一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。開成を志した時点から、しっかりと取り組むこと。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙」は単に直接出題されるというだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。「自分の言葉で」という設問条件もあり、いかに適切な「言葉」を用いるかが勝負となる。
そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることもあるし(直近では2010年度に「形容詞の音便」が問われた)、何しろ「記述」には不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
尚、開成志望者は「基礎の基礎」もなおざりにしないこと。かつては「かなづかい」、2014年度には「ひらがなの筆順」が出題されたこともある。要注意。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには7000字以上。しかも、解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。
「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつはしょって読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自ら聞いてみてもいい。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。開成だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、「女子御三家」は開成の問題文にも通じる内容のものも多いのでオススメだ。練習あるのみ。そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。
特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。
そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。「記述」を避けて開成合格はあり得ない。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わるかどうか、確認しなくてはいけない。
何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~100字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。
次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、ひとつ当たりその程度が目安だ。
マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、開成定番の「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていくと良い。
意識
最後に、常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。何となく机に向っていてもムダだ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。
開成の問題では特に「設問条件」が重視される。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2017年度「開成中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「小説」、出典は南木佳士「熊出没注意――南木佳士自選短篇小説集」所収の「ニジマスを釣る」(文字数約4800字)。
小問は全6問(解答数は10)。「字数指定なし」の「説明記述問題」5問と「漢字書きとり」1問(解答数5)。「設問内容」は「内容説明」「換言説明」「心情説明」「理由説明」。問題文は7分弱で読み切り、設問を30数分で解きたい。
大問二は「詩」、出典は「日本児童文学大系」所収の佐藤義美「アイスクリームのうた」(文字数58字)。
小問は全2問(解答数も2)。全て字数指定なしの「説明記述問題」。「設問内容」は「『敬語』の内容説明」「理由説明」。問題文は数1分ほどで読み切り、設問を10分程度で解きたい。
【大問1】小説
- 難度:標準
- 時間配分:38分
- ★必答問題
からだに飛び込んできた言葉が、からだのなかで次の言葉を生む――著者自らが選んだ全10篇の中の一作。東京近郊の団地に住む一家が、土砂崩れにあった先祖の墓を里山に移すために、ゴールデンウイークに夫の両親が暮らす北関東の村に家族で帰省する物語。
本文では、語り手である「父」が妻の「澄子」、長男「真一」、次男「健二」とともに、帰省先の実家の唐松林の倒木処理をする姿が描かれている。家族それぞれの性格の違いや心情の機微が問われており、「記述力」とともに鋭い「思考力」も求められている。いかにも本校らしい大問だ。
以下、いくつかの「設問」を検証する。
[問一] 「換言説明記述」(字数指定なし。解答欄1行半。1行=30字程度。以下同じ)。 傍線部(1)「缶蹴りに加わるのに金が要る」について、「どういうことか」を説明する。
なかなかの難問だ。「換言説明記述」なので、当然、「換言」すべき「何か」があるはずだ。「慣用句」とか「比喩」とか……、だが、「缶蹴りに加わる」や「金が要る」という「慣用句」などあり得ない。では、「比喩」か?
「傍線部一文一部の原則」(=「傍線部」が「一文の一部」の場合、「傍線部以外」が重要な「手がかり」「ヒント」)で確認する。
直後に「~時代になったのだ」とある。どういう「時代」なのか?
直前直後を確認する(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説」の「解法」の大原則だ)。
直前に、語り手である「父」の思いとして「子供達をスイミングスクールに通わせたり、少年サッカーチームに入れたりする支出は削りたくない」とある。
ということは、「父」の「時代」の「缶蹴り」は今の「子供達」にとっての「スイミングスクール」や「少年サッカーチーム」の「比喩」であって、それに「金が要る」ということだと考えられるはずだ。
「父」にとっての「缶蹴り」は単なる子どもの遊びであったのに、現在では「金が要る」習い事になっているということだ。
こうしたことを「過不足なく」まとめていけばいい。
たとえば、「単なる子供達の遊びに参加するにも、今は昔と違って、習い事として金が必要になるということ。」といった「答え」になる。
「換言説明」とは何かということをしっかりと習得しておくこと。
<時間配分目安:5分>
[問二] 「心情説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。 傍線部(2)「それでいながら、翌朝からも榧(かや)の木の味噌漉(こ)しを使うのはやめなかった」とは、「澄子」の「どのような思いを表しているか」を説明する。
「それ」という「指示語」があるので、先ずは開く(「指示語」が出たらすぐに開くこと)。
「澄子」が「お墓を移すのを手伝いましょう」と「幾度も繰り返した」ことだと分かる。
「お墓」と「榧の木の味噌漉し」はどうつながるのか? そして、「澄子」にとってそれはどのような存在なのか? そうしたことを「同一場面」から捉えていきたい。
「味噌漉し」は「澄子」の「手製」で、「お墓」の前に生えていた「榧の木」の枝を「荒っぽく」折って持ち帰り作ったものだと分かる。そして、それは「澄子」が「三人目の子」を「流産」した直後のことで、「何だかたまらなく手作りの物を台所に置きたくなったの」と言っていたことも説明されている。こうしたことから「澄子」の「思い」を読み解いていく。
「お墓を移すのを手伝いましょう」⇒「お墓の前の榧の枝を荒っぽく折った」ことに「後ろめたさ」があるということだ。
一方で、「それでいながら、榧の木の味噌漉しを使うのはやめなかった」⇒「三人目の子を流産した直後に、たまらなく台所に置きたくなった手作りの物」であるので、「愛着があり、どうしても使い続けたいという強い思い」があると分かるはずだ。
以上のようなことを「過不足なく」まとめていく。
たとえば、「墓前の榧の枝を荒っぽく折ったことは後ろめたいが、流産直後の辛さの中で手作りした物で愛着があり使い続けたいという強い思い。」といった「答え」だ。
「傍線部」は「逆接関係」だということを的確に押さえてまとめることが肝要だ。
<時間配分目安:6分>
[問四] 「心情説明記述」(字数指定なし。解答欄2行)。 傍線部(4)「いとおしむように切った」ときの「健二」の「心情」を説明する。
「いとおしむ」の「原意」(もともとの意味)は知っているはずだ。「かわいそうに思う」ということで、これ自体が「心情語」だ。したがって、一言で言えば「かわいそうに思う心情」になる。
あとは、何が? どうして? どのように? といった「要素」を説明していくことになる。
「傍線部一文一部の原則」で確認すると、「健二」は「木を立てたまま両膝で抱え込み」「いとおしむように切った」ことが分かる。さらに、直後には「稀に見る真剣な目をしていた」とある。
では、どのような「木」なのか? 何のために「切った」のか?
そうしたことを「同一場面」から読み解いていく。
この「木」が「七歳で死んだ」ことを知った「健二」は、「泣き出しそうな声」で「ほんとうに七歳で死んだのかあ」「おれとおなじ年で死んだのかよお、こいつ」とつぶやいている。
その後、兄から「木のお墓を作ってやれば」と言われ、「自分の身長と同じ高さにノコギリで印をつけてから切った」のだ。
つまり、「自分と同じ七歳で死んだ木」に「自分の代わりとなるお墓」を「作ってあげよう」と「真剣」になっていたわけだ。
こうした「要素」を「過不足なく」まとめればいい。
たとえば、「自分と同じ七歳で死んだ木に同情し、自分の代わりとなり寄り添う墓を作ってあげようと真剣になるほど、かわいそうに思う心情。」といった「答え」になる。
前後の「文脈」を丁寧に読み取り、「動作」と「心情」のつながりを捉えていくこと。
<時間配分目安:6分>
[問六] 「漢字の書きとり」(全5問)。
例年と比べるとやや難しくなっている。
(A)「緊張カタの体質」(=「過多」)、
(B)「セイセキの悪い子」(=「成績」)、
(C)「ザッカ屋」(=「雑貨」)、
(D)「イトナむ」(=「営(む)」)、
(E)「キョクチ的な豪雨」(=「局地」)。
「文脈」を的確に捉え、「同音異義語」などには十分に注意すること。
<時間配分目安:2分>
【大問2】詩
- 難度:やや難
- 時間配分:12分
童謡「いぬのおまわりさん」で知られる作詞家による童謡(作曲は服部公一)の歌詞。1960年の作品で、NHKの「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」などで放送され人気を博した。
「敬語」を切り口として「韻文(詩)」の「主題」を問うというユニークな出題だ。「私学の雄」として実に巧みな新機軸を打ち出した感がある。本校を志望する以上、こうした新出の「設問」に果敢にチャレンジしていく気概が欲しい。
以下、確認したい。
[問一] 「敬語の内容説明記述」(字数指定なし。解答欄1行弱)。 傍線部「めしあがる」は、ここでは一般的な使い方ではないが、「めしあがる」という言い方の「一般的に見ておかしな点」を説明する。
そもそも「設問」以前に、この「詩」を読んで「めしあがる」という表現に「あれっ?」と違和感があったはずだ(感じなければヤバイ)。
「めしあがる」=「食べる」の「尊敬語」だということは誰もが知っていなければいけない。にもかかわらず「主語」は「ぼく」、「自分の動作」は「謙譲語」(ここでは「いただく」)でなければいけないのに「尊敬語」を使っている。「おかしい」に決まっている。
そのことを説明すればいい。
たとえば、「自分の動作に謙譲語ではなく尊敬語を使用している点。」といった「答え」だ。
ちなみに、「敬語の用法」は昨今、上位校を中心に数多く出題されている。
「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の使い分けと、「敬語動詞」についてはしっかりと習得しておく必要がある。
<時間配分目安:3分>
[問二] 「理由説明記述」(字数指定なし。解答欄3行)。 「あえて『めしあがる』という言い方をしているのはなぜか」を説明する。
問題文に「あえて」とあることに着目したい。
[問一]で確認したように、「めしあがる」は「一般的にはおかしな言い方」だが、わざわざ用いているわけだ。なぜなのか?
「詩」では「ぼくは おうじではないけれど/アイスクリームを めしあがる」となっている。「おうじ」であれば「めしあがる」はおかしくない。さらに、冒頭に「おとぎばなしの おうじでも/むかしは とても たべられない/アイスクリーム」とある。
「むかし」であれば身分の高い「おうじ」でも食べられなかった「アイスクリーム」をごく普通の「ぼく」が食べられる。
そこで、あえて「尊敬語」である「めしあがる」を使うことで、「ぼく」はすごいんだぞという「自慢する気持ち」や「誇らしい気持ち」、そして、それほどのうれしさをほほえましくユーモラスに表現しようとしているということが読み取れるはずだ。
こうした内容を「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「むかしであれば身分の高いおうじでも食べられなかったアイスクリームを『ぼく』は食べられるんだと自慢し、誇らしい気持ちやうれしさをほほえましくユーモラスに表現しようとしているから。」といった「答え」になる。
「問題文」を「手がかり」として考えを進めていくことが重要だ。
<時間配分目安:7分>
攻略のポイント
●出題傾向や難易度は一貫していない。流石(さすが)、「関東の雄」だけあって「いかなる状況にも対応せよ」ということだろう。相応の準備が不可欠だ。合格ラインはほぼ60%(85点満点/過去10年間の合格者平均得点率は58.4%、本年度は56.7%)。
●配点は「知識問題」が各2~3点、「説明記述問題」は各10~13点程度と推測される。「知識」では全問正解が基本。
「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、「捨て問」を決める。どうにもならない設問に時間を取られるよりは、勇気を持って無視する方が結果としては得策。そして、答えた設問でいかに減点をなくすかが課題。
本校の場合、特に「設問条件」に留意すること。設問に的確に応じていくことを常に意識していたい。
●時間配分には細心の注意が必要。問題文のボリュームは短くても5000字ほど。いかに速く正しく読み取るかが勝負。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
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