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開成中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2023年度「開成中学校の国語」
攻略のための学習方法

知識

相当ハイレベルな「知識」が要求される。一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。開成を志した時点から、しっかりと取り組むこと。
先ず「語彙力」。日々の積み重ねあるのみ。塾での「小テスト」等を確実にこなし、もし間違ったものがあれば、必ず書き出して覚えるようにする。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。

また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。

これらの「語彙」は単に直接出題されるというだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。「自分の言葉で」という設問条件もあり、いかに適切な「言葉」を用いるかが勝負となる。

そして、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることもあるし(直近では2010年度に「形容詞の音便」が問われた)、何しろ「記述」には不可欠だ。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。

尚、開成志望者は「基礎の基礎」もなおざりにしないこと。かつては「かなづかい」、2014年度には「ひらがなの筆順」が出題されたこともある。要注意。

速読

大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには7000字以上。しかも、解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。やはり文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は論旨が述べられているのでしっかりと読み、「本論」は「段落相互関係」に注目しながら各形式段落の最初と最後を読み進める。

「小説」「随筆」は「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつはしょって読んでいく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自ら聞いてみてもいい。

その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。開成だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、「女子御三家」は開成の問題文にも通じる内容のものも多いのでオススメだ。練習あるのみ。そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。

解法

「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた特有の「解法」。そして、共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。

特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。

そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

記述

先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。「記述」を避けて開成合格はあり得ない。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わるかどうか、確認しなくてはいけない。

何を「書く」か。読解の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その問題文の「要約」をするのがとてもいい方法だ。50~100字程度で書いてみる。無論、内容は先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。

次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけることだ。書こうとしている内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要なのだ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、ひとつ当たりその程度が目安だ。
マス目のある原稿用紙を使って、自分が書こうとしているポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。

ある程度「感覚」がつかめたら、開成定番の「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていくと良い。

意識

最後に、常に何かを「意識」しながら学習することが大切だ。何となく机に向っていてもムダだ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが重要。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。

開成の問題では特に「設問条件」が重視される。「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことを、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。

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2023年度「開成中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問一は「論説文」、出典は隈研吾「ひとの住処 1964-2020」(文字数約4500字)。小問は全3問(解答数7)。「説明記述」(3問。全て「字数指定」なし)。「漢字の書き取り」4問。問題文は6分ほどで読み切り、設問を16分強で解きたい。大問二は「小説」、出典は柚木麻子「終点のあの子」(文字数約5100字)。小問は全4問(解答数も4)。「説明記述」のみ(4問。全て「字数指定」なし)。問題文は6分半程度で読み切り、設問を20分強で解きたい。

【大問一】「論説文の読解」(「説明記述」3問。「漢字の書きとり」全4問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:22分
  • ★必答問題

人間にとって建築とは何か? 日本を代表する建築家である筆者による、ふたつのオリンピックをつなぐ半自伝的文明論。本文では、バブル期の東京での仕事に何が欠けていたのかを問い直し、高知県檮原町(ゆすはら町)で仕事をしながら何を取り戻すことができたかについて論じている。平易な文章なので内容はすぐに理解できるはずだ。「内容説明記述」3問と「漢字の書きとり」4問という設問構成。以下、いくつかを検証する。

[問一] 「漢字の書きとり」(全4問)。本校の「漢字問題」は2005年以降4~5問(但し、3年前は「7問」で一昨年度は「3問」だった。近年は難易度も含めて揺れ動いているので注意すること)。また、3年前までは問題文に「ハネ・トメなど丁寧でない場合は減点されることもあります」と「注意」が添えられていた。以降その注意書きはないが、配慮することは当然だ。「答え」を確認していく。「モクヒョウを達して」=「目標」⇒何ら問題ない、正解できて当然。「閉じられたイキグルしい世界」=「息苦(しい)」⇒「圧迫された不自由な状態」という意味も含めて知らなくてはいけない。「ギャクに」=「逆」⇒これは平易だ。「大地をタガヤし」=「耕(し)」⇒知っているに決まっているが、丁寧に記したい。

<時間配分目安:全問で2分弱>

[問二] 「内容説明記述」(「字数指定」なし。「60~70字」程度の解答欄)。傍線部(1)「80年代の建築の世界も、戦場を失った武士によく似ていた」について、「『戦場を失った武士』のどのような点に『よく似ていた』のか」を説明する。先ず注意すべきは傍線部そのものが問われているのではないということだ。その点をふまえて、「戦場を失った武士」とはどのような存在なのかを読み解いていく。それについては傍線部の前、《中略》をはさんで3つの段落で述べられているとすぐに分かる。確認する。最初に、「(80年代の)建設業界は江戸時代の武家社会のようだ」と指摘している。その上で、「戦国時代は実際に武士を必要としていた」が、「平和な江戸時代」(=「戦場を失った」)には「社会はもはや武士を必要としなくなった」と述べている。しかし、「武士の特権は温存」され、「武士」たちは「自身の存在意義をアピール」して「延命を図って」「自分たちの存在を正当化しようとした」と続けている。こうした内容が「戦場を失った武士」の特徴なので、整理してまとめていけばいい。たとえば、「日本の社会で必要でなくなっても、温存された特権をいかし自身の存在意義をアピールして延命を図り、自分たちの存在を正当化しようとした点。」(66字)といった「答え」になる。設問を正確に理解することが肝要だと心得よ。

<時間配分目安:4分>

[問三(2)] 「内容説明記述」(「字数指定」なし。「50~60字」程度の解答欄)。傍線部(2)「東京の現場」について、「建築家の筆者にとってどのような所だったか」を説明する。「東京の現場」については直前の段落で説明されていると即判明する。ただ、具体論ばかりで「建築家の筆者にとってどのような所だったか」という説明としてはまとめづらい。そこで、段落冒頭に「86年にニューヨークからバブル真っ盛りの日本に帰ってきた時の僕もそんな感じで、忙しかった」とあるので、「そんな感じ」が指し示しているさらに前の段落をチェックする。そこでは、「建築家の筆者」にとっての思いが述べられていると分かる。確認する。「日々の仕事に追われ」「自分の作っている建築にどんな意味があるか。社会が今どんな建築や都市を必要としているか。未来の人間がどんな建築、都市を必要としているかを考える時間がなくなってしまう」「職人とじっくり話すという時間もなくなってしまう」といった内容だ。あとは過不足なくまとめていきたい。たとえば、「日々の仕事に追われ、自分の建築の意味や社会がどんな建築を必要としているかを考えたり、職人と話したりする時間もない所。」(58字)といった「答え」だ。まとめる内容が多い場合、設問に応じて的確に必要な要素に絞り込むこと。

<時間配分目安:5分>

【大問二】「小説の読解」(「説明記述」4問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:28分

ゆらぎやすい女子高生の友情を描く短篇集の1篇。はなやかに見える少女たちの日常に潜む、複雑な心情と、絡み合う人間関係――プロテスタント系女子高の入学式の日。中学からの内部進学者の希代子(きよこ)は、高校から入学した有名なカメラマンを父に持つ朱里(あかり)に声をかけられた……。本文では、学校をよくさぼり遅刻もし放題だが、魅力的な朱里に振り回される希代子の様子が描かれている。文章は平易で内容は難なく理解できるはずだ。「心情説明記述」・「理由説明記述」・「内容説明記述」各1問という設問構成だが、「条件」が課されているものがあるので注意したい。以下、2問を確認したい。

[問一] 「条件付き内容説明記述」(「字数指定」なし。「60~70字」程度の解答欄)。傍線部(1)「希代子は完全に朱里に魅せられた」について、「希代子は朱里のどのようなところに魅力を感じているのか」を説明する。「条件」は「これまでのこともあわせて説明する」こと。先ずは「同一場面」に「手がかり」を求めたい(「同一場面の直前直後に根拠あり」が「小説」の「解法」の大原則だ)。直後に「学校をさぼって海に行く――。その言葉は美しい音楽とか、宝石の名前のように思われた」とある。ここから、「学校をさぼって海に行く」ような「きらめく自由さ」に「魅力を感じている」ことは分かるが、それ以上は直前直後からはつかめない。「条件」に「これまでのこともあわせて」とあるので、本文冒頭から傍線部まで、さらに「魅力」を読み解いていく。「朱里」は、「いろんなグループ」になじんでおり、「平気で学校をさぼり遅刻もする」のに「国語と美術の成績が抜群に」よく、教師に「一目置かれている」ことで「皆の注目」を集め、著名なカメラマンが父親の家庭は「小説のよう」などとその「魅力」が描かれていることが分かるはずだ。こうした「ところ」を整理してまとめていけばいい。たとえば、「はなやかな家庭があり、学校の規則を無視しても成績は教師に一目置かれるほど優秀で、皆の注目を集め、うらやむほどのきらめく自由さもあるところ。」(69字)といった「答え」になる。「条件」は「手がかり・ヒント」でもあるのだ。

<時間配分目安:5分>

[問四] 「心情説明記述」(「字数指定」なし。「60~70字」程度の解答欄)。傍線部(4)「その夜、希代子はベッドの中で、その青い絵の具をなんども握り、凹(へこ)ませた」について、「このときの希代子の気持ち」を説明する。先ずは「その青い絵の具」と「指示語」があるので開く(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から「その青い絵の具」=「フォーゲットミーノットブルーという絵の具」だと分かる。また、「同一場面」から「状況」を読み取ると、「フォーゲットミーノットブルー」=「勿忘草(わすれなぐさ)の青」だとも分かる。さらに、「心情」の「手がかり」を探していく。直後に「その日は、間違いなく大好きな二人と素敵な放課後を過ごしたはずなのに、なぜか心がざわついていた」とある。「二人」とは、「朱里」と彼女があこがれている「瑠璃子さん」だと「同一場面」から判断できる。そして、「二人があまりに親しげだったので、少しやきもちを焼いているのかもしれない、と自己分析し、納得しようとする」と続き、「勿忘草というのは随分寂(さび)しい色をしているのだなと思った」と結ばれている。これらの部分から、「(私のことを)忘れないでほしい」「やきもち」「納得しよう」「寂しい」といった「心情」が読み取れる。「青い絵の具を凹ませた」が傍線部の示す直接的な「心情」なので「文末」として、過不足なくまとめたい。たとえば、「大好きな朱里が瑠璃子さんとあまりに親しげで自分が忘れられたのかと寂しかったが、少しやきもちを焼いているだけだと納得しようとする気持ち。」(67字)といった「答え」だ。尚、「小説」では必ず「心情」が問われる。その際、「セリフ」⇔「ト書き」⇔「動作」⇔「情景」といった具合に多角的に読み取ることが肝要だと心得よ。 ちなみに、「勿忘草」の花言葉は「私を忘れないで」「真実の友情」だ。

<時間配分目安:4分>

攻略のポイント

●近年、出題傾向や難易度が一貫していない。本年度は昨年度の「小説」のみから一転してオーソドックスな「論説文」と「小説」。無論、油断はできない。まあ、流石(さすが)に「関東の雄」だけあって、「いかなる問題にも対処せよ」ということだ。したがって、相応の準備が不可欠。合格ラインは60%強(85点満点。過去15年間の合格者平均得点率は62.2%、本年度は上がって65.4%)。

●配点は、「漢字(知識)問題」が各2~3点(本年度は昨年度同様に3点)、「説明記述問題」は各5~15点程度(本年度は8~15点)。「知識」は無論、全問正解が基本「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、「解答順」を決める。どうにもなりそうにない設問で時間を取られるよりは、勇気を持って「後回し」にする方が結果としては得策。そして、各設問でいかに減点をなくすかも課題だ。本校の場合、特に「設問条件」に留意すること。設問に的確に応じていくことを常に意識したい。

時間配分には細心の注意が必要。近年は問題文のボリュームが増えているのでなおさらだ(本年度は約9600字)。他の上位校と比べても長文だ。したがって、いかに速く正しく読み取るかが勝負となる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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