｢価値観の多様化｣が進み、｢明確な評価の物差し｣が社会に存在しなくなったことにより、今日の子どもたちは｢自らの方向性の評価｣を｢周囲の他者｣に求めるほかなくなってきていると論じている。
難解な語句が多く、内容も理解しづらいかも知れない。｢*注｣をしっかりと活用すること。
市川らしい｢選択肢設問｣などが並ぶ。
以下、いくつかの｢設問｣を確認してみたい。

[問１]　｢内容説明選択肢｣(５択)。
傍線部①の｢興味深い実験｣から、｢どのようなことが分かる｣と｢筆者は考えているのか｣を答える。
｢選択肢設問｣は｢消去法｣が原則だが、ここは｢換言｣ではないので｢原意消去｣(｢原意絶対優位の原則｣＝｢設問｣｢傍線部｣等の｢原意｣、要は｢本来の意味｣を最優先に考えること)はできない｡
また、｢問題提起｣に対する｢答え｣を問われているので、｢傍線部一文一部の法則｣(＝｢傍線部が一文の一部分だった場合､傍線部以外が重要｣という重要な｢解法｣)も使えない。
では、どうする？ 本文は｢論説文｣、その｢重要解法｣のひとつである｢段落相互関係｣(＝｢同一意味段落｣での段落どうしの関係から読み解くという｢解法｣)から考える。
ここでは、傍線部の次段落が｢まとめの段落｣だと分かるはず(冒頭に｢ここには｣とある)｡
｢筆者の考え｣として、｢選択肢が多いほど、決定を下すことが難しくなる｣と述べられている。
そこで、各選択肢の｢文末｣で｢消去｣する(｢選択肢｣の説明で最も重要な要素は｢文末｣に記されている)｡｢決定を下すことが難しくなる｣のだから、選択肢(ウ)｢楽しさが感じられなくなる｣、(エ)｢見比べていくことができなくなる｣、(オ)｢ネット検索をすぐにかける｣は不適切で｢消去｣。
さらに、｢筆者の考え｣として｢選択肢に順位がないと、どれを選んだらよいか、さっぱり見当がつかなくなる｣という内容が続くので、｢何を買うのか前もって決めていない時｣との｢前提｣がある(イ)も、やはり｢消去｣する。
結果、(ア)の｢選択肢の評価に差がない時は、どれを選んで良いのか分からなくなる｣が｢答え｣になる。
市川の紛らわしい｢選択肢設問｣では、｢ブロック分け｣での｢段階的消去｣を心がけよ。

＜時間配分目安：２分＞

[問２]　｢語句の空所補充選択肢｣(５択)｡
｢問１｣で確認した段落の冒頭、｢ここには、いわば『多様化の　 ②　 』を見てとることができます｣の、｢　 ② 　｣に当てはまる言葉を答える。
｢熟語の意味｣が問われる｢総合的知識問題｣だ。
｢多様で豊かな世界を目指した結果、どうすべきか分からなくなる｣といった｢内容｣だということはすぐに分かる。選択肢(ウ)の｢皮肉｣には、｢鋭い非難｣や｢あてこすり｣とは別に｢予想や期待に相違した結果になること｣という意味がある｡よって、｢答え｣になる。
ひとつの｢語句｣には様々な意味があるので、正確に定着させておくことが欠かせない。

＜時間配分目安：１分以内＞

[問４]　｢内容説明記述｣(｢70字以内｣指定)。
傍線部④｢二重の意味で他者からの評価が気になる｣について、｢子どもたち｣が｢気にしているのはどのようなことか｣を説明する。
｢換言｣ではなく｢内容説明｣なので、先ずは｢傍線部一文一部の法則｣を使う。
傍線部直前に｢だから｣という｢接続詞｣がある(｢接続詞｣｢指示語｣には必ず着目すること)｡｢だから｣＝｢結果｣ということは、その前の部分が｢評価が気になる｣の｢理由｣であり｢内容｣ということだ。
確認する。｢他者に囲まれた価値ある人間として自分が見られているかどうか｣｢そもそも承認を与えてくれる他者がいるかどうか｣とある。まさに、これらが｢二重の意味で気にしていること｣だ。従って、字数に応じて｢過不足なく｣まとめればいい。｢解法｣を活用することが肝要。

＜時間配分目安：３分＞

[問５]　｢内容説明の抜き出し｣(７字指定)。
傍線部⑤｢安定した人生の羅針盤が見つかりにくくなった｣について、｢その原因となっているのはどのようなことか｣を抜き出す。
｢抜き出すべき内容｣は｢原因｣だ。｢傍線部一文一部の法則｣で｢手がかり｣を探す。
傍線部の一文の最初に｢しかし、それは同時に｣、最後には｢ことも意味している｣とある。最初が｢逆接｣の｢接続詞｣と｢指示語｣なので、前を確認する。｢人生の選択肢も広がってきた｣となっている。つまり、｢人生の選択肢が広がってきた｣ことは、｢同時に｣｢人生の羅針盤が見つかりにくくなった｣｢ことも意味している｣わけだ。要はこれが｢抜き出すべき内容｣だが、｢条件｣に合致しない。
そこで、さらに前を確認すると、｢価値観の多様化｣とある。｢条件｣｢内容｣を満たしているので、｢答え｣となる。
｢抜き出し｣では、｢内容｣を捉えた上で｢候補｣を絞り込むこと。

＜時間配分目安：２分＞

駅蕎麦屋を営む｢路男｣が、父親との関係がうまくいかずに家出をしてきた孫の｢弘晃｣の心をほぐしていくという物語。｢ムシヤシナイ｣(＝｢虫養い｣)という言葉がひとつの鍵になっている。
本文には難解な表現が多く、小問でも｢語彙力｣を問われている。
｢知識｣を重視する市川らしい大問だ。
以下、いくつかの｢設問｣を検証してみる。

[問２]　｢単語の意味･用法の選択肢｣(２問･各４択)｡
二重線部(ａ)｢の｣、(ｂ)｢られる｣と｢同じ意味･働きのもの｣を答える。
市川頻出の典型的な｢文法問題｣だ。準備さえしていれば何ら問題はないはず。
(ａ)の｢中身の残っていた｣は｢主格｣の｢助詞｣なので選択肢(ウ)｢桜の咲くころ｣、(ｂ)の｢余裕｣があれば｢御馳走も食べられる｣は｢可能｣の｢助動詞｣で選択肢(ア)｢小学生にでも答えられる｣、それぞれが｢答え｣だ。
市川志望者は完璧な｢文法定着｣が必須。

＜時間配分目安：１分＞

[問４]　｢語句の空所補充選択肢｣(５択)｡
｢路男は　 ｃ 　表情のまま答える｣の、｢　 ｃ 　｣に当てはまる言葉を答える。
またしても｢語彙力｣が問われている。
｢ト書き｣部分なので次の｢セリフ｣を｢根拠｣にするのが定石だが、ここでは｢表情のまま｣とある。つまり、前の部分が｢きっかけ｣となった｢表情｣が続いているということになるので要注意。
｢無沙汰を詫びるでもなく、老父の暮らしぶりを尋ねるでもなく、単刀直入に問う正雄｣に対する｢表情｣だ。
各選択肢は、(ア)｢熱い｣、(イ)｢涼しい｣、(ウ)｢苦い｣、(エ)｢深い｣、(オ)｢悲しい｣｡であれば、｢答え｣は｢(ウ)｣になる。
｢本文中での意味｣をしっかりと確認すること。

＜時間配分目安：１分＞

[問５]　｢理由説明選択肢｣(５択)。
傍線部①｢路男は大らかに応え、立ち止まった弘晃に構わず、先に歩を進める｣について、｢路男｣が｢なぜこのような態度をとったのか｣を答える。
長い｢選択肢説明｣、｢ブロック分け｣をして単純に｢消去｣したい。
｢構わず先に歩を進める｣ことの｢直接的理由｣につながらないものだ。
各選択肢の｢文末｣を確認する。
(ア)｢気にかけていないから｣、
(イ)｢傷ついてしまったから｣、
(ウ)｢腹を立てているから｣、
(エ)｢諦めているから｣、
(オ)｢気にならなかったから｣、
｢構わず｣なので(イ)(ウ)(エ)は即｢消去｣できるはず。残りは２択。
次は｢本文｣を根拠にして絞り込む。｢路男｣は、｢弘晃｣の｢ジィちゃんさぁ、虚しくなんない？｣という｢問い｣に対して、｢大らかに応え｣ている。であれば、単に｢孫の言葉を｣となっている(ア)ではなく、｢否定的な孫の言葉が｣としている(オ)が｢答え｣だと分かる。
先ずは、｢傍線部｣だけで｢消去｣できるものを判別すること。

＜時間配分目安：２分半＞

[問７]　｢内容説明選択肢｣(５択)。
傍線部③の｢怯えの根源｣とは｢弘晃｣にとって｢どのようなことか｣を答える。
｢換言｣ではあるが、｢内容｣が問われているので｢傍線部の原意｣では｢消去｣不可能。
直後に｢を口にした｣とある。つまり、｢怯えの根源｣＝｢口にした｣こと。直前には｢ジィちゃん、オレ……自分が恐い｣という｢弘晃｣の｢言葉｣がある。要は｢弘晃自身に対してのこと｣なので、選択肢(ア)｢父親に殴られてしまう｣、(イ)｢父親に理解してもらえない｣、(ウ)｢父親に叱られてしまう｣は｢消去｣する。
そして、｢自分｣の何が｢恐い｣のかを確認すると、さらに前の部分に｢オレ、親父を殺すかも知れない｣とある。従って、(オ)の｢父親の期待に応えられない｣ではなくて、(エ)の｢父親をいつか殺してしまうのではないか｣が｢答え｣だと分かるはずだ。
｢対象｣(｢何を｣｢何が｣など)も重要な｢消去｣の｢根拠｣だ。

＜時間配分目安：２分＞

｢漢字の読み書き｣(８問)。
基礎的なものが多いので、市川志望者であれば全問正解をしたい。
ただ、やや注意したいものとしては、
　　②｢辞書をザユウに置く｣(＝｢座右｣)、
　　④｢ハチクの勢い｣(＝｢破竹｣)、
　　⑧｢上背がある｣(＝｢うわぜい｣)｡

＜時間配分目安：１分半＞