2011年度の中学入試はここが変わる! 第3弾 (2010.9)
これまでも2回にわたって2011年度入試に向けての変更点をお知らせしてきたが、今回は2011年度入試のトレンドと思われる4つにスポットを当ててみよう。そのため一部既にお知らせしてあることと重複する部分もあることをお断りしておく。
本校以外に入試会場を設ける
これまでも、学校が交通不便な場所にある場合は本校以外に入試会場を設けるケースはあったが、来年は特に不便でない学校でも別会場を設けるケースが目立 つ。午後入試を受験する受験生がこのところ一段と増えていることで、他校の午前入試を受験予定の受験生に選択してもらいやすいようにという配慮であろう。
・桜美林 これまでも2月1日午後入試は本校と淵野辺駅前キャンパスで行っていたが、新たに2月2日にも午後入試を設け、本校と淵野辺駅前キャンパスに加え、多摩センター(多摩アカデミーヒルズ)でも実施。
・東京都市大学付属 第1回(2月1日午後)のみ、新たに池袋(河合塾池袋校)、立川(河合塾立川校)でも実施。
・関東学院 A(2月1日午後)のみ、関内会場を新設(KGU関内メディアセンター)。
・北鎌倉女子学園 2月1日午後入試のみ、横浜会場を新設(横浜ベイシェラトンホテル)。
・大妻嵐山 これまでも理数アドバンスと一般第1回は本校と大宮(ソニックシティ)で行っていたが、これらは従来どおりで、一般第2回(1月14日午後)は大宮(ソニックシティ)だけで実施。
面接の取りやめ
2010年度入試でも跡見学園、文化女子大附属杉並、文京学院大女子、山脇学園などが面接を取りやめたが、2011年度は東京女学館、藤村女子、武蔵野女 子学院が面接をやめることを発表している。2009年度入試までは、女子校では面接を行う学校のほうが多かったが、これでついに面接なしの学校のほうが多 くなる。
国語・算数重視へ
中学入試では、国語・算数・理科・社会を均等配点(各科100点満点など)する学校がけっこうあったが、2011年度入試に向けては国語・算数の比重を高める学校が目に付く。
・世田谷学園 国語50分100点・算数60分100点・社会30分50点・理科30分50点(2010年は国語50分100点・算数60分120点・社会30分65点・理科30分65点)
・東京都市大付属 国語50分100点・算数50分100点・社会40分75点・理科40分75点(2010年は国語50分100点・算数50分100点・社会45分100点・理科45分100点)
・フェリス女学院 国語・算数各50分各100点(2010年は各45分各100点)各100点、理科・社会各30分各60点(2010年は各40分各100点)
学校側としては、入学後の生徒の伸びを調べると、やはり入試において国語・算数で得点できていた子のほうが伸びがいいという判断だろう。来年以降もますますこの傾向は強まると思われる。
このほかにも、「午後入試」「特待入試」などが一段と広がる方向にある。
「女子部」の募集停止
トレンドに含めるにはいささか抵抗があるが、これも例年にはない動向であるので取り上げよう。
先にお知らせした宝仙学園の女子部に続いて、東京都市大学等々力の女子部も2011年度から募集を停止することになった。女子校が共学化する場合、ほとんどは学校そのものを共学校に変える学校が多いが、そうしたなかで、この2校は女子部を残しながら共学部を設置というスタイルを採った例外的なケースだった。が、同じ学校の中に共学部を持ちながら女子部を持つということは、学校運営的にも、生徒募集の面からも難しいということであろう。
中学入試の保護者向けに書いたこと
情報的には「端境期」なので、今回は中学受験の保護者向けに「学校選び」について最近書いたものをここでも紹介させていただきたい。最近の保護者の学校選びに、危惧する点があったので、敢えてこのようなことを記した次第である。
≪学校には「費用対効果」で計れない部分がある≫
●子どもの受験は自分たちの生きる姿勢を見つめなおすいい機会
ずいぶん前ですが、私も二人の子を中学受験させました。その当時には気がつかなかったことで、いまこうした仕事をしていて真に思っていることは、「学校選びとはどういう人生をよしとするのかを考えること」だということです。私が保護者のみなさんに願っていることは、お子さんの受験を機会に、普段の生活の中ではあまり考えない、「自分が生きているなかで、何が自分を支えてくれているのか」「自分は何を大切と考えるのか」を、ご両親で話し合ってほしいということです。
お子さんの受験は、自分たちの生きる姿勢を見つめなおすいい機会だと思います。そこでは別々に育ってきたお互いの価値観がぶつかり、お互いが自分をさらけ出すことにもなります。中学受験が、多くのご家庭にとってはじめての「一大イベント」という意味は、何も多額の出費を要する買い物、大変な労力・時間を費やす一家の総力戦ということにとどまらない要素があるからです。
話し合いの過程では、きっと世間体やら打算やら人間関係やら・・・・・・実にいろいろなことが交差することと思います。ですが、そうした機会を持つことになるからこそ、受験する意味があるともいえます。
●どこで学ぶかはとても重要
自分が教育関連の仕事をしているせいで特に感じるのかもしれませんが、いまの自分のメンタリティーのかなりの部分が中高時代に築かれています。友だちを見ていても、やはり「思春期の文化をずっと持ち歩いている」ということをよく感じます。つまり、思春期をどのような文化環境で過ごすのか、それがその後の人生に大きく影響するのです。
先生や友だちから受ける影響・・・・・・純粋な思春期だけに、その時代に触れた人生観、世界観、価値観、読書体験、一緒に過ごした時間といったもの・・・・・・は決して小さくはありません。
乱暴な言い方をすれば、「勉強はどこでも出来る。が、良質な精神的な影響はどこでも受けられるわけではない」ということです。
いま「費用対効果の高い学校選び」ということが盛んです。効果とは、入口偏差値に対して出口偏差値が高い(大学合格実績がいい)、加えて授業料対比で授業時間数が多く、学校外での費用を抑制出来るという意味で語られています。
また、不況が長期化する中、またお子さんの将来が心配であるといういまのわが国の状況の下で、「正社員になるにはいい大学を出ないと、いい大学に入るにはいい中学に入らないと・・・」という「逆算方式」の学校選びになることはわからないでもありません。が、お子さんの長い人生を考えたとき、お子さんを支えてくれるものは費用対効果で計れない部分であることを知っていただきたいと思います。
受験を通して、受験の先まで考えることが、「いい受験」につながると考えています。
情報提供:安田教育研究所