スタート時

SAPIXに通う５年生のＹ君宅を初めて訪れたのは５月末でした。初回面談時のお父様の話では「前学年までは楽々とαクラスを維持してきたのに、５年進級時にまさかの陥落。本人の自主性に任せ３月組分け、５月マンスリーと２回テストの様子を見たが好転せず。解き直しをすればちゃんとできるのに、テストになるとダメで、親子共々フラストレーションが溜まる一方。そのようなわけで家庭教師を…。」とのことでした。授業はよく理解できていて、本人の学習意欲も高く、復習量も十分だというＹ君の算数・理科の得点力アップを目標に指導が始まりました。(３月組分け算数51.8、理科55.0、目標校麻布中)

指導内容

数回のレッスンを重ねるうちに、肝心のテストになると失点を重ねてしまう原因は、Ｙ君の解答に至るまでの手続きに問題があることが分かりました。４年生までは問題設定も比較的単純なので、何とか上手くいっていたにすぎなかったのです。頭の回転も速く、問題の先読みも可能なＹ君は、自身の頭の中だけで思考を巡らせていて、段階を踏んで考えを進めることをほとんどしていませんでした。そんな彼にプロ家庭教師の私が与えたアドバイスは、問題の「ビジュアル化」でした。珠算教室にも通い計算も得意な彼は、ほとんど頭の中だけで問題を処理していたので、ミスも発生し易くなっていました。そこを改め、問題を読み、頭の中でイメージ化し、実際に自分の手を動かすことによって問題を具体化・ビジュアル化しながら解くように指導しました。頭・手・目の連動から、次に進むべき方向を適切に選べるようになり、短期間でαクラスへ復活できました。(７月組分け算数59.4、理科59.8)

家庭学習の改善

習い事も多く、少ない持ち時間の中で、Y君の生真面目な性格とご両親のご協力もあり、５年生の後半あたりから勉強に弾みが出てきました。ビジュアル化を合言葉に、算数ではサポートやサピックス等の各教材の使用目的を明確化し、それに合わせて日々の学習スケジュール管理をご両親に徹底していただきました。理科のコアプラスも手を抜かずプラン通りに進められたことが、ベース部分を厚くしていったと確信しています。(10月マンスリー算数66.5、理科63.4)

学習姿勢の変化と成績の推移

問題のビジュアル化を取り入れ、徹底したスケジュール管理のもとで、Ｙ君の著しい成長に驚いたのはSSが始まるころでした。突破口の見当たらない難度の高い問題に対しても、問題を具体化しながら解き進むことができるようになっていました。麻布中のような高い思考力や記述力を要求される問題に対しても、確実に対応できるようになっていました。蛇足ながら５年生の夏以降、成績も向上・安定し、６年生の最後までαクラスを維持できたことは言うまでもないことです。細かな数字は若干の変動はありましたが、算数・理科ともに60前後の偏差値を取り続けることもできました。また、サピックスオープンでも、常に麻布中合格判定は80％を取り続け、受験本番に向けて本人にもご両親にも大きな自信材料となり、最終的には第一志望の麻布含む６校全勝という素晴らしい結果を勝ち取りました。

SAPIX生へのアドバイス

塾生のレベルや問題の質・量ともに、受験をリードするサピックスで勝利を勝ち取るために必要なことは、上手な時間管理のもとで強い意志を持ち、最後まで諦めず勉強することだと思います。受験本番までの長い道のりにはさまざまなことが起こりますが、その都度に戦闘力をアップさせ乗り切っていくしかありません。サピックスの教材の良いところは、冊子ではなくホチキス止めのため、常に受験最前線の問題に差し替えられることと、問題量が豊富なことです。その一方で、問題量が多すぎてご家庭では取捨選択が難しいことや、テキストの特性上、授業内での理解が不十分なまま先に進んでしまうと、生徒さん自身の力や保護者様のフォローだけでは、後から遅れを取り戻すことが困難となってしまうケースもあります。サピックス生の保護者様からはこの点に関してよくご相談を頂きます。上手に取捨選択し効率的な勉強をしたいが、上記の様な問題から上手く行かずフラストレーションが溜まるようなら、サピックスに精通したプロ家庭教師でフォローをするという選択もお勧めします。