東京農業大学第一高等学校 入試対策
2021年度「東京農業大学第一高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文の読解
例年、2題の論説文の長文読解が出題されている。文学的文章は出されていない。2021年度では計8900字、さらに古文の320字ほどがこれに加わる。読解のスピードをつける訓練が必須である。
形式は選択肢が多く、穴埋め・記述が数問ずつ含まれており、漢字や語句の意味などの言語事項も合わせて出題される。記述は25~100字程度の説明記述で、答えるのにある程度の時間を取られる。
説明的文章のみの出題なので、対策もそこに絞ったものとなろう。形式段落→意味段落への転換・意味段落の内容把握(短いタイトルを付けてしまうと良い)・段落のつながりや関係・段落の最初と最後に注目しながら要点と細部の区別・それらを整理して要旨・結論をまとめる……といった論説文読解のパターンに習熟する。
記述問題では特に、要点と要旨のまとめが重要である。求められる答えは、各段落の要点をいくつか組み合わせて作られる場合が多い。50字の記述であれば、書ける内容が2つ(2文)程度と見当をつけて、適切な箇所を使ってまとめるのである。
本文に印や傍線で重要点をマークしておき、関連する部分を結んでおけば、記述問題の答えをまとめる際に大幅な時間短縮が見込める。その際、誤字・脱字や文法の誤りなどにも注意して、不用意な減点を受けないように気をつける。
長い記述問題は時間が取られるので、他の軽い問題をまずは解き進め、最後まで一通り手を付けるのは当然である。
そして、試験対策に限らず、普段から読書を厭わずに自然・人文・社会科学などの分野の書物を多く読む習慣を持てば、すなわち国語力の養成になることも忘れないでいただきたい。
古文の読解
本校の古文の問題は手ごわい。言葉の知識や文法、はては文学史まで、高校の授業で習うことが当然のように訊かれる。中学生向けに現代語訳を付けるといった配慮もない。配点も2割ほどと大きいので、苦手だからと避けてしまうと不利である。
高校生向けの標準レベルの教材で必修単語200、係り受け・枕詞や敬語などの主な文法を覚え、古典の文章にできるだけ触れて、頭を慣らしておかなければならない。
暦の月名や、当時の風俗・暮らしぶりなども問題と関係してくる可能性があるので、そうした知識も一通りで良いので仕入れておきたい。
十分な得点には、相当にしっかりした対策が必要である。
漢字・言語事項
現代文の読解とともに出題されるが、さほどの難問は見られない。
語句の意味が多く出されているので、言語事項の問題集や読書を通じて、語彙を増やす努力をお願いしたい。
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2021年度「東京農業大学第一高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
論説文と論説的随筆文の読解2問がそれぞれ約6800字・2200字の計8900字ほど、さらに古文の320字ほどがある(2021年度)ので、スピードが必要である。総解答数は36問。
漢字や言語事項は10問ほどなので2~3分で済ませ、あとは読解問題に充てる。幸い、問題数は多くないので、読みに手間取らなければ考える時間はある。記述問題1問は70字あるので5~6分ほどは取られることも計算に入れておく。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:28分
自然と技術の関係についてアリストテレスとプラトンの考えを紹介し、現代のプラトン的なテクノロジー崇拝に異を唱え、最後に筆者の考えとしてハイデガーの論に賛意を示している。
問一 (a) 萌芽 (b) 蓄積 (c) 「けんお」 (d) 肥料 (e) 強固
問二 (X) 発露――隠していたことや心の内が外にあらわれること。
(Y) 軌を一にする――考え方ややり方が同じであること。
問三 Ⅰ. 「イデア」が「抽象的」であることが複数回述べられている。
Ⅱ. イデアという抽象的なイメージを木材という「具体的」な材料に働きかけて可視化する。
Ⅲ. 時代や場所で変化したり個体差が出たりしない→「普遍」的である。
Ⅳ. 「自然」と呼ばれる材料は「無機質の素材」であると書かれている。
Ⅴ. 近代技術は「自然を機械的なプロセス(仕立て)」へ組み込み、有用性や効率性へと送り出す。
問四 A. アリストテレス的思考をまず紹介し、それと異なる思考として「ところが」その前にプラトン的思考がある、とつなげている。
B. イデアは抽象的・普遍的で不滅の物事の本質である→「だから」どうしても神や理性に重なってくる。
C. 文末の「~といってもよい」から考えて、「言い換えれば」。
D. 仏師は〇〇である、「また」華道も〇〇である。
E. 「テクネー」は自然をねじふせ支配する手段ではなかった→「たとえば」農夫は……。
問五 2. 「本質は時代や場所によって変化していくもの」がプラトンの考えに合わない。
3. アリストテレス的思考には「イデア」といった理念的本質にあたる概念はない。
4. 「イデア」は「素材」ではない。
5. プラトン的思考では素材に人間が働きかけて変化させるので、×。
問六 1. 「おのずからなるもの」というかつての日本の自然観は、「自然は自ずと生成し変転してゆく運動」であるとするアリストテレス的思考に通じるものがあり、合っている。
問七 自然を「挑発」するという形で自然を機械的なプロセスへと組み立て、有用性や効率性へと送り出す、とある。人間にとっての有効性という狭い領域に押し込めてしまうわけで、あくまで人間主体の働きかけなのである。
問八 「自然に対峙し、それを支配し、それに挑戦する」という性格であるから、選択肢2と4が合う。
問九 直前の数段落で、自然を支配したつもりでも「技術に依存し、従属し、その意味で自然を支配などしていない」という事実が述べられており、そのことを「近代技術の本質」と言っている。
問十 2. 「以前のような姿に戻る」という予見はされていない。
3. 「管理が成功しているからといって主人ではない」とは述べられているが、「管理が成功しているから技術の奴隷ではない」という主張はされていない。
5. 「テクネー」へ戻すことはできない、とはっきり述べている。
【大問二】論説的随筆文の読解
- 時間配分:12分
「評価」というものは現在のある側面に対しての限定的なものであり、それを自己評価としてしまうとそれに縛られて未来の可能性を限定してしまう。自分を評価しようとしない〈未決定状態〉でいてほしいと筆者は学生に望んでいる。
問一 最初の数段落や最後の段落の内容が選択肢2と合っている。
問二 「評価そのものが自己目的化してしまう」とは、評価されることばかりを求めてしまい、自己を高めるという本来の「目的」を忘れてしまった状態であろう。本末転倒な状態であり、選択肢1・2・4・5はこれに当てはまる。
問三 1. 最後から四番目の段落に書かれている。
2. 文章前半の「評価」についての説明と合っている。
4. 第五段落に書かれていることと合う。
問四 「どのようなものと捉えているか」は文章前半に、「どのような心構えが必要か」は後半に書かれている。「評価」とは現在のある側面だけの限定的なものであるが、それを自己評価としてしまうと縛られてしまい、未来をも限定してしまう。そうならないためには、消極的な自己評価はせずあえて自分を〈未決定状態〉に置き続けることが必要だと、筆者は進言している。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
大した用事もなく人のところへ行くのは良くないことであるが、気持ちが通じる人とならその限りではない。しばらく会っていない人から便りが届くのもうれしいものだ。
問一 (Ⅰ) なかなか――かえって・むしろ。なまじっかだ・中途半端でよくない。
(Ⅱ) 物がたり――話をすること・談話。
問二 「むつかし」は、いやな感じだ・煩わしい・不快だなどの意。用が済んだならはやく帰るべきだと言っている。
問三 気持ちが合う人が、することもないのでもう少しいっしょに、今日は落ち着いて語り合いましょうなどというのは、悪くないことだ。
問四 しばらく会っていない人から手紙をもらうのは、うれしいものである。
問五 4. 用事があっても済んだらすぐ帰るのが良いが、気の合った人ならばそのまましばらく話したいと思うこともあるとは書かれているが、用事がないのに行くのもよいとは言っていない。
問六 『花月草子』は江戸時代、『枕草子』『竹取物語』『源氏物語』は平安時代の作品である。
攻略のポイント
論説文主体の長文読解だが、難しいテーマが扱われていたり、文章自体も難しかったりでなかなか手ごわい。記述問題も侮れない。スピードをつけ、最後まで目を通し、できる問題を確実に取ることで得点をあげたい。
古文も十分に学習しておかないとあらすじすら判然としない事態も予想できるので、文法・その他の知識も合わせて高校生レベルでの勉強をしておかれたい。
漢字・ことばの意味などの知識問題でも15点ほどの配点があるので、地道に語彙を増やす努力をしておくこと。