東京農業大学第一高等学校 入試対策
2022年度「東京農業大学第一高等学校の国語」
攻略のための学習方法
現代文の読解
例年、2題の論説文の長文読解が出題されている。文学的文章は出されていない。2022年度では計5700字、さらに古文の480字ほどがこれに加わる。読解のスピードをつける訓練が必須である。
形式は選択肢が多く、穴埋め・記述が数問ずつ含まれており、漢字や語句の意味などの言語事項も合わせて出題される。記述は25~100字程度の説明記述で、答えるのにある程度の時間を取られる。
説明的文章のみの出題なので、対策もそこに絞ったものとなろう。形式段落→意味段落への転換・意味段落の内容把握(短いタイトルを付けてしまうと良い)・段落のつながりや関係・段落の最初と最後に注目しながら要点と細部の区別・それらを整理して要旨・結論をまとめる……といった論説文読解のパターンに習熟する。
記述問題では特に、要点と要旨のまとめが重要である。求められる答えは、各段落の要点をいくつか組み合わせて作られる場合が多い。50字の記述であれば、書ける内容が2つ(2文)程度と見当をつけて、適切な箇所を使ってまとめるのである。
本文に印や傍線で重要点をマークしておき、関連する部分を結んでおけば、記述問題の答えをまとめる際に大幅な時間短縮が見込める。その際、誤字・脱字や文法の誤りなどにも注意して、不用意な減点を受けないように気をつける。
長い記述問題は時間が取られるので、他の軽い問題をまずは解き進め、最後まで一通り手を付けるのは当然である。
そして、試験対策に限らず、普段から読書を厭わずに自然・人文・社会科学などの分野の書物を多く読む習慣を持てば、すなわち国語力の養成になることも忘れないでいただきたい。
古文の読解
本校の古文の問題は手ごわい。言葉の知識や文法、はては文学史まで、高校の授業で習うことが当然のように訊かれる。中学生向けに現代語訳を付けるといった配慮もない。配点も2割ほどと大きいので、苦手だからと避けてしまうと不利である。
高校生向けの標準レベルの教材で必修単語200、係り受け・枕詞や敬語などの主な文法を覚え、古典の文章にできるだけ触れて、頭を慣らしておかなければならない。
暦の月名や、当時の風俗・暮らしぶりなども問題と関係してくる可能性があるので、そうした知識も一通りで良いので仕入れておきたい。
十分な得点には、相当にしっかりした対策が必要である。
漢字・言語事項
現代文の読解とともに出題されるが、さほどの難問は見られない。
語句の意味が多く出されているので、言語事項の問題集や読書を通じて、語彙を増やす努力をお願いしたい。
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2022年度「東京農業大学第一高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
論説文と論説的随筆文の読解2問がそれぞれ約4100字・1600字の計5700字ほど、さらに古文の480字ほどがある(2022年度)ので、総計は6000字超。総解答数は27問。
漢字や言語事項は10問ほどなので2~3分で済ませ、あとは読解問題に充てる。幸い、問題数は多くないので、読みに手間取らなければ考える時間はある。記述問題1問は80字あるので6~7分ほどは取られることも計算に入れておく。
【大問一】論説文の読解
- 時間配分:25分
新しい技術の進化にともない「人間とは何か」という問いに向き合わざるを得ないが、AIがどんどん人間らしさを獲得していくなかで「人間」の定義もどんどん変わっていき、人間は特別な存在であるというアイデンティティも失われてしまうかもしれないと、筆者は予想している。
問一 (a) えたい (b) 錯誤 (c) 知見 (d) 厳格 (e) 普遍
問二
(X) なまじ――無理にそうしない方がよいのに。いい加減で中途半端なさま。
(Z) 思いを馳せる――遠くの人や物事を思いやる。
問三
Ⅰ. さまざまな議論の中で、「最終的に」感情は人間にしか持てない、となる。
Ⅱ. 女性に参政権が認められた→「社会的に」承認された。
Ⅲ. いっそ「反逆的な」態度をとってくれれば違いがはっきりする。
Ⅳ. 人間とは何かという「哲学的な」問いは、人間とは人間を止めたがっている存在だという「哲学的な」答えにならざるを得ない。
問四
A. 「もしかしたら」~かもしれない。
B. AIの方が人間より人間らしくなるかもしれないという意味では、「むしろ」心ありきの価値観は警戒を要する。
C. 人間はロボットやAIに人間性を与えるべく研究している。「だが」人間らしさについて明確に答えられる人がどれだけいるだろうか。
D. 「人間とは何か」の定義は時代とともに変化してきた。「たとえば」古代や中世では~、二十世紀では~。
E. 境界線は曖昧になっていく。「つまり」区別がつけられなくなる。
問五 心があろうがなかろうが、人は成功率の高さや低コストを求めるので、なまじ「人間性」を持ち出すとかえって技術や機械の優位性が目立ってしまう。
問六 「移動」に関しては飛行機の方が「安く・速く・楽である」という実利があるから選ばれるのである。
問七 何にでも心を求めるのは「かえって混乱の元になりかねない」「技術を土台に据えた方が社会の仕組みはうまく機能するはずだ」と、次の段落で述べている。
問八 AIが人間以上に人間らしくなるかもしれない、「その意味で」ということであるから、AIが「気持ち」を理解した状況である選択肢2と4が選べる。
問九 「AIが作り出したAI」は人間が作ったものよりも優れていた。人間は自分が作ったものしか理解できないとすると、人間とは何かという問いに対して「AIが作り出したAI」が出した答えは人間の理解の範疇を超えているのである。
問十
2. 「AIは絶対に間違えない」とは思われていない。
5. 「特別な存在としての人間のアイデンティティは失われるかもしれない」という筆者の意見と合わない。
【大問二】論説的随筆文の読解
- 時間配分:15分
「近代」まで歴史とはヨーロッパを中心に語られるものであり、その理念や使命感に世界が動かされてきたが、「現代」では「世界」抜きでは歴史を考えられなくなっており、もはや自分の思い通りには歴史や社会は動かないとヨーロッパ人が実感したという点において、「近代」と「現代」が区別されるとさしあたり考えられるのである。
問一 「正確な区別はありません」「あえて区別するのは、大きな断絶があると解釈できるから」「正確にはある種の連続と断絶がある」などの説明から考えられる。
問二 二十世紀よりもっと前から植民地主義・帝国主義による世界進出や「世界システム」などがあったことを考えれば、バラクラフの主張は今さらという気がしないでもない→選択肢5が合う。
問三 「近代」はヨーロッパが生み出した希望の上に展開された。啓蒙主義や近代的な理想を掲げて歴史の進歩を意識した。しかし、「現代」ではヨーロッパの掲げてきた理念や使命感を思いのままに動かすことができなくなった。
問四 それまでヨーロッパを中心に世界を考えてきたが、二十世紀はもはやヨーロッパが世界を動かす時代ではなくなり、たくさんある国々の一部にすぎなくなってしまったのである。
【大問三】古文の鑑賞
- 時間配分:10分
蜂を自在に操る特殊な能力を持つ人物の説話。
問一
(A) にはかに――急に・突然に。
(B) やをら――ゆっくり・静かに・そっと。
問二 宮中へ出かけるときに牛車の物見窓のあたりに乱れ飛んでいたのを「とまれ」と言ったらとまった→そのまま牛車について来るのではなく、屋敷にとどまった。
問三 蜂が宗輔公の言うとおりに振る舞うようすが描かれており、その「蜂に言うことをきかせる」能力を不思議だと言っている。
問四 鳥羽殿でハチの巣が落ちて皆が逃げまどっていたところ、宗輔公が枇杷の皮をむいて高く差し出すと「蜂がみな取りついて、逃げなかった」。
問五 「かしこし(賢し)」は、利口である・すばらしいなどの意。宗輔公が蜂の騒動をおさめてくれたのでほめている。
問六 『十訓抄』は鎌倉中期の教訓説話集。『方丈記』・『枕草子』は随筆、『十六夜(いざよい)日記』は日記、『源氏物語』は物語である。
攻略のポイント
論説文主体の長文読解だが、難しいテーマが扱われていたり、文章自体も難しかったりでなかなか手ごわい。記述問題も侮れない。スピードをつけ、最後まで目を通し、できる問題を確実に取ることで得点をあげたい。
古文も十分に学習しておかないとあらすじすら判然としない事態も予想できるので、文法・その他の知識も合わせて高校生レベルでの勉強をしておかれたい。
漢字・ことばの意味などの知識問題でも15点ほどの配点があるので、地道に語彙を増やす努力をしておくこと。