法政大学国際高等学校 入試対策
2022年度「法政大学国際高等学校の国語」
攻略のための学習方法
解法
「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め、「法政大国際の国語」で勝利を手中に収めるための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解説」が定まっていない証だからだ。
そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
速読
大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。全体で9000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、「心情表現」を拾いながら素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
法政大国際に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
知識
「高度な語彙力」だけではなく、「文法」や「国語常識」も含めた多種多様な「総合的知識」が必要となる「法政大国際の国語」(直接出題だけではなく、「本文読解」等でも必然的に問われる)。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ、かも知れない。が、そこで諦めてしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。先ずは、「己が実力」を悟ることだ(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。
過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されることがあるし、「問題文理解」にも不可欠だ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」からの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
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2022年度「法政大学国際高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は井上雅人「ファッションの哲学」(文字数約3700字)。小問は全15問(解答数21)。「選択肢」(「空所補充」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(1問)、「漢字の書きとり」(5問)など。問題文は4分半ほどで読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二も「論説文」、出典は石井美保「めぐりながれるものの人類学」(文字数約3300字)。小問は全18問(解答数23)。「選択肢」(「空所補充」、「本文非合致判別」、「総合的知識問題」あり)、「抜き出し」(2問)、「語句記述」(総合的知識問題)、「漢字の読み」(5問)など。問題文は4分程度で読み切り、設問を22分ほどで解きたい。
【大問一】
- 時間配分:20分弱
服を着るということはどういうことか? 自己表現としての「ファッション」なのか、あるいはあくまで「衣」としての機能が果たせればいいのか? 服を着ることが、知らぬ間に社会を変えているのだとしたら――本書では、「身体」「メディア」「社会の変化」「モードの意味」「ブランドの意義」「貧困と格差」「環境への負荷」など、様々な視点から「服を着る」ことの本質的な意味を考察している。本文では、人間には「自我」が存在しているが、直接見られないため、外見によって「個性」を示す必要があり、衣服などの「ファッション」で身体を制御し自分の存在を作り上げていくと論じている。難解な語句や未知の人物が散見されるが、「注」を活用して内容を理解したい。多くの「総合的知識問題」を含めて実に多種多様な小問が並ぶ大問だ。以下、いくつか確認してみたい。
[問1] 「漢字の書きとり」(全5問)。二重傍線部①~⑤の「カタカナ」を「漢字」で記す。チェックする。①「自分自身の姿をシコウサクゴしながら探している」=「試行錯誤」⇒基礎的な「四字熟語」として定着していて当然。②「ヤッカイなことに」=「厄介」⇒意外と厄介な問題かも⇒「危ない」の「危」と混同しないこと。③「何もかもジマエで用意」=「自前」⇒「文脈」を適切に読み取りたい。④「サイゲンなく提案し続ける」=「際限」⇒これは問題ないはず。⑤「世界をオオい尽くそうとしている」=「覆(い)」⇒高校入試の定番なのだが、意外と欠落している恐れがあるので、要注意。本年度の「書きとり」は本校の標準レベルだ。ひとつでも間違ってしまった諸君は、改めて総復習しておくこと。
<時間配分目安:全問で1分強>
[問2] 「空所補充の語句選択肢」(全3問/4択)。本文中の空所【ⅰ】~【ⅲ】に「入るもっとも適当な語」を答える。各選択肢は「接続詞」と「副詞」だ。本校に限らず「空所補充」の定番。「接続詞」では「逆接」はともかく、それ以外には十分に注意する必要がある。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。また、「形式段落冒頭」の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので留意すること。各空所に入る「答え」を確認していく。【ⅰ】は「逆接」の接続詞の選択肢(2)「しかし」だとすぐに特定できる。【ⅱ】には「順接」の接続詞の(1)「そのため」が入ると分からなくてはいけない。【ⅲ】は「換言」の接続詞である(4)「つまり」があてはまると判別できるはずだ。本問のような定番中の定番である「空所補充」は、絶対に失点してはならない。
<時間配分目安:全問で1分半>
[問3] 「理由説明選択肢」(4択)。傍線部(A)「現在の社会では、見た目に強く個性が求められる」について、「それはなぜか」を答える。「選択肢設問」は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここは「理由説明」なので、「見た目に個性が求められる」ことの「直接的理由」として結びつかないものを「消去」することになる。「~だから」⇒「見た目に個性が求められる」と結びつくかどうかだ。各選択肢の「文末」を確認する(「選択肢」の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)。
(1)「自我そのものを認識することができるから」。
(2)「常に不安を抱いているから」。
(3)「アイデンティティの規定を必要としているから」。
(4)「(自我を)他者とは異なる外見の中に見いだそうとするから」。
どうだろうか? 「見た目」と「個性」に結びつく、「外見」と「他者とは異なる」が説明されている(4)以外は難なく「消去」できるはずだ。「同一意味段落」を確認して、他の部分の説明も特に誤っていないと分かる(「論説文」では「同一意味段落」に「根拠・手がかり」がある)。よって、「答え」は(4)になる。見事な「一発消去」ではないか。「原意消去」を完璧にマスターして活用すべし。
<時間配分目安:1分弱>
[問4] 「換言説明選択肢」(4択)。傍線部(B)「匿名性の高い人々に囲まれている近代社会」について、「これはどのような社会か」を答える。無論、「原意消去」からだ。ここは「換言説明」なので、「匿名性の高い人々に囲まれている」の「原意」とつながらない「換言説明」を「消去」する。各選択肢の「文末」と照合したい(「最文末」は全て「~社会」なので、その前での照合になる)。
(1)「周りの人々の素性を知らないまま暮らす」。
(2)「相手の名前を知らないまま人々が活動する」。
(3)「所属する団体の信頼度により評価される」。
(4)「誰もが助け合って暮らしている」。
(3)と(4)の「消去」は自明だろう。これで「2択」? 甘い! 「匿名性(=自分の名前を隠すこと)」の高い「人々」に「囲まれている」のだから、「相手の名前を知らない」まま「人々が活動する」も「消去」できて当然だ。他の部分の説明も特に誤っていないと分かるので、「答え」は(1)で決定だ。再度の華麗なる「一発消去」! 「原意消去」の活用なくして合格はないと心得よ。
<時間配分目安:1分弱>
[問5] 「条件付き内容説明抜き出し」(「30~35字以内」指定)。傍線部(C)の「強く意識しようがしまいが、表情も、仕草も、身体も、衣服も、すべての人が、その扱いに熟練しないわけにはいかない」にある「『その扱いに熟練』するとは何ができるようになることか」が分かる部分を「三十字以上三十五字以内」で抜き出し、「最初と最後の五字」を答える。「条件」は「※[ の部分から抜き出す」こと。「抜き出し問題」では、「抜き出すべき内容」を捉えた上で「抜き出し範囲」を特定し探していく。本問での「内容」の把握で注意しなくてはいけないのは、「『その扱いに熟練』するとは何か」ではなく、「『熟練』することで何ができるようになるのか」ということだ。「同一意味段落」をチェックする。直前から、「人間は自分自身を見た目で確認するようにして、自分の姿形を統御することで自分の存在を作り上げようとする」ことが読み取れる。つまり、「熟練」することで「見た目で確認するような自分の存在を作り上げる」ことができるのだ。これが「抜き出すべき内容」になる。「範囲」はもちろん「同一意味段落」だ。ただし、本問では「条件」があるので「※[ の部分」となる。丁寧に探していきたい。すると、10行目の最後以降に「他者の視線を意識して、社会的に形成されたイメージに合わせることによってしか(自分がどのような人間であるかを)表現することができない」という部分がある。まさに、「見た目で確認する」「自分の存在」と結びつくではないか。「条件」の「範囲」に他に候補となる部分はない。よって、ここでいいはずだ。「指定字数」を考慮すると「他者の視線を意識して、社会的に形成されたイメージに合わせること」(31字)になるので、「答え」は「他者の視線~わせること」となる。尚、「抜き出し問題」では「候補」はひとつとは限らない。「範囲」を網羅的に確認し、全ての「候補」を確認してみることが肝要だ。
<時間配分目安:2分>
[問8] 「空所補充の四字熟語選択肢」(4択)。「総合的知識問題」。「文脈での四字熟語の意味判別」だ。本文中の空所 F に「入るもっとも適当な四字熟語」を答える。空所前後は「私たちが F の存在だと思っている芸術作品ですら、そうやって既存の制度や方法に、そのほとんどを頼っている……」となっている。各選択肢は、(1)「付和雷同」・(2)「唯我独尊」・(3)「唯一無二」・(4)「千載一遇」。無論、判別できなくてはいけない。「既存の制度や方法に、そのほとんどを頼っている」のだから、「答え」は「ただ一つで、二つとないこと」を意味する(3)の「唯一無二」だ。万一、意味が定着していない四字熟語があった諸君は「語彙力不足」を猛省せよ。尚、本校では「四字熟語」だけではなく、「慣用句」「故事成語」「ことわざ」なども頻出なので完璧にしておくこと。
<時間配分目安:30秒>
[問9] 「熟語判別選択肢」(4択)。「総合的知識問題」。「文脈からの熟語の意味用法判別」。傍線部(G)「社会のルール」は「ここでは何にあたるか」を答える。「同一意味段落」の「文脈」から、「私たちは、ファッションを限られたものの中から選んでいるに過ぎず、選び方も社会のルールにしたがっているだけ」であり、「社会が提示しているものの中から選ばなくてはならない」ことが読み取れるはずだ。そして、それは「集合意識」でもあることが分かる。各選択肢は、(1)「因習」・(2)「倫理」・(3)「常識」・(4)「教訓」。ここで悩んではいけない。「社会が提示しているもの」で「集合意識」でもあるとすれば、「答え」は(3)の「常識」だと判別できるはずだ。ちなみに、(1)の「因習」、正確な意味用法を押さえているか? 「古くから伝えられてきた風習」のことで、多くの場合「非難の意を含んで用いられる」言葉だ。知らなかった諸君は確実に定着させておくこと。本校では「高度な語彙力」が求められていると心得よ。
<時間配分目安:1分弱>
[問12] 「換言説明選択肢」(4択)。傍線部(J)「ファッションとは、目で見ることができる権力体系やイデオロギーである」について、「『権力体系やイデオロギー』が『目で見ることができる』とはどのようなことか」を答える。当然、「原意消去」が最優先。ここは「換言説明」なので、「目で見ることができる」の「原意」とつながらない「換言説明」を「消去」する。各選択肢の「文末」と照合したい(「最文末」は全て「ということだ」なので省略する)。
(1)「魅了する」。
(2)「映し出している」。
(3)「沿ったものが多い」。
(4)「教えてくれる」。
「目で見る」のだから、「映し出している」以外は「消去」したい。ただし、「教えてくれる」の直前に「視覚情報を通して」とあるので、「消去」しづらい可能性もある。その場合は「2択」となり、次なる「消去」に進む。「権力体系やイデオロギー」の「原意」との結びつきだ。ちなみに、「イデオロギー」は「注」で「人々の考え方や行動を根底から支えている信念や思想」と説明されている。残りの選択肢をチェックする。(2)は「支配され、従属を余儀なくされているさまを(映し出している)」、(4)は「思想信条の自由を(教えてくれる)」となっている。何の問題もなく「答え」は(2)だと特定できる。本問では「2段階消去」の可能性も考えたが、いずれにしても先ずは「原意消去」ということは不変だ。
<時間配分目安:2分弱>
【大問二】
- 時間配分:22分ほど
フィールドで文化人類学者が見たものとは? ――「タンザニア」「ガーナ」「インド」から、「60年安保の水俣」、「京都大学の『立て看』撤去問題」まで、時間と空間を越えてめぐりながれ、異なっていながら同じものに満ち、分かたれていながらつながっている私たちの「生のありよう」を論じている。本文では、私たちが毎日のように口にする何気ない言葉が、ふとしたきっかけで奇妙に思われてくると指摘し、とりわけ、「ありがとう」という言葉は奇妙で、日常的な用法の奥底に「自分自身の生が日常としてある」ことへの「驚きと不思議さ」を宿していると論じている。「文化人類学」の論考で難解な語句も多く、内容を完全に理解することは難しかろうが、自分なりに読み解いてほしい。【大問一】同様に多様な設問構成だが、難易度は高い。心して解き進めること。以下、いくつかの設問を検証する。
[問1] 「漢字の読み」(全5問/「ひらがな」指定)。本文中の二重傍線部①~⑤の「漢字の読み」を「ひらがな」で記す。昨年度の「読み」と比べると易しくなっている。本校志望者であれば、是非とも失点は避けたい。確認する。
①「示唆してもいる」=「しさ」⇒高校入試での十八番(「読み」も「書き」も)、これは問題ないはず⇒「それとなく教え示すこと」という意味も必須定着事項。
②「判断は他者自身に委ねよう」=「ゆだ(ね)」⇒問題なし。
③「この私が、否あなたこそが、」=「いな」⇒「否」は誰もが知っている漢字だが、この用法での「読み」はエアポケットかも⇒知らなかった諸君は確認しておくこと。
④「畏れながら」=「おそ(れ)」⇒流石(さすが)に読めるはず⇒尚、「恐れ」「怖れ」「惧れ」「懼れ」といった同訓異字の判別にも注意したい。
⑤「絡まりあった」=「から(まり)」⇒「読み」の定番だ。本校では、平易から難解までの確実な「漢字力」を培っておくことが肝要だ。
<時間配分目安:全問で1分弱>
[問3] 「空所補充の語句記述」(全2問/「漢字」指定/6択)。「総合的知識問題」。「口語文法」。本文中の空所 a には「品詞名」、 b には「該当する活用形」をそれぞれ「漢字」で答える。空所部分は、「ありがとう」という言葉について「辞書を引く」と「 a 『ありがたい』の b 『ありがたく』のウ音便」となっている。「口語文法」を理解し定着させていれば実に平易な問題。「答え」は、 a =「形容詞」、 b =「連用形」だ。万が一、本問で手間取る諸君は、「口語文法」の徹底的復習が不可欠だ。
<時間配分目安:全問で1分弱>
[問5] 「内容説明選択肢」(4択)。傍線部(C)「端的に」とは「どのような状態・様子を表す語か」を答える。「どのような状態・様子」という「内容説明」が問われてはいるが、要は「総合的知識問題」だとすぐに気づきたい。「端的」の「意味判別」だ。各選択肢は、(1)「状況が明確にそれとわかる様子」・(2)「物事が隅々まで把握されている様子」・(3)「状況が順序立てて整理されている様子」・(4)「中心ではなく周辺の物事が浮上する様子」。「端的」は必須定着語句で、「はっきりとしているさま」を表すことは周知のはず、したがって、「答え」は(1)になる。本問のような「目くらまし」が稀にある。絶対にひっかからないようにしたい。
<時間配分目安:30秒>
[問12] 「内容説明選択肢」(4択)。傍線部(J)「西欧諸語の別れの言葉とは異なるニュアンス」について、「筆者はどのように『異なる』と感じているのか」を答える。先ずは「原意消去」をしたいが、この段階では無理だ。「傍線部一文一部の法則」に「手がかり」を求めたい(「傍線部が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という読解の基本となる解法)。直前から「日本語の『さよなら』という言葉」についてだと分かり、直後から「異なるニュアンス」を感じたのは「彼女」(アン・モロー・リンドバーグ)だと判断できる。「筆者」ではないのだ。問われているのは「筆者」が「どのように感じているか」ということなので、さらに、確認していく。「同一意味段落」から、傍線部は「筆者」の「近代の西洋とは異なる、日本における能動とも受動ともつかない生のあり方」に結びついていることが読み取れる。ここで、各選択肢の「文末」と照合する。(1)「自立した意志を示している」、(2)「あるがままに受け入れようとする姿勢を示している」、(3)「すべてを投げ出している態度を示している」、(4)「一期一会の発想に基づく覚悟を示している」。 どうだろうか? 「能動とも受動ともつかない生のあり方」なのだから、「あるがままに受け入れようとする」以外は「消去」できるはずだ。「同一意味段落」を確認して、他の部分の説明も特に誤っていないと分かるので、「答え」は(2)になる。変則的な「消去」方法だったが、「設問内容」を的確に読み取りさえすれば、「原意消去」ができると分かったはずだ。
<時間配分目安:2分半>
[問16] 「空所補充の漢字選択組み合わせ記述」(「漢字2字の熟語」指定/5択)。「総合的知識問題」。「熟語の特定」。本文中の空所 M に入る「漢字二字の熟語」を、示されている語群【激・苦・悲・辛・労】から「組み合わせて」記述する。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で空所部分を確認してみる。「(アンは)数年前に幼い息子を失うという M を経験していた」となっている。つまり、空所部は「幼い息子を失うという経験」を表現していることになる。「熟語」として成立する「組み合わせ」は限られているので、「文法」および「文脈」から特定したい。「答え」は「辛苦」だ。「つらく苦しい思いをすること」だということは知っていて当然だ。「悲」も字義的に候補ではあるが、語群からは「熟語」はつくれない。「漢字選択組み合わせ記述」は本校では頻出だ。しっかりと練習しておくことが必要。
<時間配分目安:1分強>
[問18] 「本文内容非合致選択肢」(4択)。「この文章の内容の説明」として「誤っているもの」を答える。典型的な「本文内容(非)合致設問」だ。本問は「非合致」になる。本文は「論説文」なので「論旨非合致」というわけだ。「論旨」が簡潔にまとめられているのはどこか? 「論説文」の類型によって、「頭括型」は「序論部分」、「尾括型」は「結論部分」、「双括型」は「序論部分」+「結論部分」となる。念のために、「序論部分」と「結論部分」双方の要点と各選択肢説明のポイントとを照合し、正誤判別したい。
(1)「『ありがたい』の内奥の意味」「生の偶有性を感受する態度」⇒「『有り難い』こと、稀有なものであるにもかかわらず生じていることへの驚きや感嘆」とある=合致。
(2)「近年の人類学では、事物の存在は人間には決定できないとしている」⇒「(近年の人類学は)ある現象が現実のものとして存在しうるかどうかを誰かが決定できる」と説明されている=非合致。
(3)「共通の言葉を持たない同士でも、通じ合う稀有な瞬間がある」⇒「アンの具体例」の中で、「共通の言葉を持たない漁師」と「ありがとう」ということ言葉を交わして、「一瞬の閃き」のように通じ合うことができたと紹介されている=合致。
(4)「日本語の平凡な言葉の中に、人との関係性や生のあり方を見いだすことができる⇒「『さよなら』などの平凡な日本語は『定型性を超えた意味』を持ち、人と人との関係性などの捉え方を示していると読み取れる=合致。
よって、「答え」は(2)だ。尚、「論説文」であれば本問のように「本文内容合致」=「論旨合致」と捉え、「序論部」及び「結論部」と照合すればいいが、「小説」では「本文全ての内容」と照合する必要があり、とても手間がかかる。そこで時間をとられるよりは、他の小問をしっかりと確認し、確実に得点していく方が得策だ。したがって、戦術的には後回しにすること。無論、「捨て問」でも構わない。
<時間配分目安:3分>
攻略のポイント
●完全に「ハイパーな時間勝負」となる。どう「攻略」すればいいのか? 要は「戦術」だ。中でも「解答順」が最重要。「得点できる問題」を「時間切れ」で逃すのは最悪だからだ。先ずは、「論説文」と「小説」(随筆)のどちらの「大問」を先に解くか? これは、自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと(本年度は大問2題だったが、昨年度のように「漢字問題」が独立して3題の場合は無論、「漢字問題」が最初)。次に、「小問」は「知識問題」からこなすことが原則だ。要するに、「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「取れそうにない問題は潔く捨てる」という覚悟も求められる(「捨て問」があってもいい)。もちろん「単純ミス」は絶対にしてはいけない。「国語」の「受験者平均得点率」は「法女」の頃も含め過去12年間平均で62.8%、本年度は一気に下がって57.6%。3科合計の「合格者最低得点率」が同63.9%、本年度は63.7%となっている。ただし、昨年度までは前者の得点率が後者のそれを上回っていた。本年度を例外と捉えると、「国語」での「失点」は致命的になるということだ。
●「総合的知識問題」、単なる「語彙力」だけではなく、「口語文法」も含めて「あらゆる国語的知識」が求められているので決して侮れない。本校を志したその瞬間から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが必要だ。学校や塾での学習だけでは全く不十分なので、「独習」は欠かせない。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文は全体で例年8500字程度となっている(本年度は減少して約7000字)。当然、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。