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中央大学高等学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2019年度「中央大学高等学校の国語」
攻略のための学習方法

記述

中大高校の記述対策は問題解説及び攻略ポイントのとおりだが、その前提としてなすべきことがある。それは「文を記す」「記述する」ことに慣れることだ。最初は時間がかかってもいい。厭わずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらう。「文法」など正しい日本語の「文」になっているのか、言いたいことは正確に伝わっているのかを確認する必要があるからだ。

では、何を「書く」か? 練習問題や過去問にある「記述設問」は勿論だが、その問題文の段落ごとの要点をまとめる練習をするのがとてもいい方法だ。20~30字程度で書いてみる(中大高校の典型的な「記述」の練習にもなる)。無論、内容は先生などに確認してもらう。

次の段階としては「字数の感覚」を身につけることだ。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅い。下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要。徹底して「20~30字程度」の「字数感覚」が身につくようにトレーニングを重ねたい。

解法

「記述」「選択肢」「抜き出し」「空所補充」、その他の問題も含め「中大高校の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。解き方が安定しなければ、得点力はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。

そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。

さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。

速読

大学入試にも匹敵、あるいはそれ以上の問題文を読まなくてはならない。「現代文」全体で6500字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。

「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。

「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。中大高校に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。

知識

「直接出題」は勿論、「本文読解」等でも必然的に問われることになる「総合的知識」。いかなる「攻略法」があるのか? 「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。

先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。

さらに、「口語文法」も侮ってはいけない。直接出題されるし、「記述」にも不可欠だ。日本語として「文法」的に「正しい文」でなければ「減点」されるし、そもそも内容が正確に伝わらない。特に、「品詞分類」「文節の相互関係」といった「基礎的事項」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は確実に定着させておくことが重要だ。

なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・語句・文法1500 四訂版」(旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。

古典

「公立中学」の「国語」でも「古典」は扱う。「古文」「漢文」は必須のカリキュラムだ。しかし、「指導要領」上はほんの導入部分だけで、本格的な学習はしない。「文語文法」等を体系的に学ぶことはない。

が、私立の「高校入試」ではそれらも含めて出題されることになる。明らかに「ハンディ」だが、仕方がない。塾での学習ないし「独習」するしかない。最重要な「古文単語」(200語程度)を定着させ、基礎的な「文語文法」は理解しておかなくてはならない。

そして、できるだけ多くの「古典作品」に触れて慣れておくことが重要だ。「漢文」についても、「攻略ポイント」で触れたとおり押さえておかなくてはいけない。

なお、「古文」強化用のテキストとしては、「古文完全攻略63選——入試頻出問題厳選」(東京学参)や、「古文単語」定着用として「マドンナ古文単語230」(学研)などが推薦できる。

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2019年度「中央大学高等学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は漢字問題、小問なし(読み、書き各5問)。2分以内で丁寧に終えたい。

大問は説明文、出典は山﨑広子「声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか」(文字数約3800字)。小問は全8問(解答数11)。「選択肢」(空所補充、内容合致あり)、「抜き出し」(1問。空所補充)、「説明記述」(50字以内指定1問)、問題文は5分程度で読み切り、設問を13~14分で解きたい。

大問は小説、出典は飛鳥井千砂「隣の空も青い」(文字数約3800字)。小問は全6問(解答数8)。「選択肢」(空所補充、表現説明あり)、「抜き出し」(1問。空所補充)、「説明記述」(50字以内指定1問)、問題文は5分ほどで読み切り、設問を10数分で解きたい。

大問は古文、出典は作者不詳「鹿の子餅」(文字数約210字)、小問は全4問(解答数7)。「選択肢」(空所補充あり)、「語句記述」、「仮名遣い」、「抜き出し」(2問)。6~7分で解きたい。

大問は漢文、出典はⅠが「孟子」(文字数12字)、Ⅱが「中庸」(文字数12字)。小問は全3問(解答数3)。「記述」(書き下し文)、「返り点記入」、「総合的知識問題」(四字熟語)。3分ほどで解きたい。

大問は総合的知識問題、小問全3問(解答数6)。「口語文法」「敬語」「ことわざ」。3分ほどで解きたい。

【大問一】漢字問題

  • 時間配分:2分

「漢字の読み書き」(全10問)。
例年並みの難易度だ。失点は許されないと心得よ。「文脈」も確認しながら熟語を特定していくこと。
(1)「オンコウな人柄」=「温厚」⇒これはできて当然
(2)「その計画はあまりにムボウだ」=「無謀」⇒「結果に対する深い考えのないこと」という意味も押さえよ
(3)「テロ事件のギセイ者」=「犠牲」⇒「部首」に要注意
(4)「電話でもウケタマワっております」=「承(って)」⇒「送り仮名」に要注意
(5)「罪をイサギヨく認めた」=「潔(く)」⇒「細部」に気をつけること
(6)「仏門に帰依する」=「きえ」⇒これは難問か? 「書きとり」にも対応せよ
(7)「観光事業の振興」=「しんこう」⇒問題なし
(8)「軽率な行動」=「けいそつ」⇒基本中の基本
(9)「生糸の生産」=「きいと」⇒「せいし」ではない
(10)「(しい)変化」=「いちじる(しい)」⇒必須定番。
本校が求める「ハイレベルな語彙力」に対応するためには相当な努力が必要だと心得よ。

【大問二】説明文

  • 時間配分:14分

なぜ人は録音した自分の声が嫌いなのか? どうして「いい声」の人の言葉には説得力があるのか?――「声」には、実は絶大な力が秘められている。それは人の心を動かし、揺さぶり、自分自身の心身さえ変えていく。「声」という神秘的で謎に満ちた「音」の正体を、多彩な知見と豊富な事例から繙(ひもと)いている。

本文では、家の内外に音が筒抜けになる紙と木でできた家で生活してきた日本人は、西洋では雑音として排した「音」を風情として好ましい価値を見出し、その感覚は雑音の入った「人の声」に説得力を見出してきたと述べている。特に難解な語句もなく、内容は分かりやすい。いかにも本校といった、実に多種多様な小問が並ぶ。迅速に解き進めていきたい。
以下、いくつか検討してみたい。

[問一] 内容説明選択肢(4択)。

傍線部(1)の「声にはひとりひとり特徴があります」についての「説明」を答える。選択肢設問は「消去法」が原則。先ずは「原意消去」をしたい(原意絶対優位の原則=「設問」「傍線部」等の原意、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。ここでは「ひとりひとり特徴があります」の原意と結びつかないものを消去していきたい。各選択肢の「文末」(選択肢の説明で最も重要な要素は「文末」に記されている)と照合する。

(ア)(声の特徴には)固定された要素がもっとも反映している
(イ)(声が大きいとか響くというのは)特徴とは言えない
(ウ)(声の特徴というものは)環境に大きく左右されている
(エ)(声の特徴を示す強弱と音色は)呼吸と共鳴の影響を受けることで変化する
さあ、どうか? 判別できない? 否、冷静に判断してみたい。「ひとりひとり特徴」があるということは、「ひとりひとり違う」⇒「変化」しているわけだから、そう、(エ)以外は「消去」でいい。他の部分の説明も特に誤ってはいない。

したがって、答えは(エ)になる。狐につままれたようかも知れないが、結果として「一発消去」ではないか。畏るべし! 「原意消去」は必ず使いこなせるようにしておきたい。

<時間配分目安:1分強>

[問二] 「語句の空所補充選択肢」(3問/5択)。

本文中の空所[  Ⅰ  ]~[  Ⅲ  ]にあてはまる適切な語を答える。

選択肢は「接続詞」と「副詞」、本校に限らず定番の問題だ。「接続詞」では「逆接」以外には十分に注意しなくてはいけない。「逆接」以外だと、どれもあてはまってしまう可能性があるのだ。単純に前後を読みつなぐだけではなく、それぞれの「接続詞」の「意味・用法」を的確に押さえた上で、「文脈」を確認する必要がある。

また、段落冒頭の「接続詞」は前段落全ての内容を受けているので注意すること。各空所の「答え」を確認してく。
[  Ⅰ  ]には転換の接続詞である選択肢(ア)「では」
[  Ⅱ  ]には例示の副詞の(イ)「たとえば」
[  Ⅲ  ]には換言の接続詞である(オ)「つまり」がそれぞれあてはまる。
「接続詞」「副詞」などの空所補充は必出だ。失点は致命傷になると心得よ。

<時間配分目安:1分半>

[問四] 「文の空所補充選択肢」(5択)。

本文中にある空所    A    にあてはまる適切なものを答える。
「傍線部(空所部)一文一部の法則」(傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部(空所部)以外が重要という重要解法)で空所前後を確認する。
「鶏と卵のようなもので、    A    」となっている。各選択肢は、
(ア)「順番が決まっています」
(イ)「時によって変わるのです」
(ウ)「体格の方が優先なのです」
(エ)「どちらが先なのかはわかりません」
(オ)「想像すればわかります」。
当然ながら、「鶏と卵のようなもの」=「鶏が先か、卵が先か」という慣用表現だと気付くはずだ。要は「ニワトリとタマゴのどちらが先にできたのか」という問題のことだ。よって、「答え」は(エ)だ。
万が一にも「鶏と卵」でピンとこない諸君がいたとすれば、本校ではこうした国語常識が出題されると心得て、常日頃から意識して習得しておくことが不可欠だ。

<時間配分目安:30秒>

[問六] 「理由説明記述」(「50字以内」指定)。

傍線部(2)「ヨーロッパの人々の声が石によって作られた声」について、「ヨーロッパの人々の声の特徴が出来た理由」を五十字以内で説明する。

先ずは、「ヨーロッパの人々の声の特徴」はどのようなものかを確認したい。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で手がかりを求めたいが……、あれれ、直後は「日本人の声は木と紙によって作られた声だ」となっている。
なんと、傍線部を含む段落は「ヨーロッパの人々の声」ではなく、「日本人の声」についてであった。とんでもない曲者だ。当然、文脈的に「ヨーロッパの人々の声」に関してはこれより以前で述べられているはずなので探していくと、(中略)を挟んで6段落前に「(ヨーロッパの)人々の声はおおむね低く深くなります」とある。これが「特徴」だ。

では、なぜそのような特徴が出来たのか? 読み進めていくと、次段落でその経緯が説明されていることがわかる。曰(いわ)く、「ヨーロッパの建物は石造りで天井が高い」→「発した声がよく反響する」→「聴覚は『よく響いている』と満足する」→「無理に声を張り上げる必要がない」→「喉はリラックスし共鳴腔が広くなる」→「(その結果)声は深みを帯びてより響く」というわけだ。

こうした経緯を理由として説明すればいい。たとえば、「建物が石造りで天井が高く、声がよく反響し、無理に声を張り上げる必要がないので、共鳴腔が広くなるから。」(50字)といった「答え」になる。
本校であっても稀にこうした「曲者」があるので注意せよ。

<時間配分目安:3分>

[問七] 「空所補充抜き出し」(「語句」指定)。

本文中の    C    にあてはまる語を抜き出して答える。
抜き出しでは、「抜き出すべき内容」を特定した上で「抜き出し範囲」を絞っていくことが鉄則。先ずは「内容」を空所前後から特定したい。

「日本人の伝統的な美意識はというと、面白いことに『    C    』にあるのです」となっているので、内容=日本人の伝統的な美意識だと判断できるはずだ。「範囲」は同一意味段落になる(論説文、説明文では同一意味段落に根拠・手がかりがある)。
抜き出すべき内容を意識しながら探していくと、空所部から2段落目で「東洋の街の音」について説明されており、その最後に「日本人は静まりかえったところにポーンと響く澄んだ音よりも、そこここにある雑音に価値を見いだした」とある。「価値を見いだした」⇒「美意識」と結びつく。

したがって、「答え」は「雑音」となる。「抜き出し」では「内容」と「範囲」の絞り込みがポイントだ。尚、「抜き出し候補」はひとつとは限らないので、必ず「範囲」の全て隈なく、そして漏れなくさがすこと。

<時間配分目安:1分半>

【大問三】小説

  • 時間配分:10分

出張先である韓国のホテルでの「俺」と先輩の「野中」との気まずい関係や、置いてきた恋人に対しての思いなどを描いた短編小説。

本文では、「韓国版のおでん」の店先で店員に反日感情ゆえに「イルボン(=日本)」と叫ばれ追い出されてしまったことにをきっかけとした、2人のやりとりが描かれている。深刻なテーマだが、淡々と描かれており内容は理解しやすい。基本的な小問ばかりなので、一気呵成に解いていきたい。以下、いくつか確認しよう。

[問一] 「換言説明選択肢」(4択)。

傍線部(1)「そう思ってしまっていた」について、「そう」の「内容」を答える。典型的な指示語換言だ。無論、指示語を開いていく。「傍線部(空所部)一文一部の法則」で確認すると、「そう」=「そんなことをする人はほんの一部で、自分がその一部の人に出くわすことなんてない」ということだとすぐに分かる。「そんなこと」という「二重指示語」だ。当然、再び開くことになる。「そんなこと」とは「目の前に立っている人間から大声で怒鳴られる」ようなことだと読み取れる。

どういう「状況」なのか? 「同一場面」から読み解いていく(小説では「同一場面の直前直後に手がかり・ヒントありが解法の大原則)。前段落から、「この国(韓国)と俺の国(日本)との間に、長い間ずっしりと横たわっている問題」が背景にあるという「状況」が分かるはずだ。各選択肢と照合する(本問の選択肢説明は短いので、説明全てとの照合)。

(ア)「日本人に対して大声で怒鳴りつけるような韓国人の若者がいる」
(イ)「日本と韓国との間には交流が盛んな一方で問題も横たわっている」
(ウ)「韓国と日本に問題があったとしても自分には直接関係はない」
(エ)「韓国人の一部にいる日本に攻撃的な人と出くわすのは運が悪い」。

「自分がその一部の人に出くわすことなんてない」と思っていたのだから、「答え」は(ウ)だと判別できる。
尚、本問のように「指示語」が直接的に問われていなくても、「指示語」があったら即開くことが肝要だ。また、「二重、三重……指示語」などは必ず全て開くこと。

<時間配分目安:1分半>

[問四] 「内容説明選択肢」(4択)

傍線部(2)「次の野中のその言葉が、俺の頭の中のぼんやりとしたものに、輪郭を与えた」についての「説明」を答える。ここは「原意消去」ができるはず。「頭の中のぼんやりとしたものに、輪郭を与えた」の「原意」と結びつかないものを「消去」する。

各選択肢の「文末」は、(ア)「思い出させてくれた」
(イ)「気付かされた」
(ウ)「思い知った」
(エ)「感じられた」。
これで判別できるのか? 無論、十分に可能だ。「頭の中のぼんやりとしたものに、輪郭を与えた」=「頭の中にあったことが明確になった」のだから、 (ア)以外は「消去」できる。他の部分の説明も特に誤ってはいない。

よって、「答え」は(ア)だ。一発消去できたわけだ。改めて、原意消去は使える解法だと認識すべし。

<時間配分目安:1分>

[問六] 「表現内容説明選択肢」(4択)。

「本文の表現」についての説明を答える。傍線部設問ではないので、流石(さすが)に原意消去は無理だ。各選択肢の要点で正誤判別していく。

(ア)「『鮮やかなオレンジ色の液体』や『黒いトランクス』などの色彩が、登場人物の心理を象徴的に表している」⇒後者はともかく、前者は「店」の説明=不適切。
(イ)「『俺』の心情変化が中心となって物語が展開」⇒確かに、「俺」の「一人称の視点」の語りで心情変化が描かれている=適切。
(ウ)「前半が状況描写を連ねているのに対して、後半は会話文を多用し、場面転換を強調」」⇒前後半の構成は正しいが、「場面転換」はしていない=不適切。
(エ)「『俺』の視点から『野中』の行動が一方的に描かれ、『野中』が理解し難い存在として描かれている」⇒「野中」の描かれ方は決して理解し難い存在としてではない=不適切。

したがって、「答え」は(イ)になる。「表現」の「特徴」や「効果」などに問われた場合は、事実関係」を中心として判別していくことが肝要。

<時間配分目安:1分半>

【大問四】古文

  • 時間配分:7分

江戸時代の川柳や狂歌と同じ土俵にある「笑話」で、「江戸落語の祖」といわれる鹿野武左衛門のバックボーンになっている作品。

本文では、大人気の相撲取りどうしの取り組みで大混雑の場内に、とんちを利かせてまんまと入場した者のお話。昨年度の咄本(笑い話を集めた書物の総称)同様に江戸時代の笑話だ(本校は「お笑いネタ」がお好み。本年度で5年連続の出題)。古文の基礎的知識が問われているのは例年と同じだが、本年度は内容解釈がなくやや易化している。以下、2問だけ検討する。

[問二] 「仮名遣いの変換記述」。

傍線部(1)「やうに」を「現代仮名遣い」に改める。誰もが知っていなくてはいけない歴史的仮名遣いの基本。「母音」と「母音」が直接つながった場合の変換だ。「や・う・に」=「yau・ni」⇒「au」→「ou」=「yo(∧)」⇒「yo(∧)・ni」⇒「ように」が「答え」となる。他に「母音」と「母音」では、「iu」→「yu(∧)」、「eu」=「yo(∧)」がある。また、「語頭」以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」⇒「わ・い・う・え・お」も常識。仮名遣いは本校に限らず頻出なので確実に定着させておくこと。

<時間配分目安:30秒>

[問四] 「同意表現の抜き出し記述」(全2問/ともに「5字」指定)。

本文中には「~できない」という意味の「表現」が2種類あるが、「それを含む部分」をそれぞれ「五字」で抜き出して答える。先ずはすぐに、2行目の「這(はひ)入(い)られぬ」を特定したい。

「這入ら/れ/ぬ」と品詞分解でき、「這入ら」=4段活用の動詞「這入る」の未然形+「可能」の助動詞「る」の未然形(口語の「れる」)+「打消し」の助動詞「ぬ」の終止形(中古・近世の「ず」)だ。そして、もうひとつだが、5行目の「得(え)這入らず」に着目すべし。「え~打消し」で「~できない」という意味の呼応の副詞だ。

よって、答えは「這入られぬ」と「得這入らず」となる。文語文法ではこうした呼応の副詞が他にも多々ある。確実に習得しておく必要がある。

<時間配分目安:全問で1分半>

【大問五】漢文

  • 時間配分:3分

Ⅰ」は中国戦国時代の儒学者・思想家で、性善説を唱えた孟子の言行をまとめた書。
「Ⅱ」は儒教における「四書」のひとつで、中庸という言葉自体がその中心的概念になっている。「返り点」「書き下し文」といった本校お馴染みの漢文の基本問題。一気呵成に得点すべき大問。
以下、2問だけ確認する。

[Ⅰ-問一] 「書き下し文記述」(「漢字・仮名交じり文」指定)。

「Ⅰ」の傍線部「(ず) (べカラ)(ク)於人(ヨリ)」(*「」「」「」は返り点。平仮名は読み、カタカナは送り仮名)を、書き下し文(漢字・仮名交じり文)に改める。昨年度は「全て平仮名指定」という曲者だったが、本年度はそうではないので例年並みの難易度だ。

「不」「可」は助動詞なので平仮名にすること。また、「於」は置き字なので注意したい。「返り点」の「」→「」→「」→「」となる。したがって、「人より受くべからず」が答えとなる。「返り点」「書き下し文」は基本のキなので、しっかりと習得しておくことが肝要。

尚、書き下し文では付属語(助動詞・助詞)を平仮名とし、当然、歴史的仮名遣いで表記すること。

<時間配分目安:1分>

[Ⅱ-問一] 「返り点記入」。

「Ⅱ」の傍線部「不可(カラ)(もッテ)(ス)(ト)」に、書き下し文の「以って道と為すべからず」を参考にして、「返り点」を記入する(読み仮名、送り仮名は不要)。「以(もッテ)」→「道(ト)」→「為(ス)」→「可(カラ)」→「不(ず)」の順だ。

よって、答えは「不  可二 以為一レ 道」(*「」「」「一レ」が返り点)となる。返り点は十分に練習しておくこと。

<時間配分目安:1分>

【大問六】総合的知識問題

  • 時間配分:3分

「口語文法」「敬語」「ことわざ」だ。難易度は決して高くないので、短時間にこなしていきたい。選択肢が15もある口語文法だけ検証する。

[問一] 「文法的説明の選択肢」(全3問/15択)。

示されている文中の傍線部(1)~(3)の「文法的説明」を答える。「品詞」および「活用形」(動詞の場合は活用の種類も判別する)が問われている。「口語文法」の基礎だ。確認する。
(1)「風が強くて」=形容詞「強い」の連用形⇒「答え」は選択肢(キ)
(2)「机の上はざらざら」=「擬態語」なので副詞⇒「答え」は(ス)
(3)「日記をつける」=カ行下一段活用の動詞「つける」の終止形⇒「答え」は(オ)。

本校では、付属語(助動詞・助詞)も含め口語文法の徹底した理解・習得・定着が必須。

<時間配分目安:1分>

攻略のポイント

  • ●「ハイパーな時間勝負」となる。どう「攻略」するか?
  • 解答順が最重要。「得点できる問題」を時間切れで逃すのは最悪だ。「現代文」「古文」「漢文」「漢字」「総合的知識問題」、どの大問から解くか? 「漢字」「知識」を最初にこなすのは当然だが、他は自分自身の特性に応じて事前に決めておくこと。
  • 要は「取れる問題を確実に押さえる」ことだ。逆にいえば「捨て問」という覚悟も求められる。国語の合格者平均得点率(6年間平均で75.3%。本年度は何と82.6%)は3科合計の合格者最低得点率(5年間平均で60.1%)を大幅に上回る。したがって、国語での失点は致命的になると肝銘せよ。
  • ●「説明記述」の対策は?
  • 実直に記述の練習を続ける他はない。正否の分かれ目となる最重要要素を文末として他の必要要素を積み上げていくという手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先度を特定し、高いものから積み上げていく。徹底的に練習することが必要だ。
  • ●「多様な設問内容」にはどう対処するか? いかに「解法」を的確に用いるかがポイントだ。
  • 「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが肝要。そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。
  • ●配点比率が高い「総合的知識問題」も無論、侮れない。
  • 高度な語彙力は勿論、文法・文学史等まで網羅したあらゆる知識が必要なので、独自に習得していくことが重要だ。
  • ●「古文」の「攻略法」は?
  • 重要な「古文単語」の定着はもちろんだが、内容理解も求められるので基礎的文語文法は押さえておきたいまた、漢文でも「返り点」「書き下し文」などの基礎は必ず定着させておくこと。
  • ●試験時間は50分。
  • 問題文は「現代文」だけでも7000字程度(本年度は約7800字)。無論、速く正確に読み取ることが求められる。分速750字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。

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