慶應義塾大学 環境情報学部 小論文
入試対策と勉強法
慶應義塾大学 環境情報学部 小論文
ここでは、慶應義塾大学の環境情報学部を目指す方に対して、小論文の試験の出題傾向や試験合格のための勉強法、さらに、おすすめのテキストをご紹介いたします。なにから始めればいいのかわからない、効率的に勉強したい受験生は、ぜひ参考にしてください。
※2021年度より実施された「大学入学共通テスト」導入に伴う大幅な「大学入試制度改革」は本大学では実施されておらず、本学部も21・22年度に関しては従前どおりの出題内容および形式でした。尚、以下の「入試傾向」は、基本的に2021年度までの「入学試験」に準拠しています(但し、22年度の出題に言及している部分もあります)。
慶應義塾大学環境情報学部 小論文の出題傾向とは
出題範囲(分野)
環境情報学部は、「ひとつの学問分野にとらわれることなく幅広い視野を持ち、地球的規模で問題発見・解決できる創造者でありリーダーを目指そうとする学生」を求めており(本学部「アドミッションポリシー」)、入試では「環境情報学部の理念や研究内容をよく理解した上で『SFCでこんなことをやってみたい』という問題意識」が問われます。そして、本学部の「試験科目」としての「小論文」では、「発想、論理的構成、表現などの総合的能力問う」と「一般選抜要項」に明記されています。
「多様で複雑な社会に対してテクノロジー、サイエンス、デザイン、ポリシーを連関させながら問題解決」を図り、「既存の学問分野を解体し、実践を通して21世紀の実学を作り上げること」(本学部HPより)を目標に掲げるSFC(本学部と総合政策学部)では、文理を問わず学際的で多種多様な分野からの出題があります。特に本学部では、「人を取り巻くものは環境、そことやりとりすることは情報」というコンセプトのもと、「人」の存在を意識した出題内容が多いです(2020年度は「人間性」、22年度は「未来からの留学生」の資質が問われました)。また、「自由な発想力」(これまでにないビジョンやコンセプトを創り出す力)と、自分が持っているイメージを他人に的確に伝える「プレゼンテーション能力」が求められ、出題者側のまさに「自由な発想力」で、入試問題としては想像もつかないような、ありとあらゆる分野からの出題があります(2018年度はなんと「ファンタジーの創作」、21年度は「不条理」の「定量的問題解決」として数学的証明が求められました)。
出題量と時間配分
「文章」や「図表」「図版」、「写真」「イラスト」「漫画」「タイトル」「キャッチコピー」等々、多種多様な何種類もの膨大な「資料」(「文章」だけで1万5千字以上の年度もあります)を読み解いた上で、合計で800~1700字程度の「説明(事項)記述」や「見解論述」、そして、「ヴィジュアル化」などをすることになります。
試験時間は120分。「資料」の理解・読解、検討、比較・分析、論点整理を40分強で終わらせ、それぞれの設問ごとに「構成メモ」をしっかりと作成した上で、残りの時間でさまざまな「説明(事項)記述問題」や「見解・アイデア論述問題」等を丁寧に論述し、さらには「ヴィジュアル化」などをこなすことになります。
出題形式
複数の「資料」(3~10以上と不定)が示され、それに関しての「設問」(2~4問、解答数は2~6)があるという形式は定着していますが、「設問内容」は年度によって全く異なります。ただ、共通しているのは、提示された「テーマ」に則して、与えられたさまざまな「条件(資料)」の中から共通する何らかの「問題点」を抽出し、それに就いての受験者各位の「解決策」を「見解・アイデア」として、「記述」「論述」や「ヴィジュアル化」することが求められます。尚、「創作」や「計算」が求められる場合もあります。その際に、上位・下位概念にカテゴリー分類した「チャート」を示すことや、「タイトル」を付すといったような「プレゼンテーション能力」が高い頻度で問われるという特色もあります。また、「資料」に関しての「説明(事項)記述」が出題されることも多いですが、それらは「見解・アイデア論述」に繋がっているので、整合性に注意する必要があります。
慶應義塾大学環境情報学部 小論文試験を攻略するための勉強法
前提
環境情報学部の「小論文」では、必ず「同学部(SFC)で何をしたいのか?」という視点が求められます。それは、「未解決の問題に取り組み解決策を創造する」という同学部(SFC)の「理念」そのものだからです。しかも、「何を学びたいのか?」といった受動的なことだけではなく、能動的に自ら構想し、どのように「社会に貢献できるのか」という「何か」を具体的に「計画立案」し、「実行力」の伴う論述をする必要があります。
その為には、「環境情報学」とは何か? 同学部の「先端情報システム」「先端領域デザイン」「先端生命科学」「環境デザイン」「人間環境科学」という5分野では具体的に何を研究しているのか? それらに就いて、情報収集をして十分に把握しておくことが肝要です。
知識
「資料」としての硬質な「文章」を咀嚼する為には、難解な語句や「キーワード」を読み解く「知識」が必要です(「公民」の「政治・経済」「現代社会」「倫理」の教科書レベルの「知識」も必須です。また、理系分野でも高校での必修科目程度の知識は確認しておきましょう。「数学」は必須です)。
無論、「論述」での「誤字・脱字」は「減点要素」なので「漢字」ひとつたりとも疎かにはできず、高度な語彙力が求められます。そこで、先ずは「自己診断」をしましょう。「共通テスト(センター試験)」の「漢字問題」(要は「同音異字」「同訓異字」の判別)が「基礎的語彙力」のバロメーターとなります。15年分以上の過去問をチェックし、具体的な学習を進めましょう。尚、以下のサイトは「漢字問題」だけがまとめられていて便利です。
http://www.kanjijiten.net/center/index.html
読解
「資料」の一部として「文章」が示され、「設問」としての「説明(事項)記述」もあるのですから(必出ではありませんが)、その点では「現代文」の問題です。「文章」の内容を正確に読み解くことが最優先です。したがって、「論説文(評論文)」読解の「解法」を完璧に定着させ、応用できるようにしておきましょう。
発想
本学部の「小論文」は「アイデア提示型」が多いです。当然、独創的な「発想」が必要です。あらゆる可能性の中で、如何に説得力のある「視点」を提起し、具体的な「アイデア」を提示できるかが成否を分けることになるでしょう。つまり、これまでにない「ビジョンやコンセプトを創り出す力」や「ものごとを想像する力」、「仮説を論理的に思考する力」等が求められているわけです。したがって、常日頃から現在の様々な社会的課題に関して、如何なる画期的で具体的な「新たな解決策」を提示できるのか、研ぎ澄まされた問題意識を持つことが重要です。身近に溢れる情報を、そうした観点で批判的に捉え「発想力」を磨きましょう。
提示
「自分が持っているイメージ」を他者に的確に伝え、「自らのアイデア」を提示する「ブレゼンテーション」、そのポイントは「実現可能性」と「インパクト」です。前者では単なる画餅でないことを多角的且つ客観的に証明する「論述力」を磨くこと、後者では「図解」「キャッチコピー」等の「広告宣伝の手法」を習得することが重要です。当然、「他者を納得させることができる表現力」は不可欠です(2022年度の「出題意図」)。
論述
「見解」「アイデア」を的確に論じるには「構成メモ」の作成が不可欠です。脳内イメージを視覚化、客観的に捉える作業です。最重要な「論旨」、説明に必要な「論点」「視点」を無作為に記し、整理してチャート化します。その上で、「見解」等を「頭括型」の「論述」として各「要素」を取捨選択します。「序論」「本論」「結論」は「1:3:1」が基本です。こうした「構成メモ」の作成練習を重ねましょう。
「論述練習」では「添削指導」を受けることが必須となります。
推奨テキスト
ここからは、勉強に役立つテキストをご紹介します。テキストには相性がありますので、できるかぎり書店で手にとって確かめることをおすすめします。
「環境情報学」習得対策
(1)『環境情報学――地球環境時代の情報リテラシー』(大学教育出版)
環境問題には多様で複雑な要因が絡み合います。個々人が関連情報を収集・整理し、バランスよく思考することによって自身の意思決定に結びつけるための環境問題の情報リテラシーが解説されています。
(2)『コラボレーション!――SFCという「融合の現場」』(慶應義塾大学出版会)
研究領域を融合し未来的ビジョンを示す為に、SFCで何をしているかを説明しています。
(3)『角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャー』(KADOKAWA/角川学芸出版)
「プロトコル」や「ウェブ」など、インフラとしてのインターネットを知るための基礎知識を収録しています。本学部でも頻出の新たな「情報基盤」に就いての解説をしています。
(4)『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論(増補・改訂版)』(新曜社)
「ヒトにとって使いやすいデザインとは何か」に就いて詳説している。本学部の「過去問」でも引用された。
※尚、2017年度「過去問」に本学部(SFC)の一部の「研究会」の研究内容が紹介されている。
知識対策
(1)『漢字 一問一答【完全版】』(東進ブックス)
(2)『現代文最重要語句(暗記いらずの)らくらく練習帳―熟語・慣用句・評論語句・外来語』(学研プラス)
(3)『新版完全征服 頻出現代文重要語700 三訂版』(ピアソン桐原)
(4)『現代文キーワード読解[改訂版]』(Z会出版)
前項の「共通テスト(センター試験)の漢字問題」チェックで、5割未満の場合は(1)から、6割は(2)から、7割は(3)から、8割は(4)から始めるのが目安です。反復練習して完全習得しましょう。特に(4)では、「キーワード編」のみならず「頻出テーマ編」も熟読し、完全に理解しましょう。
見解論述問題対策
(1)『吉岡のなるほど小論文講義10(改訂版)』(桐原書店)
初級レベル。「小論文とは何か?」「どのように文章を組み立てたらよいのか?」という基
礎・基本を体系的に解説しています。入門から基礎力養成の一冊です。
(2)『資料と課題文を攻略して合格答案を書くための 小論文のオキテPRO』(KADOKAWA)
中級レベルです。入試で戦える「解き方」が身につきます。「小論文のオキテ」を習得でき、環境情報学部「見解論述」への完成度を高める一冊です。
(3)『小論文を学ぶ――知の構築のために』(山川出版社)
上級レベルです。「読みと書きの技術論」「小論文に必要な知の構築」「実践演習を通じての知の習得」の3部構成で、本学部で8割以上の得点ゲットをターゲットに据える一冊です。
(4)『小論文 テーマ別課題文集 21世紀を生きる〈改訂版〉』(駿台文庫)
最上級レベルです。「主要頻出テーマ」ごとの「論点整理」「キーワード解説」が充実しています。万全を期すための一冊です。
(5)『慶応大学環境情報学部(過去問)』
最終レベルです。数多く解き、環境情報学部合格への仕上げをしましょう。
※尚、本稿では[読解力対策編][説明(事項)記述問題対策編]は紙幅の関係で割愛しました。不安な諸君は本サイトの「慶應義塾大学総合政策学部対策」をご参照ください。
発想、提示、論点、視点対策
(1)『システム×デザイン思考で世界を変える――慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP社)
イノベーション創出のためのまったく新しい方法論「システムデザイン・マネジメント(SDM)」の考え方、手法、活用事例を集約した決定版テキストです。「発想」のヒントが満載です。
(2)『プレゼンテーション・パターン――創造を誘発する表現のヒント』(慶應義塾大学出版会)
聴き手の発想や発見を誘発する「創造的プレゼンテーション」の秘訣をまとめています。「プレゼンテーション」とは単なる伝達ではなく「創造の誘発」であることが理解できます。
(3)『キーメッセージのつくり方――「想い」を言葉化する』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
人を動かし、商品を売る「言葉づくり」の教科書です。「広告表現」を習得できる1冊になります。
(4)『文藝春秋オピニオン○○✕✕年の論点100』(文藝春秋/毎年11月発売)
毎年の日本の様々な「争点」が多角的に提起されており、「論点」「視点」の捉え方を習得できます。「時事対策」にもなる一冊です。
(5)『ニューズウィーク 日本版』(CCCメデイアハウス/週刊)
「政治」「経済」「国際情勢」などのグローバルな「視点」を磨くのに便利です。
※尚、新聞は毎日通読し、未知の内容や気になる記事はスクラップしましょう。また、様々なメディアの「広告表現」を、「私だったら」という視点で比較検討することも重要です。
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