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<番外編> 総合戦術実践検証(古文・漢文含む)~2014センター試験を題材に~

  • 「国語」は本来縦書きですが、レイアウトの都合上、横書きとしました。御了承下さい。

「大学入試センターは6日、1月に実施したセンター試験の本試験の最終集計結果を発表した。古文が源氏物語から出題されるなどした国語の平均点は、200点満点で98.67。過去最低だった昨年の101.04点を2.37点下回り、初めて5割を切った。国語では13年ぶりに満点の受験生がおらず、195点が最高点……」(2014.2.7朝日新聞)。ほぼ1年前、「本稿第三章」冒頭、「『センター試験、国語の平均点は過去最低』、2013.2.7、新聞各紙の見出しだ。2013年度『国語』の平均点は101.04、前年度比−17で過去最低という衝撃の結果だった。『鵺』の飛来か……」。
何ということか。2年連続で「センター試験国語」が新聞ネタとなるとは。しかも、平均点過去最低更新とは。これは何とかせねば。というわけで、本章では「番外篇」として再び「センター試験」対策を考えてみたい。

先ずは「基本のおさらい」から——。

そもそも「センター試験」とは何か?

① 誰もが知っている? 基本の「キ」、イロハの「イ」⇒大学入試の必須アイテム!!

「センター試験」とは「大学(短期大学を含む。以下同じ)に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的とするものであり、国公私立の大学が、それぞれの判断と創意工夫に基づき適切に利用することにより、大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等を多面的に判定することに資するために実施するもの」(「大学入試センター」HPより)と定められている。「センター試験」に参加する大学数は年々増えており、2014年度は国立82大学、公立81大学、私立521大学、合計684大学(短大は公立16短大、私立143短大、合計159短大)。全大学数は国立86大学、公立83大学、私立601大学(平成25年5月1日現在・文部科学省発表)なので、国公立大学の約96%、私立大学の約87%が参加していることになる。

② なにが?どうして?どのように?⇒大学入試の名バイ・プレイヤー!!

大学入試での各大学の「センター試験」利用方法は、およそ以下のようなタイプがある。センター試験単独型(センター試験の結果のみで合否判定。国公立大学の約3割、私立大学の約8割強で採用)。 センター試験+二次試験型(センター試験の結果と2次試験の結果を合計し合否判定。ほとんどの国公立大学で採用。 「足切り」が行われる場合もある)。センター試験併用型(センター試験の結果と学校独自の試験の結果を合計し合否判定。多くの私立大学で採用)。センター試験(傾斜配点)+2次試験型(センター試験の一部の科目のみを採用し、かつ本来の点を75〜25%程度に圧縮した上で二次試験の結果を合計して合否判定。一部の国公立大学及び私立大学で採用)。センター試験独立利用型(センター試験の結果は第一段階選抜にのみ利用、2次試験の結果だけで最終的には合否判定。一部の国公立大学及び私立大学で採用)。

③ スタートダッシュでペースメーカーに⇒大学入試の重要メルクマール!!

例年、センター試験は1月の20日前後に実施される(因みに2015年は1/17・18の予定)。 多くの受験生にとってその年度最初の「入試本番」となる。その結果は、前述のように合否に直接影響することは勿論だが、それだけではなく、その後の「2次試験」や「一般入試」へ向けての大きなメルクマール(指標)ともなる。更に、メンタル面でも重要であることは言わずもがなだ。高得点を獲得できれば、その後の試験を前に優位に立てることは当然だ。また、例えば「2次で少し失敗しても十分勝てる!!」といった余裕を持った心理状態になれば、待ったなしの最終決戦に臨む際も余計なプレッシャーを感じず、持てる実力を存分に発揮できるはずだ。場合によっては、センター試験の結果だけで憧れの難関私立大学の合格を手にすることも可能だ。加えて、国公立大学では、推薦・AO入試にセンター試験を取り入れている大学も少なくない。要するに、国公立大学、私立大学を問わず、一般入試、推薦・AO入試を問わず、どの受験生もセンター試験を無視することはできない。そこで高得点を獲得できれば、受験の選択肢も増え、成功の可能性を大きく高めることができるのだ。

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センター国語」への戦略と戦術

① 「8割」が難関大学合格へのターゲット

様々な志望校を考慮した場合、センター試験ではできれば「8割」(医学部の場合は「9割」)をゲットしておきたい。難関大学での合否の分岐点となる目安だ。これを突破できるかどうかで、可能性が大きく変わってくる。
平均点「6割」に難易度設定されているセンター試験では無論、容易い数字ではない。しかし、センター試験を意識した「戦略」と「戦術」を構築して着実に学習を進めていけば、必ずや突破できる。

② 「1万4千字の壁」へ孤高のアタック

遂に平均点が5割を切ってしまった2014年度の「センター国語」。何がこれほど受験生を苦しめたのか。要因は何か。「古文」に初めて出題された「源氏物語」が槍玉に挙がっている。2013年度の小林秀雄の評論「鐔」に引き続き「初出」がネックだったということか。確かにそうした側面もあろうが、果たしてそれだ
けか。そもそも「初出」は得点できないということでは「戦術」の立てようもない。実際の受験者に色々と確認してみると、「時間が足りなかった」という声が圧倒的に多かった(これまでも「時間不足」は指摘されていたが、2014年度は「悲鳴」にも近かった)。「80分」という試験時間で「現代文」(「評論」or「随筆」と「小説」)「古文」「漢文」の大問4題を解く。問題文の総文字数は例年1万数千字(2014年度は約1万4千字)、設問数は全36問(例年ほぼ同じ)、どう考えても至難の業だ。如何に攻略するか?

③ 「時間配分」と「解答順」でブレークスルー

「ニコ」「ニコ」「イコ」「イコ」がひとつの目安
大問1・2は各「25分」、大問3・4は各「15分」が「時間配分」の理想的な目安だ。受験生各位には、先ず時間を気にせずに過去問を解いてみて、どの設問にどの程度の時間がかかるのかを把握して欲しい。その上で、「目安」を参考に各自の大問別「時間配分」を設定しよう。但し、その際に「得手不得手」「好き嫌い」を過度に意識してはいけない。何故なら、自らの主観的判断と客観的な「得点力」は必ずしも一致しないからだ。特に、苦手意識を持つ受験生が多い「古文」「漢文」は、実は「鵺なる現代文」よりも遥かに効率的に得点できることを心得よ。

「KGK」で彼方(K)の極楽(G)が此方(K)へ——「G」をグッとこらえ、「K」でカッとばし挟みこめ!!
「解答順」は「漢文⇒現代文⇒古文」が基本だ。「漢文」は「基礎的要素」さえ習得すれば短時間で高得点が期待できるので、最初にさっと解く。次に、一定の時間をかけることで正答率が上がる「現代文」にしっかりと取り組む。
残りの時間は「古文」だ。全てをクリアするには通常では難易度が高い。「語彙」「文法」等の「基礎的要素」で効率的に得点できる設問を見定めて、失点を最小限とする。そして、最終盤。ここで忘れてはいけないことは「数分の余裕」を残しておくことだ。自らの「答案」を最終チェックする必要がある。これを怠っては、画竜点睛を欠く。「マークミス」等のケアレスミスは侮れない。致命傷にもなり得るのだ。

「ベースロード」で「ファンダメンタルズ」を固めろ!!
各々の大問では、「基礎的要素」である「知識問題」から得点を固めていきたい。例年、「知識問題」のおおよその配点は、第1問(「評論」or「随筆」)の問1(漢字)、第2問(「小説」)の問1(語義)、第3問(「古文」)の問1(語義)・問2(文法)、第4問(「漢文」)の「語義」と「句法」「白文訓読」を合計して60~70点程だ。これらは「基本的知識」さえ定着していれば難なく解答できるので素早く片付ける。また、2006年度以降、「表現」に関する設問が一貫して出題されている。これらも、知識としての「表現技法」や「論述構成」、「事実関係」の正否で解けるもので、確実に押さえたい。第1問(「評論」or「随筆」)・第2問(「小説」)・第4問(「漢文」)の各設問合わせて、22~24点程度の配点だ。更に、第3問(「古文」)で例年出題される「部分訳」設問(7~8点)、これも「文法」と「語義」で選択肢の消去が可能なので、優先的に解答しておく。ここまでで合計89~102点程度。残り60~70点程度 (設問数8~9)の勝負となる。「解法」を応用して適切に時間をかければ正答率がアップする「現代文」を中心にして点数を積み増していきたい(「現代文」の具体的「解法」に就いては「本稿第三章」参照のこと)。

2014「センター国語」で「戦術」実践検証!!

では、実際に上述の「戦術」が通用するのかを確認するために検証してみたい。「時間配分」はここでは再現不可能なので、誰でも習得する筈の「基礎的要素」である「基本知識」でどこまで得点できるのかを試してみる。但し、「現代文」に就いては前述の通り「本稿第三章」で「解法」を検証しているので、「漢文」と「古文」のみを扱う。検証素材は無論、2014年度「センター国語」。下のリンクからダウンロード可能。

http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/center/14/index2.html

① 「漢文」は「知識」をコンテクストにアダプトせよ!!

先ずは定石通り「漢文」から攻める。大問4の問1「語義」。(1)は「習」。 選択肢①~⑤を概観して②(「弊習」)のみ異質(ということは「正答」か「消去第一候補」)だ。「原意」(「習」自体に「弊」の含意はない)を考えて即消去(いいよね?)。 残りでは、①(「学習」)③(「習得」)⑤(「習練」)がほぼ同義で、④(「習慣」)のみ異質(同上)。 直後の一文を書き下すと「春ノ時ニ方(あ)タル毎ニ」となるので、瞬時に④が「正答」だと判断できる。(2)は「尚」。 頻出の訓読みとして「たっとぶ」が定着していれば何の問題もない。ストレートに③が「正答」だ。 仮に忘れていたとする。前後の文脈から、「甘」と「苦」を対として対比しているのは明らか(「置字」の「而」もある)。 更に、前文は空所(問3)となっているが、次文では「貴」と「賤」が対となっている。誰が判断しても対応関係は明白であって、「甘」=「貴」となるはずだ。次に問2「白文訓読」。 傍線部Aの中で基本的な語彙である「以」「不」「方」に注目する。選択肢①~⑤ですぐに気付くのは、「方」を訓読み(「助字」用法ということ)しており「まさニ」か「ならブ」のどちらかになっている。 勿論、「ならブ」はあり得ないので、②③⑤に絞れる。今度は基本的「句法」の「単純否定」となる「不」で消去。語順を考慮すれば、③の「靳(と)らずと目す」は外してよい。残るは「以」。 ②は「助字」用法の「単純接続」、⑤は目的語を伴う「動詞」(「手段として用いる」という語義)として扱っている。(注)にある
「清嗜」の意味や文脈を考えると、⑤が「正答」だと分かる。 3問目として問4「句法」。 傍線部Bの中で、「返り点」の付された「猶」は、誰もがお馴染み典型的な「再読文字」(「なオ~ごとシ」という読み)で、「句法」では「比況形」(~のようだ)。 従って、選択肢①~⑤では⑤しか残らず、即座に「正答」だと判明する。 問5も「白文訓読」
上記のようなやり方で絞り込んでいく。傍線部Cの中の「莫」に着目、選択肢は「単純否定」(「莫し」)か「禁止」((「莫かれ」)、後者は不自然なので①③⑤が残る。次に、「貴」と「賎」、「取」と「棄」に注目、文脈上の対応関係を考慮すれば①⑤は消去され、③が「正答」だと分かる筈だ。 さて、ここまで「基礎的要素」で4問解き、29点を獲得した。後は時間次第だが、残り2問は可能だ。問3「空所補充」から(本問とは違うが「漢詩」では「押韻」で単純に絞れる場合等が多い)。 「苦」と「甘」という対の関係の補充だ。Ⅱの前に「而ルニ」と「逆説の接続詞」があるので、③⑤は消去。Ⅰは「棄テラルル」ので文脈上「苦」となり、②も消去される。ⅢとⅣでは、Ⅳが「棄テラルト雖モ」なので①が「正答」となる。最後に問6「論述構成」。 要は、三つの意味段落に分けろということだ。「江南」の具体例は○アで終わっているので、選択肢③④⑤は消去。 残り○エ○オはどちらで分けるか。○オの文頭「夫レ」(「それ」)は基本的な語彙で、「そもそも」「いったい」という語義の「助字」用法だと分かり、ここから「まとめ」になるので、①が「正答」だ。これで「漢文」は7問中6問を解きタイムオーバーだ。 合計42点、上出来だ。

② 「古文」は「文法」がライフライン!!

次は大問3の「古文」。 センター初の「源氏物語」。 確かに読みづらく、背景も分かりにくい。最初に必ず意識しておきたいものは、大問に記された「前説」(本文全体の説明)と最後に付されている「(注)」だ。設問を解く上で間違いなく大きな手がかり、ヒントとなってくるのだ。では、問1「傍線部解釈」(「語義」+「文法」)。(ア)では後半の「なめげさを見じ」に着目、「じ」は「む」の打消しの助動詞、前後から「一人称」だと分かるので意味は「打消し意志」と容易に判断できる。ということで、選択肢②③は消去、また、「見じ」を「使役」では訳せないので「見せずに」の④も消去できる。そして、「なめげさ」だ。 「重要古文単語」である形容詞「なめし」・形容動詞「なめげなり」が定着していれば「無礼」という語義で、さもなければ、「なめげさを」の格助詞「を」の直前は当然「目的語」となるということで、①(直前を「補語」として訳している)を消去し⑤が「正答」となる。(イ)では文末の「めり し」に注目、文語文法の基本を用いて、「伝聞」「推定」の助動詞「めり」と「過去」の助動詞「き」の連体形「し」に品詞分解できる。因って、選択肢②③④は即消去。そして、文頭の「らうたげに」は誰でもが知っている「最重要古文単語」で「かわいらしい」の語義なので⑤を消去して、①が「正答」となる。(ウ)では連語の慣用句「いざ給へ」(「さあいらっしゃい」の意味)を覚えていれば何の問題もないが、知らなくても感動詞「いざ」を「まあ」とは訳しようがないので選択肢①②③は消去。後は文脈から判断して、④を「正答」とできる筈だ。次に問2「文法」。 aの「なめり」は頻出の必須連語だ。「断定」の助動詞「なり」の連体形「なる」+「伝聞」「推定」の助動詞「めり」で「なるめり」、その撥音便「なんめり」の「ん」が無表記となったものなので、選択肢②④を消去。 bも定番助動詞の「る・らる」だ。直前に「心情語」の「驚か」(「驚く」の未然形)があるので意味は「自発」、故に①は消去。cの「て」は助動詞か動詞の語尾かだが、「完了」の助動詞「つ」の未然形「て」(直後の接続助詞「ば」は未然形か已然形接続なので)と考えた場合、連用形接続となり直前の「のたまひは」が説明できない。ここは素直に「のたまひ」+「はて=果て」(下二段活用の動詞「果つ」の未然形→文末に「意志」の助動詞「む」があり、直後の接続助詞「ば」は「仮定条件」になるので)と考える他ない。因って、⑤が「正答」となる。続いて問3「傍線部説明」。 これは「重要古文単語」である「心苦し」の語義(「かわいそうだ」「気の毒だ」「気がかりだ」)で瞬時に選択肢①②④を消去できる。
その上で「誰が」だが、傍線部Xの一文は「大将殿も聞き給ひて」から始まっており主語は勿論「大将殿」で、③が「正答」となる。ここまでで27点、残り時間は少ないが、後1問は取っておきたい。狙いは問5「会話文説明」。 会話主の特定が鍵となる。特定し易いのは会話文Aだ。会話主は「かかる人(=「若君たち」)」を「置き給ひて」と「恨み申し」ているので、当然「大将殿」であり、選択肢③は消去。 更にAの冒頭に「今さらに若々しさの御まじらひや」とあり、「若々しさ」に論及していない②も消去。次に会話文B。会話主は無論「三条殿」で、「身なれば」「直るべきにもあらぬ」のは自分自身のことなので、選択肢⑤を消去する。 最後に会話文C。会話主は無論「大将殿」だが、文脈を考えても選択肢④にある「私の名誉も考えてほしいと頼んでいる」とは一切読み解けない。
従って、①が「正答」。ここで終了。2問を残して、合計35点、良しとしよう。

以上、2014年度「センター国語」の「漢文」「古文」に就いて前述の「戦術」を実践検証してみた。「30分」という枠の中で、難関大学を志望する諸君が習得すべき「基礎的要素」を用いて解答。 結果は合計77点、「8割」目標で残り80点強。 「現代文」での獲得は十分に可能な数字だ。「本稿第三章」で提起した「解法」を確実に習得し、的確に応用すれば何ら問題はない。風評に臆することなく、果敢に挑んで欲しい。

ということで、次章の「予告篇」。 今度こそ、[高度解法(記述設問中心)Ⅱ](東大以外の旧七帝大対応)。

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