麻布中学校 入試対策
2017年度「麻布中学校の国語」
攻略のための学習方法
知識
「知識」は一朝一夕には身につかないので、地道な努力が必要となる。先ずは「語彙力」。麻布志望者はなぜか「語彙力」がないという傾向があるので、油断せず取り組んでほしい。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や分かりづらい言葉の意味等も押さえておきたい。
また、過去問や演習問題を実施する場合、問題文中の語彙で「読み・書き・意味」のいずれかがあやふやなものがあったら、書き出して自分なりの「言葉ノート」を作成しておくといい。そこには自分が分からない言葉がたまっていくので、折に触れ確認し定着させていく。入試当日に持っていけば、「お守り」にもなる。
これらの「語彙力」は読解力につながるだけではなく、「記述」の際にも当然重要だ。特に、定番である「心情記述」を考えると、「心情語(心情表現)」に磨きをかけておきたい。「心情語」に限れば、テキストとしては「言葉力1200」(学研)がオススメ。
次に、「文法」。塾でも学習しているはずだが、定着していない受験生が多い。「文法」そのものが出題されることはないが、「記述」には不可欠なのであなどってはいけない。日本語として「文法」的に正しい文でなければ減点されるし、そもそも内容が正確に伝わらないからだ。特に、「文節の相互関係」や「付属語」(「助詞」「助動詞」)の用法を確実に定着させておくことが重要だ。
速読
大学入試にも匹敵する分量の問題文を読まなくてはならない。多いときには8000字程度。しかも、解答時間は40分。当然、「速読」が求められる。しかも、設問を解くために読むのだから通常の「速読術」を使うわけにはいかない。
出題は「小説」に限られているので、それに応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックしつつ、ざっと読んでいく。「人物関係」「家庭環境」等の「状況設定」が複雑なものが多いので、前半はしっかり読みたい(「状況設定」は前半に述べられていることが多い)。
また、「心情」把握のために、「会話文」「地の文」それぞれの「心情表現」中心に押さえていく。これらのコツは塾でも教えてくれるはずだし、自分から聞いてみてもいい。
その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。麻布だけでなく、他の学校の入試問題も読んでおきたい。特に、少年・少女の成長物語で、「自立」「自由」「自分探し」といった哲学的テーマのものを選ぶといい。練習あるのみ。
そうして、最終的には分速600字以上(できれば650字以上)で「速読」できるようにしておきたい。
解法
「小説」特有の「解法」。そして、全ての文章に共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。特に、「心情に関する設問」がとても多いので、徹底的に習得しておきたい。
たとえば、「心情をめぐるスクエア」(「心情」は「セリフ」「ト書き」「動作」「情景」という4つの要素から多角的に読み取るという「解法」)等は必須だ。塾での練習問題、答え合わせをして解説を聞き、納得したからそれで終了、ではいけない。必ず「考え方」の道筋をなぞっておくことが重要だ。特に、間違った問題は宝の山。解き方の過程のどこで誤ってしまったのか? その分かれ道をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことが、同じ間違いを繰り返さない秘訣だ。
さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する解き方を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書きとめた自分なりの「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
記述
「記述」は麻布の最大の合否ポイントだ。先ずは「文を記す」ことに慣れる必要がある。最初は時間がかかってもいい。いやがらずに、とにかく「書く」。そして、書いた「文」は必ず誰かに読んでもらうこと。「文法」等正しい日本語の「文」になっているか、言いたいことが正確に伝わっているかどうか等を確認しなくてはいけない。
何を「書く」か。「小説」の練習問題にある「記述設問」はもちろんだが、その「小説」の「要約」を「テーマ」中心にまとめてみるのがとてもいい方法だ(麻布定番である最後の長文記述はその作品の「テーマ」に関する設問が多い)。100~150字程度で書いてみる。無論、内容は塾の先生に確認してもらう。「要約力」は文章内容の「理解力」にもつながるので一石二鳥だ。
次のステップとしては、「字数の感覚」を身につけること。書きたい内容は何文字くらいになるのか? 解答欄を埋め始めてから「過不足」を後悔しても遅いし、下書きしている時間もない。だからこそ、「字数の感覚」が重要だ。その際、10~20字程度をひとつのブロックとして考えるといい。「記述設問」で得点を左右する「重要なポイント」は、1つ当たりその程度が目安だ。マス目のある原稿用紙を使って、自分が書きたいポイントがその範囲に収まるようになるまで何度も練習すること。
ある程度「感覚」がつかめたら、「マス目のない解答欄」にもチャレンジ。1行ほぼ30字程度なので、「2行枠」なら3つ程の「ポイント」。「最重要ポイント」を文末にして、他の「ポイント」を下から積み上げていくように記述する訓練をしていく。「心情記述」「比喩換言記述」「情景説明記述」がよく出題されるので、それらを中心に練習しておきたい。
意識
重要ことは、常に何かを「意識」しながら学習することだ。何となく机に向っていてもダメ。その時々、何を目的として学習しているのか、具体的に「意識」し続けていることが大切だ。そうして何かを「意識」することができるようになったら、次は同時にいくつかのことを「意識」するようにしたい。麻布の問題では特に「設問」どうしが関連していることが多い。そのことを十分に「意識」すること。
また、「設問」を正しく理解しているか? 「条件」を満たしているか? つまらないミスはないか? といったようなことも、問題を考え、解き、解答欄に答えを書き入れるいくつもの段階で常に「意識」している必要がある。入試本番では、見直しの時間はないと思った方がいい。常に「意識」しているということは、何度も「見直し」をしていることになるのだ。
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2017年度「麻布中学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
出典は吉野万理子「ロバのサイン会」(文字数約8000字)。旅するロバが出会った8つの優しい物語の1編だ。
小問は全13問(解答数17)、内容は「説明記述」(10問)、「選択肢」(2問) 「抜き出し」(1問)、「漢字書き取り」(4問)。
問題文は11分ほどで読み切り、設問を50分弱で解きたい。
✤
本小説は、テレビ番組で人気の旅するロバ「ウサウマ」の猫・イルカ・シカ・イグアナ・インコ・蝶・犬との出会いを通して、「愛すること」「生きること」をハートフルに描いている。
本文は、野生のシカの「おれ」(「サンカク」)と「マル」、そしてリーダーの「アニキ」が人里にて食べ物を探しに行くが、「アニキ」は途中で人間に殺されてしまい、その後「ウサウマ」と出会って奈良公園を目指すことになる姿を描いている。
設問のほとんどが「理由説明」と「心情説明」だ。「同一場面」の「文脈」を正確に読み取り、的確に説明する「記述力」が合否のポイントとなる。以下、具体的にいくつかの設問を検討してみたい。
大問一
- 難度:標準
- 時間配分:60分以内
- ★必答問題
[問一] 「知識」(漢字の書きとり)
「手間が省ける」「横暴な」「人間を傷つけ」「厳しい」の4題。
例年通り、平易な漢字だ。本校志望者は、当然全問正解できなくてはいけない。
[問二] 「読解」(理由説明記述)「理由説明記述」(字数指定なし。解答欄2行。1行=25~30字程度。以下同じ)。傍線部①「人間がご飯をくれて、仲良くできるところがある? 信じられない」について、「おれ」がこのように思うのは、「どのようなことがあったからか」を説明する。
先ずは直前直後の文脈に着目する(「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」が大原則)。
「ウサウマ」の「人間とシカはうまくやっていた」「人間にもらったご飯を食べてる」「人間にとっても大切にされてる」といった話を、「おれ」は「信じられない」と思っていることが分かる。
そして、その直前のやりとりに、「人間に追われててね。あいつら、最低だ。アニキを殺しやがった」「このあたりでは、シカは害獣なんだね」という「おれ」の言葉がある。
ということは、「害獣として人間に追われ、アニキが殺されたこと」が「信じられない」ことの「理由」につながっていと判断できる。
しかし、「解答欄」を考えるとこれだけでは「説明」が不十分だ。どうする?
「前説」に注目したい(「前説」は問題を解く上で必要なので説明されている。絶対に無視しないこと)。
「人里に食べ物を探しにいきます。人間に見つかってにげる途中、『アニキ』は車にひかれて命を落としてしまい」とある。これも踏まえて、字数に応じて「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「人里に食べ物を探しにいって、害獣として人間に追われ、見つかってにげる途中にアニキが車にひかれて殺されたこと。」(54字)といった「答え」になる。
尚、「理由説明」ではあるが、「どのようなことがあったからか」と問われているので、「~から。」ではなく「~こと。」で終わること。「文末」は必ず「設問」に合わせよ!!
[問三]「読解」(理由説明記述)。 傍線部②「ありったけの勇気を振りしぼらなければ、この山をはなれて行くことなんてできない」について、「おれ」がこのように思うのは「なぜか」を説明する。
直前直後を確認する。直後に「角が抜けたのも大きかった」、その「角」は「心を守る武器」で「失ってから、果てしなく心細くなった」とある。
そして、「この森にいる限りは、みんな同じ条件」だが、「ナラコウエンはどうだろう?」、「気候」や「住むシカの種類が違って、角が抜け落ちないかもしれないではないか。その地へ入りこんで行くなんて、無謀すぎやしないか?」と「おれ」は自問している。
こうした「心情」が「ありったけの勇気を振りしぼらなければ、この山をはなれて行くことなんてできない」ことにつながっていると分かるはずだ。
後は、「過不足なく」まとめていけばいい。
たとえば、「気候やシカの種類が違うかもしれないナラコウエンへ行くのは無謀だし、心を守る武器の角が抜け果てしなく心細くなっているから。」(60字)といった「答え」だ。
本文で説明されている「要素」は全て確認し、的確にまとめることが重要。
[問九]「読解」(心理説明記述)。 傍線部⑩「本当ならありえないんだろうね。でも、初めて角が生えたときから、毎年だからなぁ。慣れちゃった」、傍線部⑫「ボク、そういう世界も見てみたいなぁ。でも無理。ナラコウエンに守られてるって自分でもわかってる」について、これらの部分から「フレンドリー」が「どのような思いをいだきながら、『ナラコウエン』で暮らしていたことがわかるか」を説明する。
同時に「2つの傍線部」について問われている(本校の大きな特色のひとつだ)。無論、両方からしっかりと「要素」を捉えることが肝要だ。
先ずは傍線部⑩の直前直後を確認する。人間によって「角」を切られることについて、「角をうばわれるなんて」「こんなにはずかしいことはない」「フレンドリーはそれでいいのかよ?」という「おれ」の問いに対する「フレンドリー」の答えで、さらには「大事なルールなんだ。ここで生活するための」とも述べている。
次に傍線部⑫、「おれ」たちが「気ままに育ってきた」遠くの「森」について、「そういう世界も見てみたいな」「でも無理。ナラコウエンに守られてる」と語っていることが分かる。
つまり、「フレンドリー」は「人間に角を切られる」ことは「本当はありえない」と分かっており、「シカが気ままに暮らす森」も「見てみたい」が、「初めからナラコウエンで暮らし、ルールを守って生活することにも慣れ」「人間に守られていることも分かっている」ので、「森で暮らすこと」は「無理」だと「あきらめて」いるわけだ。
以上を字数に応じて「過不足なく」まとめていきたい。
たとえば、「角を切られるなどありえないと思っているしシカが気ままに暮らす森も見てみたいが、ルールを守って生活することにも慣れ人間に守られていることもわかっているので、しかたがないとあきらめる思い。」(92字)といった「答え」になる。
「状況」を的確にとらえ、そこから「心情」を読み取ること。尚、「いくつかの傍線部」について同時に問われている場合、無論それは「条件」だが、「ヒント」でもあると心得よ。
[問十一(1)] 「読解」(内容説明抜き出し)「内容説明抜き出し」(「3字」指定)。 傍線部⑬「おれは耳をすまして、太鼓の音を聞いた」について、「太鼓の音」は「何が行われていることを示すものか」を「文中から三字」で抜き出す。
「抜き出し設問」では、先ず「抜き出し内容」を特定し、その上で「抜き出し範囲」を絞りこんでいくことが肝要だ。
では、ここでの「内容」は何か? 直前から、「太鼓の音」は「人間がシカの角を切る祭り」を示すものだと分かるはずだ。
次に「範囲」だが、当然「同一場面」になる。ここでは「249行目」から「本文最後」までだ。
確認する。「260行目」に「ドドドはきっと太鼓だ」とあり、それについて次行で「角切りだよ」と説明されている。「内容」も「字数」も合致する。したがって、「答え」は「角切り」となる。
「抜き出し」では、必ず「抜き出し範囲」を絞りこむこと。当てもなく探していては時間の浪費だ。
[問十二]「読解」(内容説明選択肢)。 傍線部⑭「おれは立ち上がった。芝生におれの黒い影がうつる。長い角を振り上げた。影も動いた」について、このときの「おれ」は自分の「影」を通して「何を見ていると考えられるか」を答える。
傍線部の「原意」を根拠として(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)、「選択肢」を「消去」したい(「選択肢問題」は「消去法」が大原則)。
傍線部を確認する。「影」は「長い角を振り上げ」、そして、「動いた」。
各選択肢の「文末」はどうなっているか? 「選択肢」のポイントとなる最重要事項は「文末」にある。
(ア)「かつての自分の姿」、
(イ)「弱い自分の姿」、
(ウ)「思いなやんでいる自分の姿」、
(エ)「本来あるべき自分の姿」。
「長い角を振り上げた」⇒(イ)(ウ)は即「消去」、また、「動いた」のだから「かつての」となっている(ア)も「消去」できるはずだ。(ア)の前半の説明は「野生のシカとしてたくましく生きていく」で、これも問題ない。よって、「答え」となる。
「一発消去」だ。畏るべし「原意消去」、活用すべし。
攻略のポイント
●出題傾向は完全に確立しており、難易度もほぼ一貫している。合格ラインは35点ほど(60点満点/過去10年間の「合格者平均得点率」は60.3%)と推測できる。ちなみに、2017年度の4科目合計(200点満点)の合格者最低点は106点(53.0%)となっている。
●配点は「漢字」「選択肢」「抜き出し」が各2~3点、「説明記述問題」は各4~7点となっている。「漢字」「抜き出し」「選択肢」は平易なので、全問正解が基本。
「説明記述」では戦術を考える必要がある。先ずは各設問を概観し、どうにもピンとこない設問は「捨て問」にすること。勇気ある撤退は、結果として得策だ。
そして、答えられる設問でいかに減点をなくすかが課題となる。「ポイントとなる要素」を外さずに「過不足なく」記す必要があるが、「設問条件」が「ヒント」になっている場合が多いので、正しく理解することを常に意識していたい。
●制限時間は60分。問題文のボリュームは6000~8000字。いかに速く読み取れるかが勝負だ。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。
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