医大・医学部受験プロ家庭教師 産業医科大学 物理の入試対策と勉強法
医大・医学部受験専門プロ家庭教師が語る

産業医科大学 物理
入試対策と勉強法

特徴と時間配分

出題範囲(分野)

力学は毎年出題されます。残りは電磁気、波動が多いです。力学が2題のときもあり、熱力学が出されないこともあります。原子物理に関しては、一昔前は出題されませんでしたが、2017年にはX線・ブラッグの反射が出ています。今後も出るとして準備が必要でしょう。出題には独特の癖があり、出題者による独自のモデル設定がなされることが多いです。同じく一昔前は“理不尽”思われる難易度の問題も多かった。2020年に標準的な難易度となり、2021年と2022年は難化しました。誘導の仕方も独特で、エンジニアがするような計算をさせたりするので、細心の注意を払って臨みましょう。しかしだからこそ、1次通過のラインは比較的低いです。「取れる問題を取る!」いつの時代でも受験のこの鉄則は生きています。2020年の大問1はやや易の問題でしたが、大問全体が忍耐力を要する数値計算でした。焦らず落ち着いてこれを取ることが第一関門だった可能性があります。

出題量と時間配分

理科2科目100分です。分量は一見多くはないですが、通常の解法や計算法とは全く異なった方向へ誘導されることもあるので、解答までの距離感を見失わないように注意して解き進んでいきましょう。出題者の意図を短時間で的確につかむことが出来れば一気に解答できますが、誘導に乗り損なっても別ルートで後ろの問題が解けたりするので、とりあえず最後の小問まで最初に一通り見ておきましょう。

出題形式

2020年から大問4題となっていますが、過去には大問が2題のときも3題のときもありました。ひとつの大問は6~7問の連続した小問からなります。出題者が設定したモデルの説明部分が長いので手早く問題文を読んでいきましょう。よく知っている公式でも通常とは異なる形で表記されていたり、解答に使用できる文字が小問ごとに異なったりするので注意が必要です。確認してから解くようにしましょう。

解答形式

すべて記述式です。解答だけ記述する形ですが、定性的な問題でア~イから選べなどという問題も出ます。記述は解答そのものを書く形式と、誘導に沿って数式で穴埋めさせていく形式があります。穴埋めは長い数式の一部だけを入れさせることもあるので注意しましょう。出題者が設定した独自の定数を用いた数式を求めさせられることもあります。

攻略のポイント

本学の問題には独特の癖があります。難易度も揺れています。いわゆる典型題や良問を普段から解いている人は面食らってしまうかもしれません。今まで見たこともない設定の問題を見たこともない解法で解かされるでしょう。これがこの学校の特徴です。しかし、事前にあらゆる事態を想定し、準備しておくのは時間的にも労力的にも無理でしょう。考えられる対応策はただひとつです。どんな設定であってもどんな解法であっても誘導に乗って解く能力、その場で与えられた情況に対応して解答を進めていくことの出来る応用力を身につけることです。当然そんなことの出来る人はそれほど多くないので、合格点は低くなります。すべての問題を解き切らなくてもよいので、出題者の意図を考え、理解できた小問から着実に得点していくことを心がけましょう。また途中の誘導の穴埋め問題がわからなくても、その後の解答がオーソドックスな解法で求められてしまうこともあるので、そこを見逃さず得点していくことを心がけましょう。自分の土俵で相撲を取ることです。

第1段階:まずは教科書レベルの定着が基本かつ重要
言うまでもないことですが、教科書の内容の定着が基本かつ重要です。特に、本学の受験生たるもの、教科書は初めから最後まで、すみからすみまで熟読して、すべての例題や問を解くことは当然のことと考えましょう。
なにしろ「入試問題の出典」は原則教科書なのですから。あえて好みを言えば、第一学習社の教科書がおすすめです。教科書にある公式は、単位・次元を含めてスラスラと出てくることが必要です。既卒生は手元に無い場合も考えられますが、必ず教科書は入手しましょう。入試の出題の基本枠・原点の確認のために、さらに、図表や口絵、写真に至るまで目を通せば、力のある受験生も思わぬ発見や収穫があるでしょう。教科書の例題を見た瞬間、解法が浮かび、すらすらと解けるのがこの基準です。本学の受験者は既にこのレベルは問題ない場合が多いでしょう。また、ダブルチェックの意味で、教科書傍用の問題集として定番の『セミナー物理基礎・物理(いわゆるセミナー物理)』または『エクセル物理・総合版』の基本例題・基本問題を演習しストレス無く解ける基準を固めましょう。(ここで言う教科書とは「物理基礎」「物理」の両方のこと)

第2段階:次は入試物理の「標準」レベルの問題集を一冊マスターすること
『セミナー物理』または『エクセル物理・総合版』の発展例題・発展問題がこのレベルに相当します。
最低でも一冊を2周、できれば受験期も含めて3周以上して、大問の中盤くらいまではすらすら解けるこ
とが必要です。同時に1のレベルに上げた公式も、下記のようなものは何度も反復して自力で導出出来るようにしましょう。例えば、単振動、万有引力とケプラーの法則、力積と運動量保存則・エネルギー保存則、ドップラー効果、特に、光波の干渉、状態方程式とポアソンの公式などの近似計算があるものは何度も繰り返しましょう。公式の導出は標準以上の問題の攻略に大きな底力となるでしょう。

第3段階:次は何と言っても過去演習
近年の設定で見慣れないものというと、惑星を周回する宇宙船から惑星にワイヤー付きのアンカーを打ち
込みそれに沿ってゴンドラを上げ下げするもの、直立した人体の水平方向の重心移動を測定する「重心動
揺計」、蜃気楼のメカニズムを光波の屈折によるモデル化によって求めるもの等があります。威圧感があ
り、一筋縄でいかないでしょう。一方で、単振動や振り子、コンデンサー回路など見慣れたものもあります。
本学が物理に求めるものは、「見慣れない設定の問題も含めて標準レベルまでの問題に、思考力問題、数値
計算もすべて手早く正確に処理できること」と考えられる。過去問演習によって、一部の面倒な問題をス
キップしても時間内に合格想定ラインを確保できる感覚を磨くことが、本学合格のカギなるだろう。

推奨テキスト

(1)『教科書』(各出版社)

第1段階用です。
教科書はなければ合格できないというものでもなく、これさえマスターすれば合格というものでもありません。
しかし、教科書が入試の出典の原点であることは強調し過ぎということはありません。各種公式・法則の導出過程やさまざまなカラーの図式・写真などだけでも相当の価値があるでしょう。

(2)『セミナー物理基礎・物理(セミナー物理)』(第一学習社)
(3)『エクセル物理・総合版(エクセル物理)』(実教出版)

第1段階用です。
セミナー物理、エクセル物理は、定番の教科書傍用の問題集です。教科書の例題とともにこの基本例題、基本問題をマスターするのが第1の段階です。セミナー物理はとても良い問題集ですが、市販されていないのが難点です。
入手が困難なら、エクセル物理で十分です。重問も大定番の市販問題集です。セミナーやエクセルの発展例題、発展問題が大丈夫なら、重問にトライしましょう。少しずつ入試問題も更新されていて、しっかりとした内容です。

(4)『物理のエッセンス(力学・波動および熱・電磁気・原子)』(河合出版)
(5)『良問の風』(河合出版)
(6)『名問の森』(河合出版)
(7)『漆原の物理・明快解法講座 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
(8)『漆原の物理・最強の99題 四訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)

第2段階用です。
教科書と上記の二つの問題集を理解するために必要な物理の思考回路を磨くための参考書兼問題集が『物理のエッセンス』または『明快解法講座』です。エッセンスは文字通り、一言一句、エッセンスというべき内容が凝縮しています。名著と言えますが、エッセンスだけに行間を埋めてくれるチューターがいた方が良いかもしれません。明快解法講座は解法を徹底的にパターン化してくれます。エッセンスと明快解法講座はその意味で両極かもしれません。だからこそどちらも試してみれば、日医の物理を攻略するために必要な、物理的な物の見方、思考回路を開いてくれるでしょう。エッセンスは『良問の風』『名門の森』、明快解法講座派は『最強の99題』を解きましょう。

(9)『Z会 物理 入試の核心 難関大編50題』(Z会)
(10)『物理標準問題精講』(旺文社)
(11)『難問題の系統とその解き方(難系)』(ニュートンプレス)
(12)『難問題の系統とその解き方 新装第3版 』(ニュートンプレス)
(13)『実戦 物理重要問題集2022 物理基礎・物理(重問)』(数研出版)

第3段階用です。
余裕のある受験生やより上位の私立医大、国立医大などの超難関校の医学部と併願する皆さんは、過去問演習をやりながらこれらの問題集に取り組みましょう。また、苦手な単元や問題にぶつかった時は、類題を5題探してやると効果的です。類題の宝庫としては、同じ『入試の核心』シリーズの『標準編100題』を併用するのもオススメです。全部こなすのは無理としても、類題演習のためにもあると良いでしょう。

 

テキストは相性があります。できれば書店で手にとって選びましょう。

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