慶應義塾女子高等学校 入試対策
2020年度「慶應義塾女子高等学校の英語」
攻略のための学習方法
慶應女子高校の英語入試問題を攻略するための勉強法について考えてみたい。レベル的には非常に高いので、以下の内容をしっかりと理解し日頃の受験勉強に役立ててほしい。
① 英検2級に匹敵する程度の英語力
合格に必要な英語力としては、最低でも英検準2級、できれば2級に匹敵するレベルが欲しいところではある。単語力・イディオム力はいうまでもなく文法事項としては、関係代名詞、仮定法、話法、比較、文型、準動詞は高校レベルの文法書で内容を確認してほしい。
特に、文型については「子の英文は第何文型ですか」などのような問題は出題されないが、大事なことは文要素(SVOC)になり得る品詞は何か、つまり主語になり得る品詞は名詞・代名詞およびそれらに準ずる句・節である、という知識をしっかり理解することである。
難解な英文において散見される「倒置構文」における語順である「S+V+修飾語句」を「修飾語句+V+S」になった場合に、文要素には該当しない「修飾語句」が単純に「V」の前にあるからと言って、主語になるという判断はおかしいという決定ができなければならない。
そのためにも、文要素になり得る品詞に関する文型知識が必要である。
② 下線部訳における日本語訳出の工夫
下線部訳におけるポイントは、「日本語訳出上のこなれた日本語」の使い方における工夫である。
いくつか具体例を挙げてみる。
主語が人間などの生物以外の文章を「無生物主語」文章という。例えば、‘The experiment showed that ~ ’という英文において、「その実験は~をしめした」という訳を「その実験によれば~ということが明らかになった」という具合に、無生物である主語を「目的・手段」に変換させて訳出を行うことでより日本語らしい、つまり「分かり易い日本語」の訳になるのである。
また、‘some people did ~’という英文を「何人かの人々は~を行った」と訳しては‘some’のニュアンスを正確に反映していない訳になってしまう。‘some’は具体的な「数量」を表すものではないので、そのような英文については「~した人もいた」としなければならない。
③ 複数の意味を持つ英単語の根本的な意味
過去の大学入試問題にこのような問題が出題された。
英文の内容としては、紀元前における氾濫を繰り返していたエジプトのナイル川に関する文章であった。氾濫によって毎年のようにその「流れ」が変化する状況について述べた後で、‘the natural line’の‘natural’に下線が引かれ5個ある選択肢のなかで同様の意味を有する単語を選ばせる問題が出題された。
当然ながら当該文章における‘natural’に「自然な」という意味はあてはまらない。設問全文をここに引用することはできないが、要旨としては、氾濫で流れが目まぐるしく変容するナイル川の‘natural’な流れについての設問である。
そもそも‘natural’とは「人為的にいまだに手が付けられていない状態」のことを指しているのであるから、そこから「本来的な、根本の、原初の、最初の」というようなスタート時点での状況を指し示す意味を有するのである。
したがって、上記入試問題における‘natural’の意味は、「氾濫を繰り返す前の元来のナイルの流れ」を指し示すものである。そのような理解ができれば、選ぶべき選択肢は‘original’となるのである。
ちなみに‘natural’の名詞形である‘nature’は、手を付けていない原初の状態といういみで「本質、性質、元来」などの意味が出てくる。
慶應女子高校英語入試問題における単語の処理スキルにおけるポイントとして、英単語の持つ根本的意味をしっかり把握することが重要である。
では、そのような英単語の根源的意味をどの様にして習得するのかといえば、そのような意味を集約的に掲載している参考書があるので、一度目を通しておくべきである。
④ 整序問題の攻略
いわゆる与えられた語の並び替えである。特に、注意しなければならないのが「倒置構文」である。通常の語順が倒置されることにより、本来、動詞の前に置かれるべきは主語であるが、「倒置」が行われる条件(本来後ろに置かれるべき修飾語句を強調したいがために前に置く)が行われた場合、通常の「S+V」が「V+S」に逆転することに慣れなければならない。そのためには、整序問題に特化した問題集もあるので、事前に十分練習してほしい。
⑤ 英作文作成上のポイント
通常の英作とは異なり、英語で質問されたことに対して英作するという出題形式である。英作を行う前に、正確に与えられた英語での質問内容を正確に理解することが不可欠な前提条件であるが、そのうえで英作を行う上でのポイントは「自分が知っている簡易な英語表現にどのようにして課題文を落とし込むこと」が的確に迅速にできるか否かである。採点は、基本的は減点主義である。したがって、知識が曖昧な英語構文やイディオムは使わずに、平易な英語表現・確実に覚えている英単語を使って英作を行う習慣をつけよう。
以上、最低限の留意点を記載したので、受験生の皆さんの日々の学習につけ加えて合格へ向けて頑張ってもらいたい。
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2020年度「慶應義塾女子高等学校の英語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
【大問1】はリスニングテストである。試験時間は10分程度と考えられる。
【大問2】ノンフィクションの長文読解総合問題<17分>。
【大問3】対話文の長文読解総合問題<14分>。
【大問4】伝記の総合読解問題<14分>。
【大問5】自由英作問題<5分>。
単語・イディオム・文法事項のどれをとっても高校レベル(中には大学受験レベルもあり)である。さらに、英文読解の速度についても1分間に100単語を上回るスピードがないと問題の英文を読み切り、設問に取り組む時間が無くなってしまうだろう。
【大問2】ノンフィクションに関する長文読解総合問題
- 時間配分:17分
喫煙に関する70年前と現代の認識の違いについての長文である。
問1.指示語内容把握問題<2分>
直前の文章を参照すること。喫煙が、他の恐ろしい病気を引き起こしてしまうこと、および薬物使用の第一歩になってしまうと書かれている。
問2.整序問題<3分>
2題の整序問題に共通しているのは、主語と動詞を特定しどのような英文にするかを考えることである。次に、部分的に語をつなぎ合わせて全体の文章を完成させることがポイントである。
問3.英文和訳問題<3分>
‘it is not until ~ that …’は、高校レベルの構文である。文頭のitは訳さないので「それは…」と訳出してしまうと部分点ももらえないだろう。日本語らしく訳出しようと思えば「~して初めて…だ」という処理の方がいいであろう。
問4.要旨把握問題<3分>
下線部(3)は、ドーピング問題に関し、克服しなければならない多くの課題についての英文なので、その方向で考えをまとめること。
問5.英文解釈問題<2分>
本文の意味は「スポーツにおいてドーピングがなくなるまでは、長い道のり(時間)が必要である」ということである。
問6.英問英答問題<2分>
英問の意味は「通常のドーピングと『遺伝子ドーピング』の最大の違いはなにか」という内容である。
問7.内容正誤問題<2分>
本文の内容をしっかり把握したうえで、特に数字関係、事実の描写、固有名詞などに気を付けて正誤を判断すること。特に、本文と内容は一致するが英語表現が異なるような選択肢は要注意である。
【大問3】対話文に関する長文読解問題
- 時間配分:14分
問1.適語補充問題<2分>
この後で、デービットが自分の目で見た灯台の特徴を述べるのであるから、その内容が答えとなるような質問を考える。例えば、「どんな感じでしたか」という内容になろう。
問2.適文選択問題<3分>
それぞれの空欄の前後を捉えて適文を選択する。例えば、空欄Aの後に‘Why?’があるので、エミリーがこの灯台について多くのことを知っているのは何故なのか、という流れになるであろう。
問3.語句解釈問題<3分>
前後の文脈から適切な英単語を考えること。直後に‘it is the oldest lighthouse which is still used today.’と書かれているので、この英文をまとめればよい。
問4.和文英訳問題<2分>
日本文の「~と言われている」という表現を確実に書けるように。一般的には‘it is said that ~’である。
問5.内容把握問題<2分>
本文では「基底部が広くて、上部は細い」、「灯台は円筒形(round-shaped)」と記述されているので、選択肢は一つに絞り込めるであろう。
問6.内容一致問題<2分>
問題の英文は、「アレキサンドリアの灯台を船員がなぜ容易に見つけることができたのか」という問いに対する理由を埋める問題である。
【大問4】伝記の長文読解総合問題
- 時間配分:14分
問1.適語選択問題<2分>
基本的なイディオムの知識を押さえていれば完答も可能である。ただし、文脈に適合するように語形変化させなければならない点に注意が必要である。
問2.和文英訳問題<3分>
「見ることが~を信じ込ませた」という英文を作りたいので、構文的には「無生物主語」を使いながら、「~させた」という部分に関しては使役(make+目的語+動詞の原形)を使う。
問3.書き換え問題<2分>
「差別(discrimination)は~することができなかった」という英文を考える。
問4.英文和訳問題<2分>
少々長い英文であるが、落ち着いて処理すること。また、and(等位接続詞)は、その名の通り「等位」なものしかつなぐことができない。例えば、主語と主語、目的語と目的語、前置詞句と前置詞句などのようにである。従って、本文においても何と何をつないでいるのかを明確に把握してうえで和訳を考えること。同様なことは、butやorにも当てはまる。
問5.適語句選択問題<2分>
彼女の夢に関してのべている部分なので、その内容を具体的に考えてみよう。
問6.適語選択問題<3分>
cで始まる単語を考える。後ろに「世界に貢献するために」とあるので「機会(chance)」が適切であろう。
【大問5】自由形式英作文問題
- 時間配分:5分
約50語を用いて作成する英作文。与えられた課題は「宿題は必要であると思うか。その理由を2、3挙げて自分の考えを述べよ」という内容である。しかも、「解答用紙の余白に単語数( words)」を記載することも要求されている。
攻略のポイント
試験レベルとしては相当に高い。英検レベルとしては、準2級は当然でありできれば2級レベルの英語力があればより高得点が望めるであろう。特に求められる英語力としては「記述力」である。
純粋な「和文英訳」だけにとどまらず、英問に対して英語で答えるなどの出題形式に対しても十分な事前の練習が必要である。また、下線部訳の日本語表現における「記述力」も工夫が必要である。普段使用する問題演習用のテキストは、単に選択肢を選ぶ形式の問題種ではなく、500単語の英文を50~80語に日本語でまとめるスキルが積めるテキストが最適である。また、下線部訳における日本語訳出の「自然な日本語」を心掛けることが大事である。