山手学院高等学校 入試対策
2014年度「山手学院高等学校の国語」
攻略のための学習方法
[知識]
前述のとおり「直接出題」も多いが、「本文読解」等でも必然的に問われることになる山手の「総合的知識問題」。いかなる「攻略法」があるのか?
「国語的知識」は幼少期からの蓄積、故に「15の春」を前にした今ではもはや手遅れ。確かに、そうした側面はある。だが、そこで思考停止してしまっては「ジ・エンド」。今からでもできることは、ある。
先ずは、「己が実力」を悟ること(「己が」=「おのが」が読めなければ既にヤバイと自覚せよ)。過去問を解いてみて(少なくとも5年分以上)、「5割未満の正答率」だったら「中学入試レベル」からの再スタートだ(分かっていると思うが、「中学入試」を馬鹿にしてはいけない。上位校では「高校入試」どころか「大学入試」のレベルに達する)。「5割超の正答率」でも無論、不断の努力は欠かせない。要は、地道な努力、日々の積み重ねあるのみだ。
また、「口語文法」も必須項目だ。例年、直接出題されている。「文節分け」「文節の相互関係」「品詞分類」「品詞分解」「活用の種類と活用形」などを、完全に定着させ応用できるようにしておくこと。、中でも「付属語」(「助詞」「助動詞」)の「意味・用法」は特に重要だ。
なお、「知識」強化用のテキストとしては、「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字・文法630」(「文法」含む)や「高校入試 でる順ターゲット 中学漢字」(共に旺文社)などが推薦できる。また、残念ながら「中学入試レベル」から再スタートの場合は、「四谷大塚」の「四科のまとめ『国語』」(HPから購入可能)等がオススメ。
[解法]
「選択肢」「抜き出し」「空所補充」「脱文挿入」「語句記述」、その他の問題も含め「山手の国語」で勝利するための基本は、「解法」をいかにうまく使うかということだ。「解き方」が安定しなければ、「得点力」はアップしない。「論説文」(説明文)と「小説」「随筆」、それぞれに応じた独自の「解法」。そして、全てに共通する「解法」。それらを体系的に理解して定着させ、応用できるようにしなくてはならない。
そこで肝要なのは、「復習」の仕方だ。「答え合わせ」をして「解説」を読み納得した。問題はその後だ。「考え方のプロセス」を「トレース」することが必須。万一、「トレース」できないとすれば、そのこと自体が問題になる。「解法」が定まっていない証だからだ。そして、「間違った問題」こそ宝の山だと認識すること。「解き方のプロセス」のどこで誤ってしまったのか? その「分岐点」をしっかりと確認して頭に刻み込んでおくことこそが、同じ間違いを繰り返さない秘訣になる。さらに、いくつもの練習問題を通じて同種の設問に共通する「解き方のプロセス」を身につけたい。それが「解法」となる。そうして理解、習得したものを書き留めた自分自身の「解法ノート」を作成しておきたい。解き方に迷ったらそのノートを確認して、確実に応用できるようにしておくこと。繰り返すことで、やがて自然と「解法」を用いて解くようになるはずだ。
[速読]
大学入試にも匹敵するのボリュームの問題文を読まなくてはならない。全体で7000字程度。解答時間は50分。当然、「速読」が求められる。しかし、設問を解くために読むのだから一般的な「速読術」を使うわけにはいかない。やはり、文章に応じての「速読」のコツを習得しなくてはならない。
「論説文」(説明文)であれば「Nの法則」。意味段落の「序論」「結論」は「論旨」が述べられているので確実に読み、「本論」は「段落相互関係」に着目しながら「各形式段落」の「最初」と「最後」を中心に読み進める。
「小説」「随筆」は、「場面分け」をしながら新たな「登場人物」をチェックし、「心情表現」を拾って素早く読んでいく。その上で、とにかくできる限り数多くの過去問の文章を読むことだ。
山手に限らず、他の学校の入試問題も読んでおきたい。練習あるのみ。そして、最終的には分速700字以上(できれば750字近く)で「速読」できるようにしたい。
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2014年度「山手学院高等学校の国語」の
攻略ポイント
特徴と時間配分
大問一は「論説文」、出典は浜本隆志「『窓』の思想史--日本とヨーロッパの建築表象論」(文字数約3300字)。筆者は、ドイツ文学者。関西大学文学部教授。専門は「ドイツ文化論」「比較文化論」。「ドイツ文化」に関する著書が多数ある。小問は全12問(解答数は18)で、出題形式は「選択肢」「抜き出し」「空所補充」「語句及び事項記述」、「総合的知識問題」(5問、「口語文法」「文学史」あり)。問題文は5分弱で読み切り、設問を20分弱で解きたい。
大問二は「小説」、出典は吉野せい「洟をたらした神」(文字数約3900字)。作者は文筆家。小学校教員を務めた後、詩人の吉野義也と結婚し農業に従事、70歳を過ぎてから執筆活動を始めた。本作品で「大宅壮一ノンフィクション賞」を受賞している。小問は全10問(解答数は11)で、出題形式は「選択肢」(「不適切説明」あり)「抜き出し」。問題文は6分弱で読み切り、設問を15分程度で解きたい。
大問三は「総合的知識問題」(「漢字の読み書き」含む)、小問は全4問(解答数は10)で、出題形式は「選択肢」「語句記述」。5分程度で丁寧に終えたい。
【大問一】論説文
- 時間配分:25分弱
本書は、日本とヨーロッパの様々な文物を織り交ぜながら、その土地に住まう人々が「窓」の造形に込めた「感情と思想の来歴」「文化構造の相違と影響」、そして「文明的意味」を論じている。
本文では、日本の住環境はヨーロッパのように物理的に光を遮断するのではなく、間接的に遮る工夫をしており、そこから、うつりゆく瞬間を愛でる美意識が生まれたと指摘し、自然との折り合いの中で暮らしてきた日本と自然を改造してきたヨーロッパとの違いについて述べている。
「換言説明」「指示語内容説明」「空所補充」「総合的知識問題」など、山手らしい多彩な小問が並んでいる。以下、いくつか考えてみたい。
【問一】指示語内容の派生説明の選択肢
傍線部①の「このような工夫」について、「この工夫」が日本の生活に「どのような効果を生んだか」を答える(「4択」)。
この問題、「設問内容」を正確に捉えないと間違うので要注意。「指示語」の「内容」が直接問われているのではない。「この工夫」⇒「効果」、つまり、「結果」が問われているということ。それを踏まえた上で、先ずは「指示語」を開く(「指示語」が出たらすぐに開くのが鉄則)。「日本」での「物理的に光を遮断」しない「工夫」だと分かるはずだ。何に対する「工夫」か? 「傍線部一文一部の法則」(「傍線部が一文の一部の場合、傍線部以外が重要」という重要な「解法」)を使う。直前直後から「住環境においての日本建築」の「工夫」だと判断できる。
次は、いよいよ「結果」は何か? ということだが、傍線部の段落では説明されていない。そこで、「段落相互関係」で考える(「論説文」の「本論部分」における「最重要解法」)。次段落の冒頭は「したがって」という「接続詞」、つまり、前段落までの「まとめ」であり「結果」だ(「段落冒頭」には常に着目すること)。確認する。果たして、日本の生活に対する「効果」が説明されている。曰く「瞬間、瞬間を愛でる美意識が生まれる」。
「選択肢設問」は「消去法」が原則。ここでは、「美意識が生まれる」という「原意」から「消去」する(「原意絶対優位の原則」=「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること) 。選択肢の(ア)「機能を生んだ効果」、(ウ)「建築上の効果」、(エ)「実生活に反映させる効果」はすぐに「消去」できなくてはいけない。で、(イ)の「精神性の背景となる効果」が「答え」。「解法」に則しての「原意消去」を用いて一発で「答え」にたどり着いたということ。山手の「選択肢」、「設問内容」を正しく理解した上で、的確な「解法」を用いて「消去」していくことがポイント。
【問二】語句換言の選択肢
傍線部②の「濃淡を伴った無数の段階」を表す「語」を答える(「4択」)。
選択肢は全て英語由来の「外来語」。普段でも用いる「言葉」ばかりだ。「意味」が定着しているかどうか? 「答え」は(ウ)の「グラデーション」。なお、(ア)「イミテーション」=「偽物。模倣」、(イ)「ローテーション」=「輪番。順序」、(エ)「ジェネレーション」=「世代。同世代に属する人々」、これらも覚えておきたい。
山手では「外来語」が頻出なので、「語義」を正しく定着させておくこと。
【問五】接続詞の空所補充選択肢
文中の空所[⑤-A]~[⑤-D]に当てはまる「接続詞」を答える(「4択」)。
どこの学校でも定番の問題。難問ではないが、判別がやや複雑。「逆接」はともかく「順接」には注意が必要。どれでも当てはまってしまう可能性があるので、全ての候補を確実に「代入確認」しなくてはいけない。
特に、(ア)「したがって」と(ウ)「もはや」は前後の「文脈」との関連を的確に確認すること。なお、[⑤-D]以外のような「段落冒頭」の「接続詞」は、「前段落」の「全ての内容」を受けているということも忘れてはいけない。「答え」は順に、(エ)「しかし」・(ウ)「もはや」・(ア)「したがって」・(イ)「たとえば」となる。
【問六】換言説明の選択肢
傍線部⑥の「芸術鑑賞においても、それを生みだした風土がいかに大切であるかがわかるのである」とは「どういうことか」を答える(「4択」)。先ずは「原意」を考えて(「原意絶対優位の原則」)、「消去」したい。
特に「換言選択肢」は「言い換え」「同じことの説明」なのだから、「理由説明」などよりも徹頭徹尾「原意消去」で解いていくことになる。ここでは、「風土がいかに大切であるか」、要は「風土」という「主語」の「原意」と結びつくかどうかで判別する。
選択肢の最後の部分を確認する(各選択肢で「最も重要なポイント」は最後)。(イ)「ヨーロッパ育ちの人々」、(ウ)「日本で育った者」、(エ)「クリムト」、これらは「主語」が「ひと」で、「風土」とは結びつかないので即「消去」できるはずだ。つまり、(ア)の「ヨーロッパの理解は、あくまでもヨーロッパ流の光と闇の解釈に基づいたもの」だけが、「風土」と結びつくので「答え」になる。
結局、ここも一発で「答え」が出たということ。「原意消去」を完全に習得することが重要。
【問八】品詞分解
AとBとの関係がCとDとの関係とおなじになるように、Dに適切な単語を記述させるというもの。
答えとなる単語は基礎的なものなので、問題形式に慣れさえすれば完答を目指せる。
【大問二】小説
- 時間配分:20分程度
本作品は、詩人である夫と共に阿武隈山麓の開墾者として生きた女性の年代記。ときに残酷なまでに厳しい自然、弱くも逞しくもある人々の姿、夫との愛憎などを、質実かつ研ぎ澄まされた筆致でつづっている。
本文では、「三人の子供たち」が個性を発揮しながら成長していく様子を見守りながらも、生活に縛られる自分を批判する「私」の複雑さが描かれている。
「抜き出し」「心情説明」「表現説明」など、山手ならではの小問がある。以下、いくつか検討してみよう。
【問二】内容説明の抜き出し
傍線部②の「幾何の芽生え」について、この遊びから「私は子供の何を読み取っているか」を抜き出す(六字指定)。
「抜き出し」では、先ず「抜き出すべき内容」をつかみ、次に「抜き出し範囲」を確定することになる。
「内容」は、「幾何の遊び」での「芽生え」から「私」が読み取った「子供の何か」ということ。何が「芽生え」たのか?「傍線部一文一部の法則」で読み解く。直前から「幼い知恵によって工夫体得する」ことだと分かる。
次に、「抜き出し範囲」の確定。「小説は同一場面の直前直後に根拠あり」(これは「小説」の「最重要解法」)なので、「同一場面」が「範囲」になる。ここでは、本文冒頭から傍線部の次段落までだ。確認する。前段落に、「子供たち」について「成長する意志は、そのおかれた場所からふさわしい何等かの必要な活動を見事に踏み出すらしい」とある。後半が「幼い知恵によって工夫体得する」と結びつく。それをもたらしたものは「成長する意志」、内容も字数も合致するので、「答え」になる。
山手の「抜き出し」では当てもなく彷徨ってはダメ。「解法」を用いて、的確に「範囲」絞り込むことが重要だ。
【問五】省略表現補充の選択肢
傍線部⑤「土台おもちゃは楽しいものでなければならないはずだから」の後に「省略されている表現」の部分に「作者が込めた気持ち」を答える(「4択」)。
なじみのない問題で、何をどう考えたらいいのか、戸惑うこと必定。ここは冷静になること。
先ずは、「省略」されているはずの「表現」を考えてみる。手がかりは、無論、「文脈」だ。傍線部は「楽しいものでなければならないはずだから」と「理由」で終わっている。ということは、「文脈」的には「結果」で結ばれているはずだ。各選択肢の「文末」が、傍線部の「理由」⇒「結果」として結びつくかを確認し、「消去」する。(ウ)「励まそう」、(エ)「褒めてやろう」は即「消去」できて当然だ。残りは2択。「土台おもちゃは楽しいもの」なのだから、選択肢の前半で、「答え」は(ア)の「楽しいという本質を持つおもちゃを見事に作ったのだから」だと分かる。
未体験ゾーンの問題であっても、落ち着いて「解法」を応用していけば答えられるということを肝に銘じておくこと。
【問六】条件付き内容説明の空所補充抜き出し
傍線部⑥の「いじらしい希望」について、「ノボル」は「母」にそれを「どのように伝えたのか」を説明するために「示された文」の、空所[A][B]に当てはまる「表現」を抜き出す(順に、五字と十四字指定)。「条件」は「文がつながるようにする」こと。「示された文」は「ノボルは[A][B]伝えた」。[A][B]が直結しているというのはちょっと嫌な感じだ。
さて、先ずは「内容」。「ノボル」の「伝え方」、要は「伝えたときの様子」だ。
次に「抜き出し範囲」。前にも指摘したように、「小説」なので「同一場面」になる。ここでは、傍線部の前段落から傍線部⑦の段落まで。やや「範囲」が広い。もっと絞り込めないか。「傍線部一文一部の法則」の出番だ。直後は「であった」という過去形。であれば、その前で「希望」が「伝え」られていることになる。1段落だけだ。確認する。「ノボルは重たい口で私に二銭のかねをせがんだ」「母の顔に半ば絶望の上眼をつかいながら、ヨーヨーを買いたいという」とある。「伝えたときの様子」の描写だ。「条件」に合致するように当てはめる。「答え」は、[A]=「重たい口で」、[B]=「半ば絶望の上眼をつかいながら」となる。
「解法」を活用して更なる一工夫をすることで大幅に時間が短縮できることがある。山手では、そうした手法も活用すること。
【大問三】総合的知識問題
- 時間配分:5分程度
「問一」は「外来語」と同義の「熟語」の空所補充(2問)。聞いたことはある「言葉」だが、同義の「熟語」となると「?」ではなかろうか。①「イデオロギー」=「思(想)」、②「アイロニー」=「皮(肉)」が「答え」。エアポケットになりかねない「外来語」、山手では要注意だ。
「問二」は「慣用表現」の「正しい使い方の選択肢」(「4択」)。普段あまり用いない、なじみのない「表現」ばかりで、難問だ。(ア)の「やぶさかではない」=「~する努力を惜しまない」、(イ)の「もとる」=「道理に背く」、(ウ)の「すげない」=「薄情だ」、(エ)の「けんもほろろ」=「無愛想に人の相談などを拒絶する様子」。従って、「答え」は(エ)。
「問三」は「対義語の不適切選択肢」(「4択」)は易しいので全問正解しなくてはいけない。
「問四」は「漢字の読み書き」(全6問)。相当に難易度は高い。「書きとり」では「文脈」からの特定が厄介だ。①の「(海上で)ゲンソク(にもたれて風を感じる)」=「舷側」や②の「(ピアノのことを)ヨウキン(という)」=「洋琴」などは「大学入試レベル」以上だ。「読み」では、④「僅差」=「きんさ」、⑤「殿中」=「でんちゅう」には要注意。
山手では、徹底して「高度な語彙力」を鍛えずして合格は覚束ない。
攻略ポイント
●兎にも角にも、「問題解説」で何度も指摘しているように、「山手の国語」では多種多様な「総合的知識問題」が肝になる。出題数も多く、圧倒的に難易度が高い。
どのように「攻略」すべきか。「漢字の読み書き」だけではなく、「同音異義語」「同訓異字」「類義語」「対義語」、また、「四字熟語」「ことわざ」「慣用句」「故事成語」や「敬語」「分かりづらい言葉の意味」「手紙の常套句」「文学史」までをも確実に定着させることが必要だ。
さらには、「口語文法」。学校自身が「高校古典理解の前提として口語文法を理解していることが必要だから」「文法問題は例年必ず出題」(HPより)と明言している。全分野での復習が絶対に欠かせない。
いずれにしても、「高度な語彙力」が問われる山手を志したその時点から、独自に「幅広い知識」を常に習得していくことが重要だ。学校や塾での学習だけでは、全く不十分なので、「独習」は欠かせない。「山手の国語」の「合格ライン」は6割強(学校発表)。「配点」が大きい「知識」での「失点」は合否に直結すると心得よ。
●「抜き出し」や様々な「選択肢設問」等はどう「攻略」するか? それは、「問題解説」でも指摘したが、いかに「解法」を的確に用いるかがポイントになる。「設問内容」に応じた「解法」に則して段階的に解いていくことが必要だ。
そのためにも、基本的「解法」を完全に習得して、適切に応用できるようにしておく。それによって、「失点」を防ぎ「得点力」が安定することになる。
●試験時間は50分。時間配分にも細心の注意をすること。問題文のボリュームは7000字程度。他の上位校と比較して標準的だが、解答数を考慮すると、やはり、速く正確に読み取ることが求められる。分速700字以上を目標に「読む練習」を常にすることが重要だ。