｢2018年は明治元年から150年｣という｢時事ネタ｣を切り口とした｢明治維新で活躍した人物に『薩長土肥(さっちょうどひ)』の出身者が多かったことに関連して、『薩長土肥』にあたる現在の｢鹿児島県｣･｢山口県｣･｢高知県｣･｢佐賀県｣についてのリード文｣からの出題。｢地図｣、｢写真｣、｢雨温図｣、｢統計資料｣に関連する小問などが並ぶ。全体的にオーソドックスな｢地理｣の問題となっている。だが、｢組み合わせ選択肢設問｣が多いので、要注意だ。以下、いくつかの｢設問｣を確認してみよう。

[問１(１)]　｢地図についての理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢50字ほど｣の解答欄)。｢鹿児島県の地図｣中の(ア)には世界最大級の｢石油備蓄基地｣がある。日本では｢政府や民間企業により、石油が備蓄されている｣が、｢なぜ備蓄する必要があるのか｣を説明する。｢鹿児島県｣で｢石油備蓄基地｣といえば、(ア)は｢鹿児島市喜入｣だとすぐに分からなくてはいけない。では、なぜ日本では｢石油備蓄｣の必要があるのか？日本は｢原油(石油)｣のほとんどを輸入に頼っているので、……と考えていけば説明できるはずだ。たとえば、｢日本は石油の多くを輸入に頼っており、紛争など国際情勢の変化による輸入量減少に備えなければならないから｡｣(51字)といった｢答え｣だ。自らの｢知識｣を組み合わせて考察していくことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分半＞

[問２]　｢正誤判別の組み合わせ選択肢設問｣(８択)。｢山口県｣について示されている３つの｢説明文｣の、｢正誤の組み合わせ｣の｢正しいもの｣を答える。

それぞれの｢説明文｣の｢キーワード｣で正誤判別していきたい。

• ｢秋吉台｣｢カルスト地形｣⇒｢山口県｣で間違いないと即決定＝正しい⇒この時点で選択肢は(Ａ)～(Ｄ)の４つに絞られる。
• ｢本州四国連絡橋｣⇒｢山口県｣とはつながっていない＝｢誤り｣と瞬時に断定してはいけない⇒｢説明文｣は｢通っていない｣と続いているのだ＝正しい⇒早とちりは厳禁だ。これで(Ａ)か(Ｂ)の２択。
• ｢宇部や山陽小野田｣｢セメント工業｣⇒無論、正しい。したがって、｢③－正｣となっている(Ａ)が｢答｣だ。｢組み合わせ選択肢設問｣では、先ずは分かりやすい項目で｢選択肢｣を一気に絞り込むことが肝要だ。

   

• ＜時間配分目安：30秒＞

  [問４]　｢雨温図の選択肢設問｣(４択)。｢高知県｣の県庁所在地における｢月別平均気温と降水量を示しているグラフ｣を答える。

本校では定番の｢雨温図｣の問題。｢高知県｣は｢太平洋側の気候｣だということは誰でも知っている。｢夏に降水量が多い｣ことが特徴なので、選択肢は(Ｃ)か(Ｄ)になるということはすぐに判断できるはず。が、両者のグラフはとても似ている。そこで、細部の差異に着目したい。｢月別平均気温｣だ。(Ｄ)は１年を通して｢10度｣を下回っていない。日本の６つの｢気候区分｣でその特徴があるのは｢南西諸島の気候｣のみだということは知っていなくてはいけない。よって、｢答え｣は(Ｃ)になる。たかが｢雨温図｣と侮ってはいけない。やはり、微妙な｢違い｣でも判別できるように鍛錬しておくことが肝要だ。

＜時間配分目安：１分＞

[問６]　｢統計資料読み取りの組み合わせ選択肢設問｣(６択)。示されている[資料]は、｢鹿児島県｣･｢山口県｣･｢高知県｣･｢佐賀県｣のいずれかの｢農産物の都道府県別生産量･収穫量割合上位３道県｣を表している。[資料]中の①～③は、｢なす｣･｢たまねぎ｣･｢茶｣のいずれかだが、｢組み合わせ｣の｢正しいもの｣を答える。

これら３つの｢農産物ランキング｣は誰もが押さえているはずのものばかりだ。[資料]を確認する。もっとも判別が平易なのは①、｢静岡｣｢鹿児島｣｢三重｣の順なので無論、｢茶｣だと分かる。ここで選択肢は(Ｅ)と(Ｆ)の２択になる。次に③が分かりやすい。｢北海道｣｢兵庫｣｢佐賀｣の順、ということは｢③－たまねぎ｣となっている(Ｅ)が｢答え｣だと特定できる。ちなみに、②は｢高知｣｢熊本｣｢群馬｣の順なので｢なす｣で間違いない。本問は平易だったが、｢農産物ランキング｣は本校では必出だ。紛らわしいものの出題もあるので、主要農産物については最新のデータで必ず確認しておくこと。

＜時間配分目安：30秒＞

[問７]　｢伝統的工芸品の組み合わせ選択肢設問｣(４択/複数完全回答)。｢鹿児島県｣･｢山口県｣･｢高知県｣･｢佐賀県｣の｢伝統的工芸品｣の｢組み合わせ｣として｢正しいもの｣を｢すべて｣答える。

各選択肢の正誤判別をしていく。

(Ａ)｢鹿児島県－西陣織｣⇒｢西陣織｣は｢京都府｣に決まっている＝誤り、

(Ｂ)｢山口県－丸亀うちわ｣⇒さあ、どうか？ ややディープか？ 仮に｢丸亀うちわ｣は知らなくとも、｢丸亀｣→｢うどん｣→｢香川県｣とつなげていきたい＝誤り、

(Ｃ)｢高知県－高岡銅器｣⇒｢高岡｣なのだから当然、｢富山県｣と判断できなくてはいけない＝誤り、

(Ｄ)｢佐賀県－有田焼｣⇒悩む必要は全くないはず＝正しい。

したがって、｢答え｣は(Ｄ)だけだ。｢すべて｣なのに｢ひとつ｣？などと余計な心配はしないこと。自らの｢知識｣に自信を持て。ただし、｢複数完全回答｣の設問では細心の注意を払うことを忘れてはならない。

＜時間配分目安：１分弱＞

｢人々の社会･経済･生活･文化活動を支え、今日まで発展を続けてきた日本の交通制度の歩みに関するリード文｣からの出題。｢飛鳥時代｣から｢昭和時代｣までの多様な｢歴史的事項｣が問われている｡本校では例年、｢歴史単元｣に難解な問題が多いのだが、本年度は極端に難解なものはない。ただし、紛らわしい設問がいくつかあるので留意したい。それらを検討してみる。

[問１]　｢下線部に関連しての選択肢設問｣(４択)。｢リード文｣中の下線部(ア)｢大宝律令｣に関連しての｢説明文｣で、｢正しいもの｣を答える。それぞれの｢説明文｣の｢キーワード｣に着目して｢正誤判別｣をする｡

(Ａ)｢刑部親王｣｢藤原鎌足｣⇒｢大宝律令｣は｢藤原不比等｣(｢藤原鎌足｣の子)が中心になって作成されたことは知っているはず＝誤り⇒尚、｢刑部(おさかべ)親王｣も作成に携わっている｡

(Ｂ)｢行政組織や税について規定した律｣｢犯罪や刑罰について規定した令｣⇒無論、逆だ。｢律｣は｢犯罪や刑罰」、｢令｣が｢行政や租税｣についての取り決め＝誤り。

(Ｃ)｢６歳以上の男子のみに口分田｣⇒｢律令制度｣の｢班田収受法｣では｢戸籍に基づき６歳以上の男女｣に｢口分田｣が与えられた＝誤り。

(Ｄ)｢都を警備する衛士や九州北部を守る防人などの兵役の義務｣⇒誰もが定着させている事項のはずで、｢兵役の義務｣としては他に、それぞれの｢国｣を守る｢兵士(軍団兵士)｣があった＝正しい。

したがって、｢答え｣は(Ｄ)。本問はさほど難しくはなかったが、｢説明文｣の｢細部｣にこだわって判別することが肝要。

＜時間配分目安：１分＞

[問２(２)]　｢下線部についての年代整序選択肢設問｣(４択)。示されている、｢リード文｣中の下線部(イ)｢(1180年の)源頼朝の鎌倉入り｣の｢のちに起こった出来事｣を｢古いものから年代順に正しく並べたもの｣を答える。

それぞれの｢出来事｣の｢キーワード｣から｢時期｣を特定していく。

• ①｢朝廷から全国に守護･地頭を置くことを認められた｣⇒これが実質的な｢鎌倉時代の始まり｣だと理解しているはず。そして、そもそも｢守護の設置｣は｢源義経追討｣のためだったということも知っている必要がある。
• ②｢朝廷から征夷大将軍に任命された｣⇒周知の｢鎌倉幕府成立｣だ。
• ③｢奥州藤原氏を滅ぼした｣⇒源義経をかくまっていた奥州藤原氏を滅ぼしたということも常識。

ということは、①→③→②の｢流れ｣になる。よって、｢答え｣は(Ｂ)になる。｢年代整序｣は｢うろ覚えの年代｣で整序するのではなく、｢流れ｣や｢キーワード｣を確認し、特定していくことが重要だ。ちなみに、｢年代｣は｢1185年｣→｢1189年｣→｢1192年｣となる。

＜時間配分目安：１分半＞

[問３]　｢下線部に関連する事項記述設問｣(｢漢字２字｣指定)。｢リード文｣中の下線部(ウ)｢東海道が幕府によって整備され、人やものの移動が活発になりました｣に関連して、｢鎌倉時代以降、港に発達した、年貢や商品の保管･輸送にあたった運送業者は何とよばれたか｣を｢漢字２字｣で答える。

特に難問ではない。よもや、｢問丸｣｢馬借｣｢問屋｣などが混乱している諸君はいまいとは思うが……。無論、｢答え｣は｢問丸｣だ。尚、｢問屋｣は｢室町時代｣以降の名称、｢馬借｣は鎌倉時代以降の｢馬｣を利用して物資の陸上輸送をした運送業者のことだ。｢歴史的事項｣では、同じ内容であっても時代によって｢名称(呼称)｣が異なるものがあるので注意したい。とともに、それらの事項は｢時代｣を特定する｢キーワード｣にもなるので、的確に判別できるようにしておきたい。

＜時間配分目安：１分＞

[問６]　｢下線部についての条件付き理由説明記述設問｣(｢字数指定｣なし､｢50字ほど｣の解答欄)。｢リード文｣中の下線部(カ)｢(箱根の)関所を出る女を詳しく証文と照合し、調べていた｣について、｢江戸幕府はなぜこのようなことをおこなったのか｣を説明する。

｢条件｣は｢『大名』という語句を用いる｣こと。誰もが知っている｢入り鉄砲に出女｣という言葉がすぐに思い浮かばなくてはならない。もちろん、将軍の住む｢江戸｣に｢入る鉄砲｣＝｢武器｣と｢出て行こうとする女性｣は厳しく監視せよ、ということだ。｢武器｣を監視するのは理解できるが、｢女性｣はなぜ？ と悩んだ諸君は｢条件｣に着目せよ。｢大名｣だ。｢大名｣－｢江戸｣といえば｢参勤交代｣。｢大名｣は１年おきに｢江戸｣と｢領地｣を往復し、｢妻子｣は｢人質｣として｢江戸｣に住むことが命じられた。であれば、もし｢出て行こうとする女性｣がその｢人質｣だとしたら……、と考えていけば自ずと｢理由｣は分かるはず。よって、たとえば、｢参勤交代の制度で江戸に住まわされている大名の妻子などの人質の女性が逃亡することを防ぐ必要があったから｡｣(51字)といった｢答え｣だ。

｢問題文｣の｢条件｣＝｢手がかり･ヒント｣だと心得よ。

＜時間配分目安：１分半＞

 ｢選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた｣という｢時事ネタ｣を切り口とした、｢『選挙』と『主権者教育』についての妹(中学生)と兄(大学生)との会話文｣からの出題。｢公民｣に関して、｢事項記述｣や短い｢説明記述｣では基礎的知識が問われているが、｢選択肢設問｣についてはやや判別しづらい設問もある。

以下、２問だけ考えてみたい。

[問５]　｢下線部についての不適切選択肢設問｣(４択)。｢会話文｣中の下線部(オ)｢衆議院｣の｢優越｣についての｢説明文｣で、｢誤っているもの｣を答える。

いわゆる｢衆議院の優越｣に関する問題だ。どれほど正確に定着しているかが勝負の分かれ道だ。細部に注意して各選択肢の｢正誤判別｣をする｡

(Ａ)｢法律案は、衆議院で出席議員の３分の２以上の多数で再可決すると成立｣⇒｢衆議院の優越｣で｢再可決(再議決)｣があるのは｢法律案｣のみ、その際は｢出席議員の３分の２以上｣の｢賛成｣が必要だ＝正しい⇒ちなみに、同じ｢３分の２以上｣でも｢憲法改正の発議｣の場合は｢総議員の３分の２以上｣なので混同しないこと。

(Ｂ)｢条約の承認は、衆議院で出席議員の３分の２以上の多数で再可決すると国会の議決となる｣⇒前述のように｢再可決｣は不要＝誤り⇒｢両院協議会｣を開催し｢意見が一致しない場合｣(あるいは｢参議院｣が｢30日以内に議決しない｣場合)は｢衆議院の議決が国会の議決｣となる。

(Ｃ)｢予算案は、衆議院が先に審議する｣⇒誰もが知っているはずのいわゆる｢予算先議権｣で、｢衆議院｣だけに認められている＝正しい⇒無論、｢内閣不信任決議権｣も｢衆議院｣のみだ。

(Ｄ)｢内閣総理大臣の指名は、最終的に衆議院の議決を国会の議決とする｣⇒衆参で｢指名｣が異なった場合(あるいは｢参議院｣が｢10日以内に指名しない｣場合)は｢衆議院の指名が国会の指名｣となる＝正しい。

したがって、｢答え｣は(Ｂ)になる。尚、｢衆議院の優越｣は本校に限らず頻出だ。細部まで的確に押さえておくこと。

＜時間配分目安：１分強＞

[問７(２)]　｢下線部に関連しての選択肢設問｣(４択)。｢会話文｣中の下線部(キ)｢地方自治｣における｢直接請求｣についての｢説明文｣で、｢正しいもの｣を答える。

定着必須の｢直接請求権｣に関する問題。

これまた、｢キーワード｣の細部に着目して各選択肢の｢正誤判別｣をしていく｡

(Ａ)｢条例の制定･改廃｣｢有権者の50分の１以上の署名｣＝当然、正しい。

(Ｂ)｢議会の解散｣｢有権者の50分の１以上の署名｣⇒｢議会の解散｣ということは｢議員｣をクビにするということで、そう容易くはない＝誤り⇒｢議会の解散請求｣には｢有権者の３分の１以上の署名｣が必要。

(Ｃ)｢監査を求める場合｣｢請求先は首長｣⇒｢請求先｣？ あれ、どこだ？ 一瞬悩むやも知れぬ。ここは正確な知識が求められる。｢監査｣なのだから｢請求先｣は｢監査委員｣だ＝誤り。(Ｄ)｢議員の解職を求める場合｣｢請求先は首長｣⇒｢リコール｣のことだ。成立すれば無論、｢選挙｣が行われるので｢請求先｣は｢選挙管理委員会｣＝誤り。

よって、｢答え｣は(Ａ)だ。｢直接請求権｣も重要事項のひとつ。必ず定着させておくことが必要だ。

＜時間配分目安：１分＞