時は明治時代中期、没落士族を父に持つ主人公・愛川吾一の少年期から青年期までの成長の物語。
本文では、高等小学校に通う吾一の「友人関係の中で揺れる気持ち」や「中学進学への決意」などが描かれている。時代背景は古いが、分かりやすい内容。
「標準レベル」の問題が多いが、中には渋渋らしい「紛らわしい選択肢問題」などもある。以下、いくつかを考えてみる。

【問一】漢字の書き取り
本文中の「語句」なので「文脈」を判断する必要がある。
さほど難しくはないが、①「インガなことに」(「因果(なことに)」は悩むかも。「インガ関係」などだったらすぐに思いつくが、ここでは「因果」と結びつかない可能性がある。「因果」には「原因と結果」とは別に「不運なさま」という意味もあるのだ。
渋渋では「高度な語彙力」も必要。難易度：Ｂ(「標準」。以下同じ)。
＜時間配分目安： 1分弱＞

【問二】比喩表現の説明記述
傍線部(１)「吾一の心は草の葉のようにゆれていた」について「どういうこと」かを説明する(61～70字指定)。
「直喩(明喩)表現」だ。「比喩」にしても当然「原意」が重要(「原意絶対優位の原則」＝「設問」「傍線部」等の「原意」、要は「本来の意味」を最優先に考えること)。「ゆれる草の葉」の「情景」を思い浮かべれば、誰でも分かる。「(Ａ)と(Ｂ)の間を行き来している、動いている」ということだ。「吾一の心」が「行き来し動いている」ことを説明するので、「どこを」を明確にしなければいけない。
では、(Ａ)と(Ｂ)は何か？　「傍線部一文一部の法則」(傍線部が一文の一部分の場合、傍線部以外が重要ということ)で考える。直前に「それでいながら」とある。「指示語」が出たらすぐ開く(基本的「解法」のひとつ)。前の２行に「向こうは学校におくれてきた」「こっちはきちんと学校にきた」「どっちが正しいか」「わかりきったことだ」とある。(Ａ)は確定、「正しいと確信する気持ち」だ。(Ｂ)は「向こう」に対する「吾一の心」。直前直後を確認する(「小説」は「直前直後に根拠＝ヒントあり」)。すると、直後に「彼のほうが立派」「自分のほうが恥ずかしい」とあるので決まりだ。「彼」はもちろん「京造」。あとは、「ゆれ動いていた」を「文末」として(「最重要な要素」を「文末」にするのが「記述」の鉄則)、字数に合わせてまとめればいい。
「必要な要素」を外さないことが重要。難易度：Ｃ(「難解」。以下同じ)。
＜時間配分目安： 3分弱＞

【問三】適切説明の選択肢
傍線部(２)「向こうを見かえした」について「そのときの吾一の気持ち」を答える(５択)。
出た！　渋渋おなじみの「５択＋長い説明」。紛らわしい。このままで考えてもややこしいだけなので、「単純化」することが重要。選択肢の説明が長い場合は、ブロックに分けて下から消去していく(「選択肢設問」は「消去法」が原則)。
先ずは「原意消去」(原意絶対優位の原則)。「動作」から「心情」を読み取る。「向こう」「見かえす」という「原意」に着目すれば、(イ)「自己の正当性を誇示」(ウ)「誇らしく」(エ)「自尊心」はすぐに「消去」できるはず。次に、「真ん中のブロック」に着目し傍線部の直前直後で確認すると、(オ)「しつこく自分を責める京造」」は事実関係に反するので「消去」となる。答えは「(ア)」。
「選択肢設問」の「解法」を用いて段階的に「消去」していくことがポイント。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 2分程度＞

「子どもが新しくことばを覚え、母語として体系化していく過程」を「実験」やいくつもの「具体例」を通じて論じている。
難しい「語句」が多く読みづらい上に、「内容」も小学生には理解しにくい。「脚注(本文の後にある語句の説明)」も活用してほしい。
「長い長い選択肢設問」や「一筋縄ではいかない知識問題」、「具体例の正誤判定」等、渋渋らしい「厄介な問題」が並んでいる。
以下、いくつかの「設問」を検討してみよう。

【問四】同訓異字の漢字書き取り
「子どものことばの意味は絶えず(１)化と(２)化とを続けていく」について、(１)(２)に当てはまる「同訓異字」を答える。
「文脈」を確認する。直前に「単語の意味を深めていく」とあり直後には「ことばの発達を前進させる」とある。さあ、どうだ？　「シンカ」が思いつくか？　「深(化)」と「進(化)」に結びつけていきたい。
渋渋では「知識問題」でも多角的な思考が求められる。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 1分弱＞

【問五】換言の説明記述
傍線部(３)「ほんとうに知っている」について「どういうこと」なのかを説明する(61～70字指定)。
ただし、「条件」としては「システム」という言葉はそのまま使ってはいけないということ。「換言記述」だが傍線部の「原意」はそのままなので、「傍線部一文一部の法則」で確認する。直前に「でも、そのように覚えた単語の意味は」とあり、直後に「と言えるでしょうか？」となっている。つまり、ここまでに述べてきたことについて疑問を示し、新たな「問題提起」をしているということだ。ということは、「ほんとうに知っている」とは「どういうこと」かは、この後の段落以降で説明されているということだ。
「段落相互関係」で考える(「論説文(説明文)」の基本的「解法」のひとつ)。次段落とその次は「具体例」なので無関係(こうしたことを瞬時に判断すること)。で、【中略】の後からだと分かる。要は最後の２段落なのだが、ここで「設問条件」に注目。「システム」は使えないということは、「システムの説明部分」は無視していいことになる(「まとめる範囲」がせばまった)。結局は、１段落目の中頃までをまとめることになる。ここまでくれば、もう易しいはずだ。
的確に「解法」を用いて、考え方の「過程」を踏まえることが大切だ。そして、「条件」＝「ヒント」と心得よ。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 4分程度＞

【問六】趣旨合致の正誤判定
本文全体で述べられている「ことばと意味の関係」の「趣旨」を踏まえて、(１)～(５)の「具体例」の「正誤判定」をする。
さて、どうする？ 「本文全体」について問われているので、順を追って確認する。「冒頭の実験」の結果から(１)は「○」、「大人のことばから学ぶ」ことの「具体例の意味段落」から(２)は「×」で(４)は「○」、「外国語学習」の「具体例の意味段落」から(５)は「×」、そして、(３)はどこの段落でも何の説明もないので「×」。確かにその通り、「正解」だ。が、これをやっていては「日が暮れて」しまう。
では、どうするか？ 重要なことは最初に「本文」を読むときにざっくりと各「意味段落」ごとの「要旨」をつかんでおくということだ(「論説文(説明文)」の最重要「解法」)。その上で「常識的判断」を下していく。そうすれば、(２)(３)は瞬時に「×」、(５)は１度「本文」を確認するだけで「×」と判断できるはずだ。
渋渋では、「解法」を用いたこうした「ワザ」を磨くことも必要だ。難易度：Ｃ。
＜時間配分目安： 3分程度＞