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筑波大学附属駒場中学校 入試対策

出題傾向・攻略のための学習法・推奨テキスト

2018年度「筑波大学附属駒場中学校の国語」
攻略のための学習方法

第1(出題形式について・・・前述と同様)

 出題形式は、ほぼ一貫している。年度による難易度の変化も(難易度が高いという意味で)、目立って異なることはないようにみられる。もっとも、算数で易化した年があることから、思い込みは厳禁である。各設問の難易度も(これもまた難易度が高いレベルで)平均しているので、各設問について50%程度の得点を(採点基準にまんべんなく触れ、0点の設問がないように)得ることを目標に学習し、いずれかの設問で加点をねらうべきである。

 詩・短歌・俳句がほぼ例年出題されるので、この分野の学習も怠りなくする必要がある。

 漢字については、ここでの失点は避けなければならない。日々の(毎週行われる小テスト)漢字学習を怠りなく消化するように心がけるべきである。

第2(記述式問題について)

 記述式問題については、その採点基準、すなわち出題趣旨を把握することが重要になり、これさえできれば合格点以上の点数を得ることが可能になる。

もっとも、筑駒については、この設問の入り口の部分のハードルが(極めて)高いという特徴がある。すなわち、設問が(不親切なくらい)シンプルなため、過去問を通じて筑駒の問題検討を入念に行わない場合、出題趣旨および出題意図が捉えられず、「何について」「どの程度」「どうやって書けばよいのか」が全く分からずに、あさっての答案を書いてしまう事態になってしまう可能性が高い。

これは、受験生のレベルが(極めて)高いため、他の中学校の記述問題にみられるような丁寧な誘導をしてしまうと、ほとんどの受験生が容易に解答をしてしまう可能性が高く、その結果、出題趣旨・意図の把握も、問題の中に織り込んで出題しているからだと思われる。

 さらに筑駒の国語の問題の難しさは、字数制限の厳しさにもある。すなわち、解答欄が小さい、すなわち書くことが許されている字数が少ないということである。麻布中学や武蔵中学のように大きな解答欄を与えてくれれば、出題趣旨・意図が正確にとらえきれない場合、採点基準に関係ありそうな事項を網羅的に数多く(言い方は悪いが、数を撃てば当たる式の考え方)書けば、その中のどれかが採点基準に引っかかることを期待できる。

しかし字数が制限されると、その方法は使えない。なぜなら、採点基準に含まれない事項を書けば、必然的に採点基準に該当する内容が書けなくなるからである。

したがって、筑駒を目指すのであれば、短い字数で解答できるように、具体的には、文章中の言葉の継ぎはぎではなく、文章中の内容を、自分の言葉でわかりやすく説明するトレーニングをすることが必要になる。

 以上をまとめると、極めて当たり前のことになるが、過去問を教材に、シンプルな設問からその出題趣旨・意図を的確に把握し、その内容を文章中の語句の継ぎはぎではなく、自分の言葉でわかりやすく説明する学習をできるだけ早い段階からすべきといういことになる。

第3(詩・俳句・短歌の出題)

冒頭にも述べたように、筑駒は、・俳句・短歌からの出題がなされる。この点、多くの受験生はこのジャンルの出題を苦手とする傾向があるが、その大きな理由は、学習分量の少なさにあると考えられる。

実際、このジャンルの問題は(筑駒といえども)一定程度限定された設問にならざるを得ない。その意味では知識問題に近いともいえるので、より多くの問題を研究して、いわゆる解答の枠を身に着けてもらいたい。

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2018年度「筑波大学附属駒場中学校の国語」の
攻略ポイント

特徴と時間配分

大問は「小説」、出典は宮下奈都「羊と鋼の森」(文字数約1900字)。小問は全4問(解答数4)。「説明記述」(「字数指定なし」4問)のみ。問題文は2分半ほどで読み、設問を15分程度で解きたい。

大問は「論説文」、出典は亀井伸孝「手話の世界を訪ねよう」(文字数約1500字)。小問は全3問(解答数3)。「説明記述」(「字数指定なし」3問)のみ。問題文は2分前後で読み、設問を10分ほどで解きたい。

大問は「ことわざの漢字記述」。小問なし(解答数1)。1分程度で丁寧に終えたい。

大問は「詩」、出典は藤井貞和「あけがたには」(文字数274字)。小問は全3問(解答数3)。「説明記述」(「字数指定なし」3問)のみ。「詩」を吟味しながら2分ほどで読み、設問を7~8分で解きたい。

【大問一】「小説の読解」(「説明記述」のみ4問)

  • 難度:標準
  • 時間配分:18分

世界と調和していることがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、「音」で表せるようになればいい――ピアノの調律に魅せられた一人の青年が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴(つづ)った、祝福に満ちた長編小説。本文では、調律師の「僕」がある「青年」の家を仕事で訪れたときの様子が描かれている。「換言説明記述」と「心情説明記述」の各2問。少ない会話のやりとりと微細な情景描写から、「必要要素」の読み取りが求められている。いかにも本校らしい。以下、2問について確認する。

[問一] 「換言説明記述」(「字数指定」なし、「50字ほど」の解答欄)
傍線部①「それでも、望みがある」について、「どういうことか」を説明する。「指示語」があるので、先ずは開く(「指示語」が出たら即開くこと)。直前から、「それ」=「(ピアノの調律を依頼した)青年に笑みも言葉もない」ことだと分かる。次に、「望みがある」とはどういうことかを、直前直後から読み解いていきたい(「小説では同一場面の直前直後に根拠あり」、これは「小説」の「最重要解法」)。直後に「調律を依頼するということは、これからまた弾こうとしているということだ。希望があるということだ」とある。まさに、「望みがある」ことの内容だ。あとは「過不足なく」まとめていけばいいのだが、「換言説明」なので「傍線部」に即して記述することが肝要だ。特にここでは、「でも」という「逆接」で結ばれていることに注意したい。たとえば、「青年には笑みも言葉もないが、調律を依頼するのはまた弾こうという気持ちからなので希望があるということ。」といった「答え」だ。「換言説明」では、一言一句を可能な限り的確に「換言」するように心がけよ。

<時間配分目安:3分程度>

[問二] 「心情説明記述」(「字数指定」なし、「100字ほど」の解答欄)
傍線部②「その目は一度たしかに僕の目と合い、それからまた外された」について、「ここから『青年』のどのような気持ちが読み取れるか」を説明する。先ずは「指示語」から。「その目」=「(調律が終わったピアノの『ド』の一音だけを試しに弾いた青年の)ゆっくりふりかえった顔に表れた驚きの表情をした目」だと判断できる。「驚き」とは何か? 「その目」が「僕の目」と合ったということは、「僕」が行った「調律」の具合に対しての「驚き」だと読み取れるはずだ。では、「その目」が「また外された」ことから、どのような「心情」を捉えられるのか? 直後に「彼は、……もう一度ドを弾いた。それから、レ、ミ、ファ、ソ、と続けた」とある。ということは、「青年」は調律の具合を「ド」だけではなく、他の音でもすぐに確かめたい気持ちになったわけだ。以上のような「心情」を丁寧にまとめていく。たとえば、「調律が終わったピアノの『ド』の一音だけを試しに弾き、青年は調律のすばらしさに驚いて思わず『僕』を見たあと、改めて『ド』の具合を確認し、さらに興味をひかれてすぐに他の音でも確かめてみたくなったという気持ち。」といった「答え」になる。本校では、「解答欄」に応じて、「必要要素」を適切に読み取り、説明することが肝要だ。

<時間配分目安:4分程度>

【大問二】「論説文の読解」(「説明記述」のみ3題)

  • 難度:標準
  • 時間配分:12分

「手話」は世界共通? 「手話」はジェスチャー? 実は「手話」には文法があり、国によって異っている――「手話」を言語の一つとして捉え、「ろう者」(耳が聞こえない人)の豊かな文化世界について、文化人類学的に論じている。本文では、「人工内耳」という医療技術が勧められる背景には、「耳が聞こえないより聞こえた方が幸せだ」という思い込みや、「手話」と「ろう文化」への誤解と否定の思想があると指摘している。あまり馴染みのない分野の論述だろうが、ジュニア向けに記されているので内容は理解できるはずだ。小問は、「換言説明記述」1問と「内容説明記述」2問。本大問は【大問一】に比して、「説明内容」が捉えやすい。手際よく解き進めたい。若干ややこしい1問だけを検討してみたい。

[問二] 「換言説明記述」(「字数指定」なし、「50字ほど」の解答欄)
傍線部②の「手話に向き合う」とは「どういうことか」を説明する。「傍線部(空所部)一文一部の法則」(「傍線部(空所部)が一文の一部分だった場合、傍線部以外が重要」という「重要解法」)で、「手がかり」を探す。直前に「このような」という「指示語」があり、直後は「(手話に向き合う)気のない人こそ、まず、手話の世界での参与観察(=「ともに生活しながらその社会や集団を観察すること」と※注にある)の経験を積んでほしい」となっている。説明すべきは「手話に向き合う」こと。であれば、「このような手話に向き合う気のない人」の「逆」が「手話に向き合う」ことになるはず。そして、そのことは「手話の世界での参与観察の経験」を通じてなされることになるわけだ。では、「このような手話に向き合う気のない人」とはどのような人なのか? 「指示語」を開いていくのだが、直前は「具体例」なのでさかのぼると、傍線部の段落の冒頭で簡潔に説明されており(「論説文」「説明文」では「同一意味段落」に「手がかり・ヒント」がある)、そこから「『聞こえないことは不幸だ』といった、手話への誤解と否定の思想をもっている人」だと分かる。あとは、的確にまとめていくだけだ。たとえば、「手話の世界での参与観察の経験を積み、聞こえないことは不幸だといった手話への誤解と否定の思想を改めること。」といった「答え」だ。「設問」が何を問うているのかを正確に読み解き、「本文内容」を読み替える場合もあるということだ。

<時間配分目安:3分程度>

【大問三】「漢字の書きとり」(「ことわざ」の「漢字記述」)

  • 難度:
  • 時間配分:1分

示されている「センリのミチもイッポから」という「ことわざ」について、「カタカナは漢字に直し、全体をていねいに大きく一行」で書く(「解答用紙」には「説明記述」の場合のような「枠だけの解答欄」がある)。誰もが知っている「ことわざ」で、すぐに「千里一歩から」という「答え」を記せるはずだ。本校ではここ3年、「漢字の書きとり」で「ことわざ」が出題されている(昨年度は「笑う門には来る」、一昨年度が「良薬苦し」)。したがって、本校では「漢字問題」でもさまざまな「総合的な国語知識」が求められると考え、「故事成語」「慣用句」なども含めてしっかりと習得しておく必要がある。尚、「設問条件」に「ていねいに大きく」とあるので、「トメ・ハネ・ハライ」などの細部に留意して、一画一画丁寧に記すこと。

<時間配分目安:1分程度>

【大問四】「詩の読解」(「説明記述」のみ3問)

  • 難度:やや難
  • 時間配分:9分
  • ★必答問題

 詩人で日本文学者でもある作者の「あけがたには」という作品からの出題。夜汽車に乗った「わたし」が聞いた「ふしぎな車内放送」がモチーフ(主題)になっている。その「車内放送」は、「……よこはまには、二十三時五十三分」の1行から始まり、以下、「とつかが、零時五分」、「おおふな、零時十二分」……、という具合に1行ごとに停車する駅名が「ひらがな」、「読点」をはさんで到着時刻は「漢字」で全12駅を記している。そのあと、「連」を分かたずに「ああ、この乗務車掌さんはわたしだ、日本語を苦しんでいる、いや、日本語で苦しんでいる、日本語が、苦しんでいる」……、と続き、最後は「あけがたには、なごやにつきます」という1行で結ばれている。特に難しい言葉はなく、読んで表層的な内容を理解することは問題なくできるはずだ。しかし、この「詩」に託した作者のさまざまな思いを読み取るとなると……。本校必出の「韻文」では、一語一語に込めた作者のこだわりを「表記」(カタカナ・ひらがな・漢字……)を含めて捉え、さらに、「韻文」特有の「リズム感」をも感得しなくてはいけない。以下、ひとつの小問を題材として考えてみる。

[問一] 「内容説明記述」(「字数指定」なし、「50字ほど」の解答欄)。傍線部①「ふしぎな車内放送」について、「どういうことが『ふしぎ』なのか」を説明する。本詩の「モチーフ」そのものが問われている。聞こえている「車内放送」は、単に12の「停車駅名」と「到着時刻」を連ねているだけだ。何が「ふしぎ」なのか? 何の変哲もないようだが、変わっているといえば、駅名だけが「ひらがな」で記されているくらいだが……。そこで、「車内放送」の直後に記されている「わたし」の「思い」の部分に着目してみる。「ああ、この乗務車掌さんはわたしだ、日本語を苦しんでいる、いや、日本語で苦しんでいる、日本語が、苦しんでいる」とある。何か気づかないか? そう、「日本語」「日本語」「日本語」と、助詞が使い分けられている。「わたし」は「助詞の使い方」、「日本語の用法」に「苦しんでいる」のではないか。そして、「乗務車掌さん」も同じだとすると……、改めて「車内放送」を確認してみる。「ひらがな」の駅名部分が、「よこはまには」、「とつか」、「ふじさわ」、「ちがさき」、「にのみやでは」、「おだわら」などと「助詞」が変化し、また、「おおふな」と駅名だけの場合もある。なぜなのか? 確かに「ふしぎ」ではないか。ということで、「過不足なく」まとめてみたい。たとえば、「ひとつひとつの駅の到着時刻を知らせるのに、それぞれ助詞を変えるなどしてわざわざ言い方を変えていること。」といった「答え」になる。「韻文」では、「ひらがないちもじ」までをも見逃さずに、細部にこだわり読み取ることが肝要だ。

<時間配分目安:3分半>

攻略のポイント

  • ●「字数指定」がなく、「必要要素」の絞り込みが難しい本校の「説明記述」を如何(いか)に攻略するか? それは、実直に「記述」の「練習」を続けることに尽きる。先ずは、正否の分かれ目となる「最重要要素」を「文末」として他の「必要要素」を積み上げていく手法を完璧にマスターすること。「内容」から優先順位を特定し積み上げていく。それぞれの「要素」を「20~30字程度」でまとめられるように徹底的に練習することが肝要。本校では「50~100字ほどの解答欄」が多いので、2~5つ程度の「要素」でまとめることに慣れておきたい。「合格ライン」は7割ほど(過去10年間の「合格者最低得点率」は71.1%、本年度は68.8%)。1問あたりの配点が高い「説明記述」では、「減点」はともかく「失点」は大きな打撃になると心得よ。

  • ●必出の「韻文」、攻略のためには十分な準備が不可欠だ。過去問演習などを通じて、「一語」「一音」に徹底的にこだわり、作品の世界観を読み取る練習を繰り返したい。また、「韻文」特有の「リズム感」を感得することにも慣れておきたい。尚、「短歌」「俳句」では、テキストに掲載されているような有名なものは解説も含めてしっかりと読み込んでおくこと。「韻文」は、練習次第によって「差」がつきやすい。確実に「得点源」とすることが肝要だ。

  • ●「漢字の書きとり」では「ことわざ」が定番になりつつある。数多くのものを定着させておく必要がある。無論、「故事成語」「慣用句」などの習得も忘れてはいけない。

  • ●試験時間は他校より短い40分。時間配分には細心の注意を要する。問題文の文章量は全体で4000~5000字程度(本年度は約3700字)と決して長くはないが、速く正確に読み取れる方が当然、有利だ。分速750字以上を目標に「読む練習」をしておきたい。

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